東京都に属する離島「青ヶ島」は、アクセス難易度S級の島だ。
島への直行便は無い。八丈島を経由して、ヘリか船でアクセスするんだけど、ヘリは1日1便で9席のみ。島民の足として使われているので、予約を取るのが一苦労。船は船で就航率が50%ほど。
一度上陸したら、いつ帰れるか定かじゃない島に、行ってまいりました!▲島の真ん中にある2重カルデラ
東京から358km南に位置する離島「青ヶ島」は、アクセス難易度S級の島だ。
島への直行便は無い。八丈島を経由して、ヘリか船でアクセスするんだけど、ヘリは1日1便で9席のみ。島民の足として使われているので、予約を取るのが一苦労。タイミングによっては2週間後じゃなきゃ空きがなかったりする。
船は船で就航率が50%ほど。青ヶ島は断崖絶壁に囲まれているので、少しの高波でも着岸が不可能になるのだ。いつ行けて、いつ帰れるか、まるで読めない島なのだ。長期の休みが取れる人間でなければ、上陸するのが難しい。
ただし、ひとたび辿りつければ、世界的にも珍しい2重カルデラを間近で鑑賞することが出来る。
人口は約160人。上記写真は島の人が「住宅街」と呼んでいたエリアだ。2軒のアパートと数件の人家が建っていた。
生徒は少ないながら小学校はあるので、人口の半分が学校の先生や役所の人だったりで島外から来ている。昔っからの島の住人は80人ほどだそうだ。
雑貨屋1軒、居酒屋2軒、民宿5軒ほどであとは何も店がない。
夜はこの通り、真っ暗闇。
夏場の晴れた日は、満天の星空をのぞめると評判だ。
【アクセス難易度S級!青ヶ島への行き方】
青ヶ島へのアクセス方法をご案内しよう。
まずは羽田空港から飛行機で、八丈島へ行く。約1時間ばかりのフライトだ。
八丈島に着いたら、空港の隅っこにある「東京愛らんどシャトル」の受付カウンターへ行こう。
ここが青ヶ島行きのヘリの受付カウンターである。
この日もフライト直前に3人のキャンセル待ち客がやってきていた。
島で聞いた話しだが、けっこうキャンセルが出るらしい。青ヶ島は天候が変わりやすく、霧に包まれたり、強風が吹いたりすることもしばしば。船ほどではないものの、ヘリもそんな影響で飛べなくなり、まあまあ欠航するんだとか。青ヶ島-八丈島のヘリを往復で予約した人が、そもそも青ヶ島を出れてないなんてケースは、復路がキャンセルになったりする。
電話でヘリの予約が取れなくても、当日、現地に行ってみるのが鉄則なのだ。
行きのヘリはだいぶ前に予約をしていたので、席が取れていた。滑走路に降りるとヘリが待ち構えている。初ヘリだ。
ドドドドドっとプロペラが回ったら、あっさり浮かぶ。飛行機よりも体浮くような感覚もなく、わりと快適である。
時間にしてほんの15分。青ヶ島に到着した。
島で1人の警官がわざわざヘリポートで待ち構えていて、誘導してくれる。
私たちを降ろしたヘリに、入れ替わりで八丈島行くの客が乗る。そして島民たちが手を振っていた。
この手を振る行為に「おーーっ、離島っぺえ!」と感動した。
あらかじめ連絡しておいたので、ヘリポートまで民宿のおばちゃんが迎えにきてくれていた。割り当てられたのはゆうに3~4人は寝られる大きな部屋。
店がほとんどない島だが民宿は4~5軒ある。工事関係の宿泊客がけっこういるらしい。私が行ったときは、青ヶ島小学校に3日間だけ英語を教えにやって来たアメリカ人だけだった。
2泊3日して船で八丈島へ戻り、1日八丈島を観光して、羽田に帰る予定だった。
が、当然のように3日目の船は欠航した。前日の大雨の影響で、港が荒れてるとのこと。見にいったら、たしかに波が打ち寄せまくってる。こりゃ、無理だ。
波が厳しい青ヶ島では、漁船を港にとどめておくわけにはいかない。
というわけで、漁船はケーブルで引っ張りあげて、陸に保管しておくんだな。
せめて船が確実に就航できればなあ、だいぶ行きやすくなるんだけどね、青ヶ島。
テレビには「現在のヘリポートと港の様子」を中継する専用チャンネルがあるんだから。
今日の船やヘリは飛ぶのか飛ばないのか、このチャンネルをつければ一目瞭然だ。
電波があんまり良くないのか、しょっちゅうこういう画面になってたけどね、テレビ。
一回電波を拾えなくなると、数十分まるっきり映んなくなったりすんのよ。そうなると店はないし、WIFIは繋がらないし、やることなくなるんだよなあ、夜。強制的にやること、見るものを奪われる夜というのも、時にはいいもんです。
翌日は船が来てくれた。
貨物便を兼ねているとのことで、荷台からコンテナが出てくるわ、出てくるわ。
クレーンで取り出したコンテナは一か所に集められて、扉をひらき、待ち構えてた住民たちがそれぞれの積荷を受け取って走り去っていく。
建築資材とかも乗っけてたから、コンテナをすべて取り除くのに1時間以上かかっていた。八丈島から帰りの飛行機がギリギリの時間だったので、かなり焦ったなあ。船の受付のお姉ちゃんからは「すごく潮に乗れないかぎり、飛行機の時間に間に合わないと思うので、そのつもりでお願いします」と釘を刺されたからね。
船が出ても、まだ安心はできない。さすがはアクセス難易度S級の島だ。
船に乗ること2時間半。八丈島が見えてきた。
飛行機のフライト時間まであと20分。もしかしたら間に合うかもしれない!
万に一つの可能性にかけて、八丈島のタクシー会社に電話。港で待ち構えてもらった。
接岸するや、船の乗組員が「空港に行く方、1人いますよね!?どなたですか!!」と叫ぶ。俺だ。「はい!ここにいます!」と手をあげる。「時間がありません!合図を出すので、向こう岸にジャンプしてください!」と驚きの提案。タラップをかけてる時間も勿体ない、という配慮に感激だ。
波の動きが岸の高さとぴったり合ったタイミングで「今です!」と合図を出してくれる。向こう岸でスタッフ2人が手を引いてくれ「急いで!」とタクシーを指さす。感謝の言葉もほどほどに、走りだす、俺。タクシーに駆けこむや、何もいわずに走りだす。
一連の行動が映画みたいで笑ってしまった。船の乗組員、港のスタッフ、タクシードライバーの脅威の連携によって、フライト5分前で滑りこみセーフだった。
凄いぜ、青ヶ島。
【2重カルデラを堪能せよ】
なぜそこまでして青ヶ島に行くのか。最大の魅力は、こちら世界的にも珍しい2重カルデラだ。
島でもっとも高い「大凸部」と呼ばれる丘から、一望できる。青ヶ島は活火山を取り囲むようにできた島。度重なる噴火で外側の山と内側の山(丸山)の間、そして丸山の内部に2重の凹みが形成されている。
梅雨時は島中が霧で覆われることもしばしば。濃霧のさいは、3m先も見えず最徐行で車を走らせるという。
実際、私が滞在した最終日、霧ですっぽり丸山が包み込まれてしまった。
実際、私が滞在した最終日、霧ですっぽり丸山が包み込まれてしまった。
まれな現象であるが、立ち込めた霧が、カルデラの中心部から、山の隙間を抜けて海のほうへとすーっと流れ出ていくことがあるそうだ。そんあレアな光景を見た者には幸運が訪れるとか。
▲2重カルデラのふちはぐるっと一周できる
2重カルデラのふちは整備されていて、1周20分ほどでぐるっと散策できる。
幾度も噴火を体験している青ヶ島の人々は、この山にたいして並ならぬ畏敬の念を抱いている。道中には「御富士様」と名付けられた、山の神を鎮める神社もあった。
【2重カルデラだけじゃない!青ヶ島の3つの見どころ】
1:活火山の熱をつかった「地熱釜」と「サウナ」
カルデラの周囲には、島言葉で「ひんぎゃ」という噴気孔がたくさんあり、モウモウと煙を発している。
島の人々は、その地熱を活用して、地熱釜とサウナを作っているのだ。
石で作った地熱釜。
内部に熱気を閉じこめて、さまざまな食材を蒸しあげる。
「地熱釜やってみたい!」と伝えれたら、昼飯代わりに民宿のおばちゃんが材料を持たせてくれた。卵、ジャガイモ、魚はいずれも青ヶ島で獲れたものだ。
カゴに入れて
カゴに入れて
蓋を閉める。
パイプをひねると熱気が中に伝わるようになっている。
そのまま、40分放置して蒸しあがるのを待つ。
魚も見事に蒸しあがっている。
新鮮なのでかるく塩をふるだけで、うまいんだ。ほんのり硫黄っぽい薫りがする。
ジャガイモとタマゴもよく蒸されている。素材そのものの旨みをたっぷり味わって、腹いっぱい。
腹を満たしたら、お次はサウナ。
地熱釜のすぐ近くに「ふれあいサウナ」という施設があるのだ。
入店とほぼ同時だったので、ほかにお客さんはいなかった。
「写真撮ってもいいですか?」と尋ねたら「もーーーー!好きなだけ撮って」と大歓迎であった。
写真の奥の扉がサウナにつながっている。まあ、サウナ自体は普通のサウナと同じですわ。
2:草を掻きわけると「祟り神を祀る神社」がある!
「大凸部」から2重カルデラを眺め終わり、帰路につこうと思ったら、小さな看板があって「東大所神社→」と書かれている。
でも、その矢印が刺す道がこれなんだよね。これは、はたして道なのか??
疑心暗鬼にかられながら、5分ほど藪をかきわけ歩いていくと・・・
斜めに崩れた鳥居があった。
▲祟り神を祀る東大所神社
鳥居をくぐると、神社と呼ぶには妙に赤すぎる建物がポツンと建っている。
なんでも東大所神社は祟り神を祀っている神社だとか。失恋の腹いせに島民7人を殺した末に、入水自殺をした朝の助という男の霊を鎮めるために建立されたそうだ。
何ともディープないわくのある神社だ。
祠を覗いてみると、ガラスのなかにお供えものがされている。
よく見るとすべて枯れている。
参道が草に覆われていたことといい、ほとんど島民は近づかないのだろう。
青ヶ島の公式サイトでは
今では縁結びの神様として信仰を集めています。と書かれていたが、とてもそんなムードではない。
なんだか怖くなったので、そそくさと撤退した。
3:幻の焼酎・青酎と島寿司
青ヶ島で製造された焼酎を「青酎」という。
サツマイモから作った青酎は度数が30度ときついながらも、まるでスイートポテトのような甘みのあるお酒だ。ほとんど本土に流通することがなく、伝説の焼酎と呼ばれる。
▲島寿司
島に食堂はないが、居酒屋で島寿司を食べられる。砂糖でやや甘めにしたしゃりで握っているよ。
とまあ、こんな感じ。
離島好き、地形好きならアクセスの難しさを考慮しても、100%楽しめる島だ。
ぜひとも時間に余裕をもって訪れて欲しい。
●おまけ
青ヶ島は、こちらの記事の取材で行ったんですね。
で、編集の担当者から「島の猫ちゃんとかほのぼのした写真も撮ってください!」と依頼されてたので、野良猫を見かけたらシャッターを切るようにしてたんだけど
めちゃくちゃ警戒されて、メンチ切られた。
普段からほのぼの写真撮ってない人間にはハードル高過ぎましたわ。
■「青ヶ島」の情報■
オススメ度:★★★★☆
アクセス:本土からの直行便はない。八丈島経由となる。
【本土~八丈島】羽田空港から飛行機で1時間 or 竹芝桟橋から船で10時間
【八丈島~青ヶ島】ヘリで20分 or 船で2時間30分
予算:往復の飛行機&ヘリと宿泊費で3泊4日6万円ぐらい関連サイト:ダイニングトレンド