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 地球のまわりを超高速で回り、国際宇宙ステーション(ISS)などへの衝突が心配されている「宇宙ゴミ(デブリ)」の分布図づくりに、ベンチャー企業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が乗り出す。急速に増えるデブリのなかでも、「微小デブリ」と呼ばれる1センチ未満のゴミの実態はほとんどわかっておらず、来年後半に衛星を打ち上げて観測を始める予定。世界初の本格的な取り組みとなる。

 デブリはロケットや人工衛星の残骸などから生まれ、2007年に中国が衛星破壊実験をしたことで急増。数万個あるとされる直径10センチ以上のデブリは、米国などが監視するが、微小デブリは手つかずの状態だ。デブリを除去する技術も確立されておらず、衛星への衝突事故は、疑いの例も含めると10件近くある。7月にはISSに接近し、乗組員が一時、宇宙船に退避する騒ぎもあった。

 観測を手がけるのは、旧大蔵省出身の岡田光信氏(42)が設立した「アストロスケール」(本社・シンガポール)とJAXA。来年後半に、デブリ密集地帯とされる高度800キロ付近の軌道に縦横38センチ、奥行き60センチの超小型衛星を打ち上げる。衛星の表面には極細の電線を張り巡らしたセンサーがついており、デブリが衝突した回数や、傷の大きさを記録。2年間の運用で得られたデータをJAXAと九州大が解析し、はっきりしていない微小デブリの数を推定する。データを元にデブリ被害を減らす方策も検討し、宇宙産業界で共有できる仕組みを考える。

 JAXAの松本晴久主幹は「どのくらいの大きさのデブリがどのくらいあるのかが分かれば、それに耐えられるように衛星を最適な強度で設計できる。デブリのリスクを測るための重要な調査になる」と話す。(榊原謙)