予想に逆行、日本の冠動脈心疾患による死亡率が低下し続けている、1970年以降で
「総コレステロール」は上昇傾向だが

写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:Kenny Louie/クリエイティブ・コモンズ表示-2.0 一般)

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 日本では、総コレステロール値が上がり続けているにもかかわらず、冠動脈心疾患による死亡率は下がり続けていると分かった。

 米国、ピッツバーグ大学公衆衛生大学院の関川暁氏らの研究グループが、疫学分野の国際誌であるインターナショナル・ジャーナル・オブ・エピデミオロジー誌において2015年7月16日に報告している。

なぜ日本だけ?

 研究グループによると、1960年代に世界7カ国が参加した「7カ国研究」において、日本は冠動脈心疾患による死亡率が低く、総コレステロール値が相対的に低いことに起因すると報告された。

 米国への日本人移住者を対象として1970年代に行われた研究では、冠動脈心疾患率の高まりが認められて、日本人の生活様式が欧米化するに従って冠動脈心疾患による死亡率も高まることが予測された。

 不思議なことに、1970年以降、冠動脈心疾患による死亡率は下がり続けている。

世界の病気発生を調査

 研究グループは、1980年代以降の日本における冠動脈心疾患による死亡率の傾向とその危険因子について、その他の先進国と比べて検証した。

 世界保健機関(WHO)の統計情報システムを基に、日本、豪国、カナダ、仏国、スペイン、スウェーデン、英国、米国の8カ国における1980年から2007年にかけての冠動脈心疾患による死亡率を調べた。同時期の危険因子に関するデータも、文献や全国調査から集めた。

危険因子は他先進国とほぼ同じ

 年齢で調整した冠動脈心疾患による死亡率は、1980年から2007年の間、8カ国すべてで下がり続けていた。総コレステロール値が上がり続けている日本を除いて、この死亡率の低下は総コレステロール値が下がり続けていることによるものだった。

 50歳から69歳では、総コレステロール値は米国よりも日本の方が高かったが、冠動脈心疾患による死亡率は日本が最も低く、米国と比べて男性は67%超、女性は75%超も低い結果となった。その他危険因子の大きさと方向は、日本とその他の国で概してほぼ同じだった。

なぞの「日本要因」

 研究グループは、「総コレステロール値が上がり続けているにもかかわらず、冠動脈心疾患による死亡率が下がっていることは珍しい。日本にしか存在しない予防因子があるのかもしれない」と指摘する。

 なぞのいわば「日本要因」について検証はまだ続きそうだ。

文献情報

Sekikawa A et al. Continuous decline in mortality from coronary heart disease in Japan despite a continuous and marked rise in total cholesterol: Japanese experience after the Seven Countries Study. Int J Epidemiol. 2015 Jul 16. [Epub ahead of print]

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