保健福祉部(省に相当)主催で開催された「国家防疫体制改編」に関する公聴会において、同部傘下にある疾病管理本部のトップを次官級に格上げし、独自の人事権と予算を与える方向で検討が行われている事実が公表された。さらに疾病管理本部内に「危機対応センター」と「公衆保健シチュエーションルーム」を新たに設置すると同時に、世界保健機関(WHO)本部があるスイスや、米国、中国、日本など各国に事務所を設置する方針についても説明が行われた。
これらのニュースに接した国民の間からは「あきれてものが言えない」といった反応が相次いでいる。先日の中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大には、疾病管理本部など当局による度重なる対応のミスが大きく影響した。ところがそのMERS発生から3カ月が過ぎたにもかかわらず、疾病管理本部の誰かが処分されたという話は全く聞こえてこないし、また国民への謝罪という意味合いから辞表を提出した担当者も一人もいない。このように無責任で恥を知らない組織が何のために規模を拡大し、海外にまでオフィスを設置するというのだろうか。国民からすれば、まるで罪を犯した人間たちが宴会でも催しているようにしか見えないはずだ。
2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ、新型肺炎)が発生した当時、感染対策に責任を持つ国立保健院では、担当者たちがオフィスに簡易ベッドを持ち込み徹夜で業務に当たった。また空港の検疫所では50人以上の担当者が「36時間勤務」というまさに殺人的ともいえる体制で業務に没頭した。このSARSが収まった後の04年、感染対策に当たる複数の政府部署の統合改編により新たに誕生した組織が疾病管理本部だ。ところが今回のMERS対策において疾病管理本部は初動対応に失敗し、その後もしばらくは何をすべきかさえ分からず右往左往するだけで、その様子はまさに国際社会からの嘲笑を受けて当然だった。このように無能な組織をただ単に拡大し、独自の人事権と予算を与えるだけでは、その担当業務を一層ずさんに行うのは目に見えている。ちなみに03年にSARSが流行した当時、韓国における感染対策は大きな成果を挙げ、世界から大きな賞賛を受けていた。
今回の公聴会で公表された政府案の中には、感染病対策を向上させるのに必要な内容も決して少なくない。しかしこれらの政府案について国民の共感を得るには、今回のMERS対策における致命的なミスやその無能さに対し、誰がいかにして責任を取るという説明からまずは行うべきだった。ところが実際は責任の所在についての説明さえ全く行われなかったのだから、保健福祉部とその担当者たちは本当に恥を知らないと言わざるを得ない。