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印南敦史印南敦史  - ,,,  06:30 AM

ネスカフェ アンバサダーに象徴される「マーケティング4.0」とは?

ネスカフェ アンバサダーに象徴される「マーケティング4.0」とは?

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ネスレの稼ぐ仕組み』(高岡浩三著、KADOKAWA)の著者は、ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEO。同社入社以来、「キットカット受験生応援キャンペーン」を成功させるなど数々の実績を樹立。以後も積極的に、新しい「ネスカフェ」のビジネスモデルを構築しているのだそうです。つまり本書ではそんな実績に基づき、企業にとって不可欠な「稼ぐ仕組み」について考えているということ。マーケティングともいい換えられるその流れは、次のようになるといいます。

顧客の問題を発見する

問題を解決(ソリューション)する

それによって、新たな価値を創造する
(「はじめに」より)

このとき大切なのは、問題の解決と新たな価値の創造。しかし、むしろ「顧客のとらえ方」「問題のとらえ方」の方が難しいことに、多くの人は気づいていないと著者は指摘します。つまり、このふたつの要素について深く考え、正しくとらえられれば、より大きなイノベーションを生み出せるということ。

Chapter 1「稼ぐために、『顧客は誰?』『問題はどこ?』と常に考える仕組み」から、要点を引き出してみましょう。


「顧客」とはいったい誰なのか


著者はまず原点に立ち返るべく、「顧客」とはいったい誰なのかと問いかけています。企業にとっての顧客とは、自社が提供する製品やサービスを購入してくれる「消費者」や「取引先」。消費者や取引先を抜きにして、稼ぐ仕組み(マーケティング)を考えることは不可能だというわけです。

ただし注意したいのは、顧客をそこだけに限定してしまうと、マーケティングの範囲が非常に狭められてしまうこと。なぜなら、それだとマーケティングが、顧客に製品やサービスを買ってもらうための手法、つまり「売り上げを上げる」というひとつの側面に偏ってしまうから。しかし顧客を定義するときに大切なのは、自らが置かれた立場やそのとき所属する部門によって見方を変える柔軟な視線だといいます。そして、ここで例として取り上げられているのが営業部門。

たとえば生命保険会社のライフプランナーや百貨店の外商担当など、消費者に直接営業をしている営業マンは、当然ながら顧客が消費者である場合が大半。しかし自社製品を扱う代理店に受けて営業活動をしている営業マンなら、顧客は消費者ではなく代理店ということになります。同じように、スーパーやディスカウンター(安売り業者)に商品を置いてもらうための営業をしている人の顧客は、スーパーやディスカウンター。つまり、そこが優先すべき対象だということ。(20ページより)


身近な生活のなかに顧客の抱える問題が


顧客の定義が置かれた状況などによって変わるのなら、顧客が抱える問題も多岐にわたることになります。なのに問題なのは、いまだに性別や年齢、あるいは職業など「伝統的な指標」で顧客を分類し、特定の層をターゲットにしたマーケティングが行われているという事実。

しかし顧客の範囲を狭くすると、マーケティングの範囲も狭くなるもの。それは、顧客の問題を見つける機会が減ることを意味するため、稼ぐ仕組みが限定的になってしまうことを意味するそうです。この点については、「特定の層をターゲットにするという考え方自体が古く、現代のマーケティングにマッチしていない」というのが著者の考え方。そしてこのことを、車に置き換えて説明しています。

自動車メーカーがターゲットとして考えているのは、「運転免許を持っていて」「車を買う条件が揃っていて」「そのうえで車を欲しがっている人」。だとすれば重要なのは車のデザインや性能なので、メーカーや販売会社はその点に絞って開発や販売を行っているわけです。

それに対し、まったく違った発想をしているのが、自動車メーカーではないGoogle。免許を持っていない人、運転したくないと思っている人を顧客としてとらえているということです。重要なのは、そうした顧客をターゲットにした場合、車のデザインや性能はあまり意味を持たなくなるということ。すると「免許を持っていなくて運転もしたくない人」ですら車を運転できるという視点が生まれるので、そこから「ドライバーを必要としない自動運転車」という発想につながっていったのだろうと著者は推測しています。

車の顧客をあらゆる視点からとらえるグーグルのような企業は、21世紀型企業と呼ぶことができます。自動運転車が誕生した背景には、20世紀型企業と21世紀型企業の違いが如実に表れている事実があると私は考えます。(31ページより)

また同じように、「車が売れない」といわれる日本でも、これまでになくおもしろい動きが出てきていることに著者は注目しています。車を買うまでには至らない人たちを顧客として認識すれば、彼らの問題を解決するところにイノベーションが生まれるという考え方。つまり、そのひとつが、維持費などの問題をクリアにしてくれる「カーシェアリング」です。(28ページより)


「実はこれ、ほしかった!」と感動してもらえたかと問い続ける


国や国民が裕福ではない新興国ではモノが満足にありませんが、マーケティングの対価として知られるフィリップ・コトラー氏は、そんな状況を次のように言い表しているといいます。

「物やサービスがないことが問題だった顧客がいて、製品を買ってもらいたい企業がいる。両者の思惑は、大量生産によるコスト削減とそれによる低価格の実現で一致した」(37ページより)

これが、「マーケティング1.0」という考え方。そしてその後、モノやサービスがある程度行き渡り、生活が豊かになってくると、顧客は生活必需品ではない物やサービス(音楽やエンタテインメントに対する興味など)に関心を向けるようになるもの。この、製品志向から顧客志向の段階に移った段階が、「マーケティング2.0」。日本ではこれが、高度成長期の終焉ごろまで通用していたそうです。

しかしその段階を過ぎると消費者は、グローバル化した世界をよりよい場所にしたいという思いから「精神の充実」を求めるようになるもので、これが「マーケティング3.0」。だからこそ、顧客が気づいていない潜在的な問題を解決し、そこに新たな付加価値を提供することがマーケティング3.0以降の基本的な発想だといいます。(36ページより)


顧客の「自己実現」がこれからの主流


そしていま、マーケティングは新たな段階に移ろうとしていると著者はいいます。それが、2014年秋にコトラー氏が提唱した「マーケティング4.0」という考え方。そのポイントは、顧客にとっての「自己実現」だそうです。顧客の問題解決からさらに一歩進め、「問題解決によって生まれた価値が、顧客の自己実現につながるようなマーケティング」こそが、これからの主流になるということです。

そしてコトラー氏がマーケティング4.0を考案するときにベースとした事例のひとつが、ネスレが2012年から展開している「ネスカフェ アンバサダー」というビジネスモデル。コーヒーマシンをオフィスに無料で提供し、淹れたてのコーヒーを安価で飲めるようにした仕組み。アンバサダーと呼ばれる取りまとめ役を置くことで、アンバサダーがコーヒーの粉を購入し、飲んだ人から代金を集めるというものです。

結果的に大成功したわけですが、しかしネスレはマーケティング4.0を意識してこれをはじめたわけではないのだと著者はいいます。どちらかというと、顧客の問題解決によって価値を生み出そうとしたマーケティング3.0に近かったとか。

消費者調査でわかるようなことは誰でもできます。そんなところからイノベーションが生まれるとは思えません。だからこそ、顧客が気づいていない問題を解決することを真剣に考えていかなければならないということなのです。(45ページより)

つまりその結果として、「顧客にとってより高い価値となる自己実現」というステージに到達できたのだということ。

ここで重要なのは、これからマーケットが成長していく新興国で、マーケティング4.0を展開してもいまは意味がないという点。マーケットが成熟した日本やヨーロッパなどの先進国こそ、こうした先進的なマーケティングが必要になってくるということ。逆にいえば、そうしなければ稼ぐことも利益率を上げることもできないというわけです。(40ページより)




解説が平易でわかりやすいので、著者が提唱する「稼ぐ仕組み」を体系的に理解できるはず。マーケティングの将来を見据えるという意味で、読んでおきたい一冊だと思います。


(印南敦史)

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