<インタビュー>祖国で才能開花 柔道五輪金狙う在日3世の安昌林

【ソウル聯合ニュース】「こちらに最初に来た時は死んでしまうかと思うぐらい練習がきつく、全くついて行けませんでしたが、鍛えられ実力が発揮できるようになってきました」――。京都市出身で在日3世の柔道男子73キロ級韓国代表、安昌林(アン・チャンリム)選手(21、竜仁大)が祖国で輝きを増している。日本で学生一などのタイトルを手にした逸材は、韓国代表として戦う道を選び、1年半前に来韓した。先月の光州ユニバーシアード大会では圧倒的な強さを見せ、オール1本勝ちで金メダルを獲得。今月下旬の世界選手権にも自信を持って臨む。目指すは来年のリオデジャネイロ五輪での頂点だ。

 筑波大2年の時、全日本学生体重別選手権や世界ジュニア選手権で優勝し、世界レベルの仲間入りを果たすと、日本国籍を取得し日本代表を目指さないかとの誘いもあったが、迷わず韓国行きの道を選んだ。

 空手の指導者で格闘技の基本を教えてくれた父をはじめ、家族は朝鮮半島にルーツのあることを大切にしてきた。生まれ育った日本とは言葉や生活習慣が違い、選手としても一からのスタートになるが韓国代表として戦うことが大切だと思い、志願して来韓した。

 大学3年から柔道の名門・竜仁大に編入し、選抜戦で結果を出して、ソウル市内にある韓国代表の合宿施設「泰陵選手村」入りを果たした。

 韓国のスポーツエリートが集う選手村で待っていたのは、想像を絶する厳しい訓練だった。長いときは2時間に及ぶ午前中のランニングに始まり、指導者がつきっきりのウエートトレーニングのメニューも濃密。くたくたになった状態で午後の乱取りを行う日々が続いた。

 これまで経験したことのないハードさに「最初はどの練習にもついていけませんでした」と振り返るが、高い技術で12年ロンドン五輪90キロ級を制した宋大南(ソン・デナム)コーチの親身なアシストもあり、必死で日々のメニューをこなした。

 成果は表れている。世界の柔道界でも有名な過酷な韓国代表の練習で、試合の最後までばてない体力を身につけるとともに、ここ一番での集中力や闘争心も高まったと自負している。

 宋コーチからテクニックを学んだこともあり、今では「自分の柔道のスタイルが出来てきた」と言えるまでになった。日本にいる時は相手の反則による勝ちが多かったが、さまざまな体勢から多様な技を繰り出せるようになった。韓国に来てからこつをつかんだ背負い投げではユニバーシアード大会の観衆を魅了した。

 今月下旬にはカザフスタンで開かれる世界選手権に出場する。初出場だった昨年は2回戦で敗れたが、レベルアップを果たし、韓国代表として国際大会の経験を積んだ今年は手応えが違う。日本の大野将平選手(旭化成)、中矢力選手(アルソック)という一昨年と昨年の覇者が金メダル争いの有力候補だが、下馬評を覆そうと意気込んでいる。

 世界選手権で結果を残せば、来夏のリオ五輪の優勝候補に挙げられることになる。まだ世界の一線級を相手にこれといった実績を残しているわけではないが、「五輪で結果を出すことが目標」と、4年に1度の大舞台に照準を合わせている。兵役法の改正で、韓国で一定期間以上暮らす男性は在外国民でも兵役が課せられるようになった。五輪でメダルを取れば兵役が免除されることもモチベーションを高める。

 「五輪の73キロ級は韓国が伝統的に強い階級」。韓国柔道界の一員としての自覚も芽生えてきた。太極旗(韓国国旗)を身につけての戦いは、これからが本番だ。(張智彦)

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  • ▲安昌林選手=(聯合ニュース)

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