小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

円安でもむしろ減っている輸出数量!

 私思うのですが、日銀の黒田総裁って、本当に男らしくない。それに自分が言ったことに対して全然責任を取らない。いうなれば、テキトー。

 でも、だからと言って黒田総裁叩きは起こらないのです。

 株価の力って、大きいですよね。

 しかし、言っときますが、2%の物価目標値を掲げながら今やインフレ率はゼロ近辺にある訳です。しかも、黒田総裁自身、物価は当面ゼロ%で推移すると言っているのです。

 物価目標って、一体何だったのか、と私は言いたい!

 しかし、黒田総裁は、同時に物価の基調は高まっているなんて訳の分からないことも言うのです。

 物価の基調っていうのが、目標なのですか? 違うでしょう? 物価の上昇率、インフレ率に目標を設定しているのでしょ?

 だったら、何故そのために努力をしないのか、と。

 誤解しないでくださいよ。私が、そう本当に思っている訳ではないのですよ。そうではなく、リフレ派の人々の考え方に従えば...ということなのです。

 リフレ派の人々は、原油の価格が低下しているからとか、消費税を上げたからとか、今更言い訳をしますが、物価は貨幣現象であるから、貨幣の量をコントロールすることで物価をコントロールすることができる筈だと言っていたのは、どこのドイツだ、オランダだ!

 物価目標値だけではないのです。輸出にしても、円安の効果は直ぐには出ないが、それはJカーブ効果のせいで、遠からず輸出は増加すると言っていたことは、どうなったのでしょうか、黒田さん。

 本日、8月の貿易統計が発表になりました。

 貿易赤字の額は縮小しています。それは主に原油価格が影響しているからなのです。

 では、輸出はどうなっているかと言えば、前年同月比で3.1%増えたというのですが、昨年の8月末時点で、1ドル=104円程度であったことを考えてみれば、輸出は全然増えていないというべきなのです。

 だって、円の価値が対ドルで15%ほども低下しているのだから、輸出額がその程度増えないとおかしいでしょ?

 グラフをご覧ください。

輸出の推移(世界).jpg

 
 青の線が輸出数量の指数、赤の線が輸出額の指数を示しています。

 日本の輸出数量の推移をみると、この3年間ほどほぼ横ばいか、やや下降気味に推移しているように見えるのです。

 輸出額でみても、安倍政権以前の水準に比べると確かに回復はしたものの...しかし、この1年間ほどは均してみると、ほぼ横ばいと言っていいでしょう。

 要するに円安になっても、全然輸出に貢献していない、と。

 その一方で、円安になれば、海外から輸入する資源や商品に対してそれまで以上の対価を支払う必要があるので、国民の購買力は奪われてしまうのです。 購買力を奪うと言えば、3%分上げた消費税にばかりに関心が集まりますが、円安による輸入品の価格上昇による購買力の喪失も大変に大きいのです。

 やっぱり、アベノミクスって、企業には優しくても国民には厳しい政策というべきでしょう。


以上

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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