Updated: Tokyo  2015/09/11 18:13  |  New York  2015/09/11 05:13  |  London  2015/09/11 10:13
 

【コラム】デフレの悪魔払いもまだなのに米利上げ?-ギルバート

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    (ブルームバーグ):QE4EVER(永遠のQE4)とでも言おうか。

今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げがあるか中銀ウォッチャーらが議論を続ける中で、一部の頭が切れる方々は利上げとは逆の方向に傾きつつある。つまり、量的緩和(QE)拡大の必要性だ。縮小ではない。先月、サマーズ元米財務長官とヘッジファンド運用者のレイ・ダリオ氏はデフレの脅威を消し去るため債券購入プログラムの再開が必要かもしれないと指摘。そして今週、シティグループのチーフエコノミストのウィレム・ブイター氏は世界が向こう2年程度でリセッション(景気後退)に陥るリスクを警告した。

現在の経済状態がいかに奇妙かを強調する方法として、バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が理事時代の2002年11月に行った「デフレーションを米国で絶対に引き起こさないようにするための方法」と題した講演を振り返ってみるのは悪くないだろう。同氏はミルトン・フリードマン教授が唱えるヘリコプターからのマネーの投下で成長を刺激できるとし、当局が輪転機を回してドル紙幣を印刷し経済に投入すれば、支出と物価を押し上げ、最終的にデフレを阻止できると論じた。

これは話としては素晴らしいが、あくまで理論上のことだ。実際には、デフレの悪魔払いがバーナンキ氏の考えていたよりも相当困難であることが判明している。09年のQE開始から14年10月終了までにFRBのバランスシートは3兆5000億ドル(約423兆円)以上膨らんだが、ディスインフレは続いている。米インフレ率の今年これまでの平均は前年比0.1%。当局が目標とする2%を大きく下回っている。

金融市場が織り込む今月16、17両日開催のFOMCでの利上げ確率は低下。9日時点では30%と、1週間前の32%や1カ月前の48%を下回った。

ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のダリオ氏は先月、デフレリスクはインフレ加速リスクを上回っているようだとして、FOMCの「次なる大きな動きは引き締めというよりも緩和」だと述べ、それはQEを介した緩和になると予想。サマーズ氏も9日、米金融当局が利上げすべきではないとの論拠は「やや説得力を増した」と指摘した。世界的リセッションを警告したブイター氏は中国と米国、英国、ユーロ圏にQEを促し、政府が発行する国債を中銀が購入すべきだとしている。

これまでのQEに反応できない経済への処方箋がどうしてQE拡大なのか、私にははっきりしないが、金融の世界で優秀な方々の一部がそうおっしゃる以上、米金融当局が利上げ開始を決断するのはよっぽど勇敢なことになろう。(マーク・ギルバート)

(ギルバート氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:A Fed Rate Hike? Only If You Believe in Magic: Mark Gilbert(抜粋)

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記事に関するブルームバーグ・ニュース・スタッフへの問い合わせ先:ロンドン Mark Gilbert magilbert@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: James Greiff jgreiff@bloomberg.net

更新日時: 2015/09/11 06:47 JST

 
 
 
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