- イベント名: Ansible Meetup in Tokyo 2015.09
- 開催日時: 2015-09-14(月)
- 会場: 日経ビル6F 日経カンファレンスルーム(大手町)
- Webサイト: Ansible Meetup in Tokyo 2015.09 - connpass
最近、Ansibleを業務で使い始めて色々調べていたところに、ちょうどAnsible Meetupが開催されたので参加してきました。去年も9月に開催されていて、2回目みたいですね。
今回の目玉は、僕も参考にさせて頂いた「入門Ansible」著者の若山史郎さん(@r_rudi)による、Ansible 2.0の新機能・変更点紹介でした。Ansible 2.0についての情報をコンパクトにまとめて紹介してくれて勉強になったので、僕のように2.0系の予備知識ゼロの人にはスライド資料(と以下のメモ)をおすすめしたいと思います。あと、個人的には、Ansible+Kubernetesの無理矢理感や、LTでの「Vagrant環境のAnsibleを速くしたい」という話が面白かったです。
他は事例紹介が多かったのですが、Ansibleの使い方は現場によって結構マチマチな感じですね。昨日の記事で書いたような、AnsibleとServerspecを組み合わせて使う方法に関する講演もいくつかあったのですが、この組合せに関する、誰もが納得するベストプラクティスは無さそうですね……。日経の梅崎さん(@bungoume)の講演で出てきたディレクトリ構成は、ansible_specに似てそうでしたが、質疑応答で質問してみたところ、ansible_specのことはご存じなく、自前でhelperを作っているとのことでした。
考えてみれば、Ansibleを使ってシステムを構築している時点で、Playbookの実行がエラー無く終了していれば構築は成功しているはず(またはそうあるべき)で、Serverspecで検証するニーズはあまり無いのかもしれません。Ansibleと組み合わせてServerspecを使う理由としては、
- Ansibleを実行してから時間が経っても同じ状態が保たれていることを定期的にテストするために使う
- Ansibleをジョブ実行のツールとして使う場合に、実行前に事前条件を満たすこと、および実行後に事後条件を満たすことをテストするために使う
など、Ansibleの実行直後以外のタイミングでのテストが重要な場合なのかな、と思いました。Serverspecでのテストは、あまりやり過ぎるとモジュールのテストにどんどん近づいてしまいそうで、線引きが難しそうです。
以下、僕が興味をもった部分を中心にまとめた、講演内容のメモです。
講演内容
Ansibleを結構使ってみた (@bungoume, 日経電子版)
自己紹介
- デジタル編成局 梅崎裕利
- 2014年入社(2年目)
- 社内では基盤チーム、サーバ管理からアプリ開発まで
- PythonとElasticsearch検索API開発を担当
Ansibleを使った目的
- Excelからの脱却、AMIコピーだけでは駄目な細かい設定の違いがある、など
Ansibleを選んだ理由
- Python, エージェントレス, Chefは過去に挫折
- @r_rudiにサポートをお願いできた
電子版のWebサーバ群
- 約300台、30種類以上
- AWS上に構築
- サーバリプレースのタイミングでAnsibleを採用
運用までのステップ
- 2014/9-12:実験期間(@r_rudiさんに教えてもらいながら)
- クラウドベンダと共同での設計、関係者へのAnsible教育などを経て、2015/8から運用開始
ディレクトリ構造
- specディレクトリ内に入れたServerspecで、リリース結果をテストする
- 共通設定のディレクトリを作成
構成をクラウド向けに見直し
- 1機能1サーバ
- サーバに状態を持たない(ログの転送など)
- サーバのrole名の統一(関係者間での呼び名の統一)
CI環境はCircleCI
- 初期はansible-lintでチェック
- Serverspecでテスト
- Jenkinsで自動デプロイ
運用してみての感想
- Chefと比べて運用コストが高いと言われているが、今回やると決めたことの範囲では破綻していない
- 設定変更が容易になった
- サーバが状態を持たず、AMIバックアップの必要性がなくなったので、コスト削減につながった
- 開発環境の追加が容易になった
共同開発で困ったこと・事故
- Ansibleを初期構築にしか使わない、Task化されていない変更 → 変更はすべてAnsibleで、と認識合わせ
- 設定ファイルだけ違うコピペroles
- Gitへの不慣れ
苦労、工夫した点など
- Windowsで、期待していたtemplateモジュールが使えなかった(入ったのが8月。構築に間に合わず)
- サーバの夜間停止〜自動起動をAnsibleのEC2モジュールで実行している
- HAProxyの振り分け設定をプラグイン(今回開発した)で自動生成
監視
- Zabbix-agentをAnsibleでインストール
- FluentdでログをSentryに飛ばす
- アクセスログ(Varnish、Apache、Nginx)をElasticsearchで可視化
Q: Ansibleで構築したサーバをServerspecでテストするのには、ansible_specを使っている?
- A: 使っていない(知らない)。自分たちでhelperを作って、それを使っている。
Ansible 2.0 (@r_rudi, ツキノワ)
自己紹介
- 入門Ansible の著者
Ansible 2.0とは
- 現在の1系(最新は1.9.3)と平行して開発中
- 少なくとも今年2月以降から開発されている
- 内部構造をほぼ位置から書き直した
Ansible 2.0についてもっとも重要な点
- 従来のPlaybookと100%互換性がある(を目指している)
追加機能
- block
- タスクをまとめることができる。3つのタスクに対してwhenを指定、など
- blockに対して例外処理を定義できる(rescue, always)
- block内に限定して設定を上書きできる(ブロック内だけrootになる、など)
- strategy plugin
- Ansibleはホストごとに並列でタスクが動く。このタスク実行戦略を変えられる
- プラグインなので、追加も可能
- 全ホストの実行終了を待つ(linear, v1と同じ)、待たない(free)など
- include に with が使える(引数を渡せる)
- include内で変数展開ができる
include: included_{{ inventory_hostname }}.yml
- meta: refresh_inventory が追加される
- 従来は、inventoryファイルは最初の1回しか読み込まれなかった。dynamic inventoryなどで問題になることがあった
- taskレベルで変数の定義、上書きが可能になる
- やり過ぎると、どこで変数が定義されているのかわからなくなる
- 140以上の新規モジュールの追加
- openstack, docker, zabbix, vmwareなど
- inventory, connection pluginも追加
- serf, consul, dockerなどからインベントリ情報を取ってこれる
- callbackプラグインの同梱
- e.g. profile_tasks plugin 各タスクの開始・終了時刻を計測して、最後に集計
- block
変更部分
- 内部構造の整理
- 変数管理、変数展開の順序などに課題があった。分かりづらかった → VariableManagerで一括管理
- plugin構造の整理 → 継承構造を整理
- 内部APIの変更
- 自作pluginには多少の変更が必要
- Python 3対応は入らなかった(準備は進めている様子)
- 内部構造の整理
宣伝
- Pythonエンジニア養成読本のなかでAnsibleの話を書いた
- 17日にAnsible章の読書会をやる http://pymook.connpass.com/
Q: Windows対応は?
- A: すでに1系で着々と進んでいる。2系で入るモジュールにもWindows対応のものが6個くらいある。
Ansible 2.0を使って組むkubernetesクラスタ vol.1 (h-hirokawa, 株式会社リアルグローブ)
タイトル
- 今回はKubernetesの話はせず、Ansibleの話に特化したので、vol.1とした
自己紹介
- 廣川英寿
- Webエンジニア。メイン言語はPython、とりわけDjango
- Ansibleは2012年から利用中:NiftyCloud C4SA, Deplow
- 毎月の無料Ansible勉強会開催、CI導入支援、Playbook代書なども
今回やりたいこと
- Ansible v2でk8sクラスタを自動構築
- CoreOSで作る
- 複数IaaS対応(GCE & IDCF)
- 1クラスタを複数基盤に載せるのは、非推奨構成だったためやめた
CoreOSではPythonが使えない
- モジュールがどんな言語でも書けるというメリットがあるので、Ansible使いたい
- Ansibleにはrawがある。かといって、全部scriptでやるのはつらい
PyPy
- RPythonで書かれたPythonの実装系
- CoreOSにPyPyを入れれば、いつもどおりにAnsibleが使えるようになる
- ただし、どのAnsibleモジュールも使えるかは要確認
- 最新のPyPy 2.6.1は現段階では動いてくれないので、PyPy 2.4.0を使う
Step 1. IaaS上にCoreOSノードを作成
- IaaS操作はlocalhostからAPIを呼び出す → 普通にやると並列化が効かない
- ほとんどのクラウド操作モジュールには待機しないためのパラメータがあるので、それを設定する
- GCEモジュールがそういうパラメータがない → モジュール作る? → asyncで非同期処理できる
- v2ではasyncでループが使える
- インスタンスを作成し、全インスタンスの作成を待って次のタスクを実行、といったことができる
Step 2. CoreOSのセットアップ(1)
- Ansibleでは、shebangがあって、JSONで入出力すればプラグインとして動く
- raw_spec
- Ansible v2では、モジュールへの引数を
hoge=fuga foo=bar
のような形式で渡せなくなっている - <<INCLUDE_ANSIBLE_MODULE_JSON_ARGS>>というリプレーサを使う
- v1では、モジュール内にWANT_JSONというコメントを入れると、引数ファイルの形式がJSONに変わる → v2での引数処理と同様になり、汎用的になる
Step 3. CoreOSのセットアップ(2)
- Cloud-Config: CoreOSで使われている設定の仕組み。yamlで書く
- yamlの渡し方がクラウドベンダごとに異なる
- idcfは2KB制限あり
- cloudconfigをAnsibleで書き換え → 10個以上のPlaybookに分かれてしまった
- 解決策:ブート完了後にAnsibleでログインして、Config用のyamlを設置し、coreos-cloudinitを実行
- どんなツールや手法ともうまく連携できるのがAnsibleの長所
今後やりたいこと
- Ansibleからオートスケール
- オートスケール操作はgce系モジュールでは未提供。やるなら自作モジュールが必要
- Ansibleからk8sの操作
- Ansibleからk8s内のコンテナの操作
- Ansibleからオートスケール
宣伝
- Ansible 2.0に対応した「Ansible完全読本」を年内発売予定
LT
Dynamic Inventory (@saito_hideki)
- IIJの方
- OpenStack環境上のVM管理にもAnsibleを使っている
- Dynamic Inventory
- ansibleコマンド実行時に-iオプションでプログラム名を指定。通常はクラウドコントローラに丸投げ
- 作り方を間違えると、APIサービスに過剰なAPIコールをして、レートリミットに到達してしまう
- クラウドAPIは、リスト取得時にホストの詳細も返してくれるものが多い
- これを--listの結果に返すと、その次の、各ホストの詳細問合せAPIコールを省略できる
Ansibleを使ってみよう~Windowsターゲット編~ (@tsarah0822)
スライド: Ansibleを使ってみよう ~Windowsターゲット編~
- TIS OSS推進室 倉持健史
- Windowsモジュールの紹介
- win_get_url: インターネットからファイルをダウンロード
- win_msi: msiの実行
- win_file: ファイル、ディレクトリの作成
- 実際の案件での使用頻度上位3件:raw, script, setup
- 要注意モジュール: win_copy
- 1MB近くのファイルでもやたら時間がかかる
- win_get_urlでの代替を推奨
- v2.0の期待モジュール: win_regedit, win_unzip, win_package
- 人柱としてWindowsのモジュールを一通り試してQiitaに投稿している
Ansibleのディレクトリ構成に従った〜(※タイトルをメモし切れず) (ynn, Qiitaではyunano)
- Ansibleの推奨ディレクトリ構成に従った場合の問題点
- ディレクトリの数が多い
- main.ymlだらけになるので、開いたエディタによってはどれがどれだかわからない
- ロール1個ごとに.ymlファイルを1個にまとめるansible_best_practice.shを作った
- Ansibleのベストプラクティスに従うとmain.ymlだらけになって、エディタで開くとどれがどれだかわからなくなるんだが - Qiita
Serverspecを導入したものの放置気味な人へ (@ks888sk)
スライド: Serverspecを導入したものの放置気味な人へ
- 自己紹介
- メーカー系企業のインフラエンジニア
- Ansibleは1年ほど実サービスで使ってる。Ansibleのデバッガも作ってる
- Serverspecのテストを書き続ける方法 → ツールでテスト不足をチェックする
- Kirby: Ansibleのコードカバレッジツール(自作)
- Ansibleのタスクのうち、Serverspecでテストされていないものの一覧を表示
- Ansible向けのコードカバレッジツールKirbyを作りました - ks888の日記
Ansible の CI を drone/Docker で試してみた (@grenteeea)
スライド: Ansible の CI を drone/Docker で試してみた
- 自己紹介
- 西村健太@NTTコミュニケーションズ
- ビッグデータ系のプロジェクトでAnsibleを使っている
- そろそろServerspec使わないと、と思っている
- ソースコードを社外に出せないため、CIサービスは使えない。
- 代替として、dockerでCI環境を構築する。
- Serverspecでコケると、droneで表示される。
- GitLabへのpush時にWebHook経由でdrone起動。サーバ構築してテスト実行。
- 試してみての雑感:単体テストなら使える。複数のコンテナを動かす必要があるなら、もっと手を加える必要あり
Vagrant環境のAnsibleを速くしたい (@oinume)
- 自己紹介
- CyberAgent, Inc.
- amebaownd.com のバックエンドエンジニア、Go, Pythonメイン
- Ansibleの実行遅い
- Profiling Ansible Tasksでプロファイリング
- 遅い作業
- パッケージのダウンロード
- 海外からダウンロード → 国内に変更
- vagrant-cachierプラグインで、パッケージをホストOSにキャッシュ
- VirtualBoxのNIC変更
- VirtualBoxではNICをエミュレートしないように変更 → virtio-netを使う
- パッケージのダウンロード
SIerでもAnsibleを導入したい! (@kk_Ataka)
スライド: slideshare/20150914_ansible_for_sier_digest_for_reveal.js.pdf at master · gosyujin/slideshare
- SIerの社内で、Ansibleの紹介をして反応をヒアリング
- Ansible導入に向けて押すと良いポイント
- 秘伝のタレを再利用できます!
- サーバ側は、とりあえずSSHで入れるだけでOK!
Ansibleモジュール作成・配布・貢献 (@hogegashi)
- 自作モジュール紹介:blockinfileモジュール
- モジュール配布のノウハウ
- roleの形にしてGitHubで公開
- Ansible Galaxyにロールを登録
- アップストリームへの貢献のノウハウ
- ansible-modules-extrasにpull requestを出す
- Module Checklistをよく読む
- 既存モジュール作者によるレビュー・承認が必要
- 投稿しても放置されてしまった事例の紹介
- Ansible, Inc.は課題を認識しており、プロセスの見直しを考えている