地震前の犬の異常行動
地震が起こる前に、一部の犬達が明らかにいつもとは異なる行動を示すという話は昔からありますが、いつもとは異なる行動とはどんなものなのでしょうか。過去に起きた地震において報告されているものとして下記のような行動が挙げられています。
- 急に吠え始めた
- 遠吠えをした
- 同じ場所をぐるぐる回ったり落ち着きがなくなった
- 外につながれている犬が穴を掘ったり、逃げるような行動をとった
- おびえ始めた
- 興奮して、なだめようとした飼い主に噛み付いた
- 飼い主の言うことを聞かない
- 餌を食べない
- 下痢や嘔吐
社団法人日本愛玩動物協会が阪神淡路大震災後に飼い主に対して行った調査によれば、犬で25%以上、猫で39%以上で「異常に鳴いた」「落ち着きがなくなった」などの異常行動がみられたという報告があります。
地震予知のメカニズム
科学的な裏付けにより考え得るメカニズム
日本は地震国でもあり、昔から「地震の前にはナマズが騒ぐ」という迷信めいた話もあって、動物が地震を予知するメカニズムについて、一部の研究者たちが研究を進めてきました。
ただ、地震という自然現象においては再現実験ができないため、現状ではなかなか研究が進まず、いまだ確実に「これ」といった科学的に明確な「犬と地震」に関するメカニズムは発表されてはいません。ただ、先の大地震の際に観測された結果や実験などに基づき、理論的に「あり得る」として下記のような説が言われています。
- 地震に伴って発生する電磁波を感知している「電磁波説」
- 地上に放出された電磁波によって大気中のチリや水蒸気が電気を帯びた「帯電エアロゾル」という微粒子を感知しているという「帯電エアロゾル説」
- 地震によって生じた大地の亀裂から大量のラドンが放出され、それが大気中のイオン濃度を急激に高めることから、それを感知しているという「イオン濃度説」
野生のほうが感知しやすい?
麻布大学獣医学部の、動物と地震の関係について研究している教授によれば、野生の状態で飼われている犬のほうが反応が良いそうで、犬種によっても異なり、特にシベリアンハスキーやバセンジー、秋田犬、柴犬などオオカミ的要素が強い犬種が、より電磁波への反応が良いそうです。
これに関しては、野生に近い種ほど生存・逃走本能が強いため、地震によって発生する何らかの小さな異変も敏感に感じ取り反応するのではないか、また室内で飼われている犬に比べて外飼いされている犬では、より地面に接して生活しているため、微弱な変動を先んじてキャッチするのではないか、など様々な見方があるようです。
ちなみに、電磁波に敏感に反応するのは犬10匹中1匹の割合だとか。
震度5以上の揺れを感知?
犬だけでなく猫も震度5以上の地震の直前に「吠える」「鳴く」といった異常行動が認められるとのこと。
まとめ
犬は地震でなくても、日常の様々な場面で急に吠えたりソワソワしたりするものであり、たまたまのそうした行動と地震を人間が勝手に結びつけているのだ、という「アンチ・犬が地震を予知する説」もあり、犬の異常行動と地震予知の関連性については、まだまだはっきりしない部分があるのが現状です。
ただ、現に、地震直前にたくさんのイルカが打ち上げられた、カラスの大群がギャーギャー騒いでいたなど普段とは異なる動物の行動の目撃談があり、海外でも動物園の動物たちが奇妙な声を挙げた、檻に入ることを拒絶した、逆に巣穴に引きこもったなど、地震と動物達の異常行動に関する報告は枚挙にいとまがなく、何らかの関連性はあるものと思われます。
東日本大震災の直後、周囲の犬仲間達に発生時の犬達の様子を聞いてみたところ、直前に「そわそわし始めた」「吠えた」「キュウキュウ鳴いた」、「寝ていたのが「ハッ」と顔を上げた」などの声が聞かれました。
(我が家の愛犬の場合は、激しい揺れの中でも全く動じずキョトンとしていました)。
犬の能力については解明されていない部分も多くありますが、明らかに「いつもとは違う」と感じる行動が見られた時には、素直に受け入れ、備えたほうが良いとは言えるかもしれません。
それこそ災害は忘れた時にやってくるもの。後で笑い話になるとしても、それはそれで良いのではないでしょうか?