(GVA法律事務所 弁護士 野本遼平氏 取材:Gozal編集部 )
UberやAirbnbなど、既存の法律では十分な統制がとれないほど革新的なサービスが生み出されています。法律が明確な定めを行っていないような場合には、事業を行って良いのかどうか判断が難しいことがあります。そんな「グレーゾーン」に該当するサービスを本気でやりたいなら、知っておくべき制度があります。それが「グレーゾーン解消制度」です。今回はこのグレーゾーン解消制度について、実際にクライアントをサポートして制度を活用されているGVA法律事務所の野本遼平(弁護士)さんにその全貌を聞いてきました。
最初に、「グレーゾーン解消制度」の目的・仕組みについて教えてください。
社会学者のニコラス・ルーマンは、法律は絶えず社会を「学習」しなければならないと指摘します。また、W・F・オグバーンも、法律・慣習などの適応的文化の変化は物質的な文化の変化よりも遅延するとしています。つまり、法律というものは、基本的には現実社会の後追いで制定されるものです。そのため、社会の仕組みを変えるような最先端のビジネス・サービスは、法律が想定していなかった状況を生み出すことがしばしばあります。例えば、「Google」や「Yahoo!」などのウェブ検索エンジンも、当初は違法(著作権法違反)、あるいは違法である可能性が高いと考えられていました。
しかし、違法である可能性がある、つまり「グレーである」というリスクを内包するビジネス・サービスを推進することに躊躇する事業者は少なくありません。グレーゾーンが存在することで、イノベーションの芽が摘まれてしまうのです。
グレーゾーン解消制度とは、こういった法的グレーゾーンを解消して、事業者が萎縮しないようにするためのものです。同制度を所管している経産省の言葉をそのまま引用すれば「事業者が、現行の規制の適用範囲が不明確な場合においても、安心して新事業活動を行い得るよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度」です。同制度では経産省を通じて規制所管省庁に規制の適用の有無の照会を行い、原則として1ヶ月以内にこれに対する回答を得ることができます。
なるほど。革新的な事業に挑む人をサポートする仕組みなのですね。実際にグレーゾーン解消制度を利用した事例では、どのような結論が下されていますか?
例えば、当事務所が手がけた事例で恐縮ですが、インターネットを通じたプログラミング教育の提供が、特定商取引法に定める「特定継続的役務」のうち、「電子計算機又はワードプロセッサーの操作に関する知識又は技術の教授」(いわゆるパソコン教室)に該当するか否か等について、「パソコンの操作に関する知識や技術の教授と一体不可分とならない限り、『特定継続的役務』に該当しない」との結論が下され、「これにより、インターネットを通じてプログラミング教育を提供する新たなサービスが生まれ、高いプログラミング能力を有するエンジニアの育成に資することが期待されます」とのコメントが付されています。
実際に、法的な関係性を明確にしてから事業を展開できるのですね!では、どのような人がグレーゾーン解消制度を利用できる or 利用すべきだと思いますか?
グレーゾーン解消制度は、「新事業活動」を実施しようとする事業者であれば、基本的には誰でも利用することができますし、是非利用されることをおすすめします。「新事業活動」とは、要するに「今までにない新しい商品・サービス」のことです。その商品・サービスが「今までにない」理由が、誰もそのシーズやニーズに辿りつけなかったからというのであればいいのですが、実は法律で厳しく規制されていたからというケースも考えられます。
また、それこそUberやAirbnbのケースがそうですが、ある特定の国で適法に実施できるサービスでも、日本等のよその国では違法となってしまう場合がありますので、タイムマシン経営をする場合にも注意が必要です。うっかり一人だけで赤信号を渡ってしまわないように、実施しようとしているビジネス・サービスについて、「もしかしたら法律に抵触しているのではないか」と不安に思うことがあれば、積極的に利用するべきではないかと思います。そして、余談となりますが、「法律に抵触していそうかどうかなんて皆目検討もつかない!」という方は、法律の専門家に相談されることをおすすめします(笑)。
法律に抵触するか悩んだらGVAさんに相談ですね!制度を利用するにあたり、書類の整理など面倒くさそうですが、実際どうですか?
申請書には、「新事業活動」の社会的な意義を記載するとともに、法的な論点を整理して照会内容を具体的に記載しなければなりませんので、ビジネスと法律の両方についての理解が問われます。そういった意味で、事業者が全て自力でこなすには時間と労力が必要となってしまいますので、専門家の力を借りるというのはとても合理的だと思います。ちなみに、経産省の担当者も「新事業活動を実現できるように頑張りましょう!」という姿勢で面談や書類内容のチェックなどのサポートしてくれますので、関係者一致団結して手続を進めることができます。
最後に野本さんが注目しているサービス・アプリなどあれば教えてください!
グレーゾーン解消制度と直接関係がなくて恐縮ですが、コネクティッド・カーによる変動型保険サービス(テレマティクス保険)はとても面白いなと感じています。
IoTによって、ありとあらゆるデバイスから情報を機械的に収集して、これを漏れなく必要なところにタイムリーに届けることが可能になります。ビッグデータを取得できるというメリットもありますが、情報の取扱いを自動化・機械化することで、情報のフィードバックの豊富さ、正確性が劇的に高まり、制度・システムが正常かつ効率的に作動することが期待できるという点も見逃してはなりません。この点、「危険運転履歴」という人間による自己申告がおよそ期待できない情報を収集して、保険システムの作動を正常化・効率化を図るテレマティクス保険は、とてもIoT的で、他の分野への転用可能性・拡張性のあるサービスだなと、今後の発展に注目しています。