メディアが映し出す「わかりやすい貧困」と現実のギャップ—インタビュー前編

20代にして、日本の貧困問題の解決を目指すNPO法人「もやい」理事長を務める大西連さんが、初の単著となる『すぐそばにある「貧困」』を9月8日に刊行します。これまでに1000人以上の生活困窮者の相談にのってきた著者は、どのような思いで本書を綴ったのでしょう。貧困というテーマについて書くことに対するプレッシャーとは? 著者が伝えたかった貧困に苦しむ人たちの生の言葉とは? その思いに迫ります。

「貧困」という大きなテーマについて書く重圧

— 『すぐそばにある「貧困」』、やっと書き終わったということで、率直に今どのようなお気持ちですか?

大西連(以下、大西) いや、本当にやっとですね(笑)。企画から3年かかりました。

— そうですよね(笑)。しかも初めての単著。

大西 相当なプレッシャーでした。しかもテーマが「貧困」。僕は「もやい」というNPO法人で日本の貧困問題に取り組んでいるわけですが、この本をきっかけに貧困問題に関心を持つ、初めてそれについて知る人がいるかもしれないということに、すごく責任を感じました。「貧困ってなんだろう?」と思ってこの本を読んだ人が、貧困問題に対してネガティブなイメージを持ってしまっても嫌ですし。だから3年かかったわけですけれど。

— 重圧を感じていたんですね。

大西 それから理由はもう一つ。貧困って、やっぱり語ることが難しいテーマなんですよね。意味が広い。読んで字のごとく「貧しくて困っている人」ですが、そもそも「困っているって何?」という話になるんです。どう定義するんだろう、とか。例えば、生活保護、ホームレス問題、住宅問題、子どもの貧困、女性の貧困というのは、それぞれテーマが絞れていますよね。でも「貧困」って、「平和」や「教育」とかと同じくらい大きなテーマ(枠組み)だから、どういう切り口で書くのかすごく悩みました。それで悩むうちに、僕は学者でも専門家でもないし、自分が普段の活動のなかでやっている範囲で書けることって、自分の目で見てきたものにフォーカスするしかないんだと思って、こういう形になりました。

— この本は、大西さんの今までの支援活動の中で実際に体験したエピソードを綴ったものなのですね。

大西 その方法でしか、スタートラインには立てなかったと思います。

見えづらい、わかりづらい、でも困っている人たち

— 「もやい」ではどのような活動をしているのですか?

大西 「もやい」は日本国内の貧困問題に取り組んでいる団体です。生活困窮者の方の相談にのる、生活保護の申請に同行する。あるいはホームレス状態の人がアパート入居する際の連帯保証人を引き受ける、孤立の問題に対して居場所作りの活動をする。そして、現場から見えてくることを国に政策として提言する。ざっくり言うと、そういう活動をしています。

— 「もやい」に関わるようになって何年目ですか?

大西 ボランティア時代も含めれば5年目ですね。正式に働き始めたのは2012年からなので、スタッフとしては3年目です。理事長になったのは14年なのでちょうど1年……そう考えると短いですね(笑)。

— でもすごいですよね、20代で日本の貧困問題をその肩に背負うっていうのは。ボランティア時代も含めて5年間活動を続けてきたわけですが、日本の貧困問題の状況は改善されていると感じますか?

大西 難しいですね。良くなっている部分もあれば悪くなっている部分もある。時代や状況の変化というは目に見えてあるな、とは思いますが。

— というと?

大西 さまざまな新しい法律ができたり、生活保護法が改正されたり。制度として悪くなった部分もあれば、新しい政策ができたことを評価できる部分もある。でもその新しい政策が抱える問題点もあったりして、一概にはプラスとは言えない。確実に言えるのは政策の状況が「動いている」ということだけで、必ずしも前に向かって良くなっているとは言えないです。それに、現場の状況も大きく変わりました。

— それは支援の?

大西 そう。支援団体が増えたし、発信力を強めています。あとは困窮している人たちの状況。複雑な困難さを抱えている人が増えているのではないかと思います。セーフティネットや政策は増えたけれども、そこからこぼれている人がいるのは変わらない。今回の本のテーマでもありますが、「見えづらい、わかりづらい、でも困っている」っていうのはより強まっている印象です。

メディアが映し出す「わかりやすい貧困」と現実のギャップ

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YumikoSatoMTBC 日本もアメリカのように、貧富の差の多い国になっていくと思います。社会的に弱い立場にいる人たちに、サポートが提供できる国であって欲しいですね。 https://t.co/1waGByNjmf 約1時間前 replyretweetfavorite

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