大野晴香、畑宗太郎
2015年9月12日11時58分
北関東や東北の記録的豪雨で、鬼怒川の堤防が決壊して大きな被害が出た茨城県常総市では12日午前、連絡が取れなかった安否不明者のうち8歳の双子らの無事が確認され、不明者は15人に減った。堤防の復旧工事が本格化したが、災害対策本部のある市役所はいまも通信機能が回復していない。復旧作業に支障が出ている。宮城県では1人が行方不明になっている。
常総市の災害対策本部は12日午前9時現在、連絡がつかない人は15人になったと発表した。11日には22人と説明し、その後、一時31人に増えたが、16人とは連絡がついたという。12日も消防、警察、自衛隊がヘリやボートを使い、救助活動を続けている。午前9時現在、市民4506人が市内や周辺の避難所計28カ所に避難している。
茨城県内の道路は、常総市の県道を中心に17カ所で通行止めになっている。常総市内を通る関東鉄道常総線も、冠水で全線で運転を見合わせており、復旧の見通しは立っていない。冠水で感電の恐れがあるとして、東京電力は市内の1万1200軒の電気を止めている。断水も1万2千件に上っている。
常総市役所の庁舎周辺は、12日朝になって冠水が解消した。市職員は泥のかき出し作業を始めたが、電気や水道はとまったまま。市幹部は「きょう中には機能を回復したい」と話す。
鬼怒川の堤防が決壊した10日、夜から周囲の水かさが増えて庁舎が冠水。庁舎内に300人を超える職員や自衛隊員、避難してきた住民約400人が孤立した。職員らはボートを使って行き来した。
水が引いた12日の午前6時現在も、約330人の避難者がいる。3人の子どもをつれて避難した女性(40)は、「『市役所にも避難できます』という防災無線を聞いて来た。庁舎から出られなくなって驚いた」と話す。
固定電話はつながらず、外部との連絡は職員らの携帯電話を使っており、住民側からの問い合わせには対応できない状態だ。市内の会社経営の男性(68)は「復旧の見通しとか、どこで水が手に入るかとか、最低限の情報だけはしっかり伝えてほしい。あまりに情報が少なすぎる」と憤る。
雨の対応で10日早朝から出勤していた職員の一部は庁舎にずっと泊まり込んで対応に追われた。避難してきた住民には水や食事などを優先して提供した。
断水も続き、職員らは給水車から夜通しトイレに水を運んだ。市民協働課の佐内真由美さんは、数十分おきに繰り返し水をくみに行った。夜はほとんど眠れなかったという。(大野晴香、畑宗太郎)
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朝日新聞社会部
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