今月10日に予定されている北朝鮮・朝鮮労働党創建70周年記念行事に出席するため、中国共産党序列第5位の劉雲山・政治局常務委員が訪朝することが伝えられた。劉氏は金正恩(キム・ジョンウン)氏が朝鮮労働党第1書記に就任して以来、中国政府の幹部として初めて訪朝することになる。劉氏の訪朝を受け、北朝鮮が記念行事の前後に長距離ミサイルの発射に踏み切る可能性は低くなった。中国政府から派遣された使節団の北朝鮮滞在中や、あるいは帰国した直後から、北朝鮮が中国政府の意向を堂々と無視するのはまだまだ難しいはずであり、またその可能性があれば中国も北朝鮮に使節団を派遣しないはずだ。
劉氏の訪朝を受け、北朝鮮がこれまでの方向性を見直すとの見方も少しずつささやかれ始めている。北朝鮮が人質として抑留していた韓国人大学生のチュ・ウォンムン氏の送還を5日に表明したことも、その兆候と解釈することが可能だ。さらに北朝鮮は離散家族再会行事に向け、韓国側の参加者から申し出のあった家族の生死の確認にも積極的に応じている。中国共産党が劉氏の訪朝を発表した4日、韓国政府も「中国と北朝鮮の間で高いレベルの交流が行われることには大きな意味がある」「韓半島(朝鮮半島)の緊張緩和につながることを期待したい」などとコメントした。
現在、北朝鮮は以前とは異なった世界に直面している。これまでなら何らかの軍事挑発を行うたびに、多くの補償をその見返りとして手にしていたが、今後再びそのような状況となることはもはや考えられないだろう。何よりも北朝鮮の度重なる軍事挑発に、中国とロシアの忍耐が限界に達しつつあるからだ。このような状況で北朝鮮が核実験や長距離ミサイルの発射に踏み切った場合、中朝関係はもはや修復不可能な段階にまで悪化するのはもちろん、韓国、米国、中国、日本、ロシアが制裁で一致するという、北朝鮮としてはこれまで考えられなかった悪夢のような結果をもたらすはずだ。北朝鮮がこのような現状を直視し、方向転換を模索しているのであれば、これは間違いなく韓半島情勢の大きな転換点となるだろう。
もちろん北朝鮮の今後の動向をいたずらに楽観視することは禁物だ。北朝鮮は2012年、中国共産党の李建国・政治局委員が訪朝してからわずか1カ月後にミサイルを発射している。そのため金正恩政権に対しては今後も粘り強く方向転換を働き掛けると同時に、彼らが何を意図しているかわれわれも常に把握しておかねばならない。