新人賞」では出会えない才能が生まれる場所【前編】

芸人の又吉直樹さんの『火花』が第153回芥川賞受賞というニュースに沸いた7月16日。選考結果発表のちょうど数時間前に発表されたのが、文学同人誌即売会「文学フリマ」と小説投稿サイトの「E★エブリスタ(以下、エブリスタ)」が提携し、文学フリマ出店者の作品がエブリスタで読める「立ち読みカタログ」を提供するというニュースです。一見、相反する世界観を持っているような両者がなぜ提携したのか? 創作の発表の場が広がる中で、新しい表現はなにを原動力に生まれるのか? 文学フリマ事務局の望月倫彦さんと、エブリスタ取締役の芹川太郎さんの対談を前中後編でお届けします。(構成:碇本学)

よりカオスなところと組むのが理想だった

— 本日は文学フリマ事務局の望月さんと、エブリスタ取締役の芹川さんにお集まりいただきました。まずは文学フリマとエブリスタ、それぞれについて軽くご説明いただいてもいいでしょうか?

望月倫彦(以下、望月) 文学フリマは評論家・まんが原作者である大塚英志さんが「コミケみたいなイベントを文学でもやればいいじゃん」と呼びかけたことから2002年に始まった、文学作品の展示即売会イベントです。東京での開催は今年のGWで第20回を迎えたほか、大阪、金沢、福岡など、じわじわと全国展開もしている最中。小説、評論、短歌、俳句、詩歌、エッセイ、ノンフィクションなど、「出品者自身が文学と信じるもの」であれば何を出品してもいいというコンセプトです。

芹川太郎(以下、芹川) エブリスタの始まりは2010年です。もともと「モバゲーダウン」内にあった小説コーナーからスタートして、それが盛り上がってきたので、単独のサービスとして立ち上げたという流れで。初期の頃はいわゆる「ケータイ小説」っぽい恋愛ものが多かったのですが、最近ではホラーやサスペンス系の小説が人気で、コミックの原作になるような事例も増えています。

望月 ケータイ小説がブームになったときに、文学フリマの現場ではその影響を感じませんでした。つまりまったく違う世界の出来事だった。逆にエブリスタを見ていると、掲載されている作品の幅がかなり広いのが特徴ですよね。だいたいこういうサービスって、結局「小説とマンガのサイト」になると思うんですが、エブリスタはエッセイにノンフィクション、短歌に俳句などの投稿もあって、文芸の全ジャンルを総合サイトとして扱っているほとんど唯一のものになっています。

芹川 時期ごとにジャンル的なトレンドはあるんですが、基本的には皆さんが好きなものを書いてもらっています。そこに読者がつくことでいろんなジャンルが盛り上がる場になっていけばと。サービスとして、ジャンルやコンテンツの内容による色はできるだけ持たないようにしたくて、広く多くの人が集まるいちばん大きな場所にしていきたいですね。

望月 提携にあたって、文学フリマの参加者から見たら「なんでエブリスタと組むのか?」という疑問があると思います。世の中には他にもいろいろな小説投稿サイトがありますが、なぜ文学フリマがエブリスタと連携するかというと「全部のジャンルを受け入れてくれるから」という理由が大きいです。文学フリマの特徴は、いろんなジャンルが一緒になっているところ。会場には小説もあれば、短歌、俳句、評論、旅行記、統計の本とかデータ集を出している人もいる。そういったものとカオスに出会えるというのが文学フリマの面白さでもあって、そこが失われてしまうとつまらない。何なら、よりカオスにしてくれるくらいのところと組むのが僕の理想でした。

芹川 実は、以前から文学フリマ的なリアルイベントは自社でもやりたかったんです。が、全部ゼロから立ち上げるのはかなりハードルが高く……。文学フリマはすでに20回分の歴史と実績があるので、エブリスタが持っているノウハウをそこに提供する形がベストなのかなと。これまでにも「ニコニコ超会議」に出展したり、他社ともコラボされたりしているので、こういった提案を受け入れてくれる土壌があるのではという期待もあって、今回お声掛けしました。

「誰かがちゃんと見ている」という喜び
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