■繊維・自動車・ディスプレーに影響
繊維・衣類産業では産業空洞化への懸念が浮上している。ベトナムなどTPP参加国に工場を移転すれば、米日などTPP圏内への輸出時に特恵関税の適用を受けられるからだ。韓国で生地やパーツを生産し、ベトナム現地工場に輸出するのも難しくなる。製品の一定割合をTPP域内で調達しなければならないとする「原産地規則」があるためだ。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)関係者は「TPP合意で繊維・衣料分野の企業はベトナム移転など海外脱出がさらに本格化する見通しだ」と述べた。
液晶パネルなどディスプレー、機械部品など中間財の輸出でも日本に主導権を奪われる可能性がある。TPP参加12カ国への中間財輸出は、12年時点で韓国が1180億ドル、日本が1260億ドルと市場を事実上二分してきた。しかし、関税引き下げ効果を追い風に日本が価格競争力で韓国を一歩リードする可能性が高まった。
■韓国政府、TPP参加を積極検討
韓国政府はこれまで韓中FTAなどに集中するあまり、TPP参加に消極的だったが、今回のTPP交渉合意を受け、参加を積極的に検討していく立場を示した。産業通商資源部の金学道(キム・ハクト)通商交渉室長は「TPPが今後域内の貿易・投資の自由化を通じた地域経済統合に寄与すると期待している。韓国政府は国内外の貿易環境を考慮して立場を決める」と述べた。
通常協定の最終文書は交渉合意から2-3カ月後にまとまり、それを検討するのに1カ月かかる。このため、韓国政府の立場決定は今年末か来年初めになるとみられる。TPP参加方針を韓国政府が固めた場合、韓国はTPPの原参加12カ国との交渉に着手しなければならない。韓国はTPP原参加12カ国のうち、日本とメキシコを除く10カ国と既にFTAを結んでいる。このため、交渉はスムーズにいく可能性がある。
ただ、原参加国になれなかったことに伴う「参加コスト」問題は避けられない難関になる。自動車、機械産業分野で韓国に大幅な開放を要求する可能性が高い日本が大きな不確定要素だ。
西江大の許允(ホ・ユン)国際大学院長は「韓国が新規参加国としてTPPに加わることを目指す場合、参加12カ国全ての同意が必要だが、その過程で原参加国が『同意』の見返りに自国に有利な追加条件を要求する可能性が高い」との見方を示した。