韓国がTPPに加わり、国内の構造改革、先進化の契機とするには、まずは産業界に根付いている「日本恐怖症」を克服する必要がある。韓国産業界が技術大国の日本を恐れるのは、ある意味で当然のことだ。だが今は、恐ろしいからといつまでもドアを閉めきって生きられる世の中ではない。韓米FTA交渉の際にも「弱者が強者と自由貿易協定を結んだら絶対に負ける」という悲観論が強かったが、実際には対米貿易黒字が拡大する結果となった。
日本と米国は違うかもしれない。だが、世界最貧国だった韓国を今の地位まで押し上げたのは、チャレンジ精神にほかならない。貿易に大きく依存する国の政治家たちが、世界国内総生産(GDP)の40%を占める巨大な自由貿易協定をまるで遠くの山を眺めるかのように傍観していたことは、このチャレンジ精神が失われつつあることを示す兆候だ。TPPには後からでも参加できるが、恐怖心がチャレンジ精神を抑え込んでいる現状は簡単には変えられない。日本は中国主導の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉にも参加している。
TPPの大筋合意により、韓国は自由貿易協定を通じた経済領土競争で日本に一気に逆転される危機を迎えた。安保戦略は一層あいまいで、不確実なものとなった。これを重く受け止めねばならない。