【コラム】朴大統領は中国だけでなく国内にも目を向けよ

 しかし1982年に政権の座に就いたキリスト教民主同盟のコール首相は、それまでの東方政策を引き続き尊重する意向を示し、それによって政界における対立が少しずつ解消に向かい始めた。西ドイツ下院は1984年「ドイツ統一共同決議」を採択した。これは統一政策が政権交代によって大きく変わることがないよう、一貫性を持たせることを目指したものだ。このように西ドイツの政界は、統一に向けて政党の枠を超えた合意を引き出すことにより、国内の政治対立によって統一に向けたエネルギーが枯渇するのを防ぐことができた。キリスト教民主同盟による「西側重視政策」は米国、フランス、英国などの支持を取り付け、また社民党式の「東方政策」では旧ソ連や東ドイツを統一に向けた議論の場に引き出すことができた。それから数年後、ベルリンの壁が崩壊したのは周知の通りだ。このドイツにおける事例は、与野党の協力がドイツ統一に向け非常に大きな原動力になったことを示すものだ。

 現在、朴槿恵政権が置かれた状況を見ると、統一政策を進めるに当たり過去のどの政権よりも好条件がそろっている。中国が統一問題に関心を示し、北朝鮮も久しぶりに対話の場に出てきた。朴大統領の支持率は50%を上回っている。野党も必ずしも敵対的ではない。これまで「5・24措置(哨戒艦「天安」沈没を受け韓国政府が実施している北朝鮮への制裁措置)の即時撤廃」を主張してきた野党・新政治民主連合の文在寅(ムン・ジェイン)代表も「柔軟に対応する」と述べるなど、この問題では一歩引いた姿勢で臨んでいる。

 つまり今こそ内に目を向け、「韓国国内での対立」という従来の悪循環を断ち切る絶好のチャンスが到来しているわけだ。ところが中国から帰国してすでに5日が過ぎたにもかかわらず、朴大統領が与野党の代表を大統領府に招いて「統一外交」や「対北朝鮮政策」などについて説明したという話は聞こえてこないし、また与野党による意見交換なども全く行われていない。「統一」を「政争の具」から引き出し、国政における最高のアジェンダ(課題)とするには、今こそ朴大統領が先頭に立って「統一政治」に乗り出さねばならない。かつて西ドイツは与野党が協力し、統一に向けた「原則」を定めたが、韓国でこれができない理由はない。統一外交を成功に導くには、野党を「対峙(たいじ)する勢力」とばかり考えていてはならない。それには中国にばかり目を向けるのではなく、まずは野党の代表と実際に会って話し合うことが必要だ。

ペ・ソンギュ記者
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