CodeIQ MAGAZINECodeIQ MAGAZINE

CodeIQ MAGAZINECodeIQ MAGAZINE

【えふしん流・仕事の流儀】エンジニアとマネジメントを分ける必要ってあるんですか?

2015.07.23 Category:ギークたちの『仕事の流儀』 Tag: , , , , ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
fshin-1

コードも書くし、マネジメントもする。誰もPython書けないなら、自分が勉強して書く。大学院でメディアデザインも学ぶ。

41歳になった「えふしん」こと藤川真一さんが、ときどき今でも言われる「エンジニア定年説」に異議を述べ、新しいエンジニアの働き方を提案する。
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

Python書ける人がいないんだったら、自分が勉強して書いてみる

昔から、エンジニアの定年説というのがあって、私も意識したことはあるけれど、それって何歳とかで区切れる話じゃないと思うんですよね。新しい技術や言語の習得という問題。歳をとるとそれについていけないんじゃないかと言うわけですが、それって本当かな。

例えばですが、BASEでは主要な開発言語はPHPですけれど、今度始める「PAY.JP(ペイドット ジェーピー)」というオンライン決済サービスはPythonで書かれています。BASEを開発してきたメンバーには、Pythonが得意な人はいなかった。私も書いたことがなかった。なのに、なぜ?

単に「PAY.JP」はもともとピュレカという会社のサービスで、Pythonで書かれていたんだけど、それをまるごとBASEが子会社化したからなんです。

このサービスを社内に取り込んで、今後の開発とかメンテナンスとか大丈夫なのかなと思って、知人のPython界隈の人にソースコードのレビューをしてもらったら、「素直でいいコードだよ」って。

じゃ、BASEでもちょっとPython勉強すればやっていけるかな、もし何かあっても自分が勉強すればいいだけのことだしと思って、ピュレカ社のジョインに賛同しました。PythonをPHPで全面的に書き直すよりも、私たちが勉強するほうが、はるかにコストはかからないわけですから。

私自身、Pythonを勉強するいい機会が与えられた、ラッキーだと思っています。いま仕事のかたわら、慶應大学大学院メディアデザイン研究科にも院生として通っているですが、研究もPythonを使ってやっています。研究で必要とした機械学習はPythonの得意技ですから、本当に良かったです。41歳になっても新しい言語は覚えられるし、やれるし、やるべきだと思うんですよね。

いまどきの若い人。海外スタートアップへの関心には世代隔絶を感じる

昔のプログラマは確かに、「言語なんて関係ないよ。道具にすぎないよ」と言ってました。ただ、最近は言語とその周りのコミュニティの影響力というのは、昔以上に強くて、例えばRubyのコミュニティに参加している人は、そこにコミットし続けたいから、Rubyを使い続けるということがあると思う。

私としてはオブジェクト思考言語を使う側であれば、どの言語も影響しあって発展しているので、方言のようなものだと思っていて、それゆえに一つの言語に閉じこもるのはあんまりいいことだとは思わないんだけど、まあ、それを若い人に強制したりはしませんね。

嫌いだと思っている言語を使っても、開発効率が落ちるだけ。どうしてもその言語が必要なら、その言語が好きな人を採用するなどして書いてもらうのが一番です。ただ、本人が自発的に関心を持つなら、どうぞ、どんどんやれって言いますよ。

そういう意味で、最近の若い人の言語への、ちょっと閉鎖的なこだわりを感じる一方で、海外の技術やビジネスへの関心は、いまの若い人のほうがはるかに高いと痛切に感じます。

私はいわゆるブロガー世代で、技術情報の多くはエンジニアのブログで学んだという経験があります。だから今でもブロガーの知り合いは多い。でも、ブロガーといってもほとんどは日本人でね、海外ブロガーとの交流は少ないし、ましてや海外のテクノロジー・スタートアップの経営者のことはほとんど知らない。知っている経営者といったら、スティーブ・ジョブズぐらいかな(笑)。

ところがBASEにいる人とか、周囲のスタートアップにいるような若い人は、逆なんですね。日本人ブロガーのことはあまり知らないけれど、海外の起業家のことはよく知っている。

そりゃそうですよね、20代前半でイノベーティブなビジネスを興してものすごいお金持ちになったような人が、海外にごろごろいるんだから。そういう人たちが自分たちの身近なところでのライバルだという感覚。これは私ら40代にはなかなかないもの。若さというか、世代の違いを感じます(笑)。

BASEのCTOはコードも書くし、マネジメントもする

これからのエンジニアとしてのキャリアをどうするかということでは、30代まではどうにでもなるかなと深刻に考えたことはなかったんですが、40代となるとねえ。ある日ふと思ったんですよ。

「これから転職しようと全然知らない会社に履歴書を書いても、年齢で弾かれる可能性が高い。既にお互い知ってる人などで、先入観なく評価してもらえない場合、転職することにはリスクがあると思います。だから、昨年、BASEにCTOとしてのオファーをいただいたときは、正直嬉しかったですよ。

例えば「35歳プログラマ定年説」ですが、プログラマに定年説なんてありえないと思うけど、ただ年齢によって何を評価されるのかは考えないといけないと思います。ネットビジネスの場合、評価する側が年下である可能性が高く、自分が年をとった経験がないのでわからない、ということが大きく影響すると思いますし。

たしかに歳をとれば、老眼になるでしょうし、記憶力も衰えて、手を動かすスピードも衰えます。でも、10年前の40歳と比べたら、今の40歳のほうが生産性は高いんじゃないかと。

以前と比べたらさまざまな自動化ツールがあって、プログラミングの量自体はずいぶんと効率化されてきた。だから生涯現役プログラマを目指すんだったら、そうした自動化技法も取り入れて、生産性の効率化を図る。プロ野球選手でいえば、若い選手みたいにブンブンぶん回す打法じゃなくて、ちょっと渋い味のある打法でアピールすべきみたいな。

同時に、35歳前後は、現役プログラマでいくのか、マネジメントでいくのかキャリアの選択を迫られる時期でもある。どうしても人一人の生産性に限りがある中で、若い人も含めてどうやって成長していくかという部分における、いわば社会からの要請。

技術よりも企業の経営やサービス開発が好きだという人は、マネジメント方向に行ったらいいし、生涯現役を目指すんだったらその方向へ突き進むべきだし、そこは迷っちゃいけないんじゃないかな。

BASEにおいては、まだ組織も小さいこともあって、どちらのコースでも選べる状況にあると思います。今後、組織が成長していけば、自ずとリーダーが見る範囲が増えていくので、マネジメントの人はどうしてもコードに避ける時間は減っていきます。会社の周りを見渡して、事業の成長に連動して、自ずと自覚が芽生えてくればマネジメントで技術を実現する役割になればいいし、コードに集中したいと言えば、そちらのキャリアパスで最大限、楽しく働ける状況を作るのはCTOの仕事だと思っています。

BASEのCTOとしては、コードも書くし、マネジメントもしています。BASEのCTOになった時に、社内にはコードを書きませんと宣言しましたが、技術にコミットしていないわけではない。コードを書くのがメインの仕事ではないという当たり前のことを言っただけなのですが、実際は小さなアプリや、今後のアーキテクチャのプロトタイプは自分も書いていたりします。

マネジメントをするか、コードを書き続けるかの二元論になっている現状がおかしくて、技術にコミットするという視点なら、どのアプローチにおいても技術屋の楽しさはあるべきだと思います。それにコードを書きたければ、プライベートでやる選択肢だってあります。言語の実行環境やOSは、オープンソースで無料で手に入るし、広告などでマネタイズの手段も提供されているわけですから。

ときどき面接に来られる方で、今の会社では忙しくて何もできないので、PHPは触ったことぐらいはありますが…、とおっしゃられる人がいますが、それだと残念ながら採用は難しい。無料で情報も開発環境が手に入る幸せな状況があるのに、その機会を仕事でしか生かしていないということになりますからね。

インターネットがコモディティになったとき、初めて問われるデザイン思考

  いまIoTとか話題で、Webエンジニアも関心が高く、ハードウェアの勉強を始める人も増えています。マイコンボードをインターネットにつなげてモーターを回したりするのは簡単。でも、その段階を超えてより面白いモノが作れるかどうかは結構難しく、ここが勝負だと思うんですよね。

エンジニアの生態系としては、みんなできそうだからちょっとやってみる人がいていいし、クレイジーにのめり込んでいく人もいていいし、IoTをビジネスにする人がいてもいい。それらがうまく嚙み合っていけば、本格的な産業分野になっていくと思って私も期待しているけれど、まだその段階ではないかなとも思います。

いま、大学院のメディアデザイン研究科というところで「デザイン思考」を学びました。人間デザインを応用する、主として非デザイナーを対象とした発想法です。

その授業ではっとしたのは、「デザイン思考というのは、技術がコモディティ化し、何かを誰もがその技術に簡単にアクセスできるようになったとき、ではどういうものを作るかというときに役に立つメソッドだ」という話。

まさに今のインターネットがそう、すっかりコモディティ化してますよね。だからこそ、あらためてUI/UXやデザインが重要になっている。

世界の誰かがいまどこかでとんでもない技術を考えている。それいいよね、とみんなが乗っかって、そこから有用なプロダクトが生まれていく。そういうプロセスを経ながらテクノロジーというのは発展していくんだなと思います。それは、一つの言語を究めるという話じゃないと思うんですね。

いま想創社のほうで、自分の好きな飲食店を保存したり、近くのお店を探すアプリを書いているんですが、これをどういう方向にエンハンスしていくかでいろいろ考えることがあるんですよね。

理想としては、みんなが求める機能を追加するというより、そのアプリを使うことで、自分の感覚や感情がリッチになるような方向に進んでいきたい。

例えば、Appleの製品みたいな方向。プログラムというよりは一種のメディア。その方向性を自分なりに知りたくて、大学院で勉強しているようなものなんですけれどね。

たぶんこれは私のライフワークになるかもしれない。定年後も一生続けていくかもしれない。定年というのは、社会的要請に従った仕事があるかどうかということですけれどね。それがなくなっても自分はプログラミングを続けていきたいと思っています。

コードのメンテナンスでも、モチベーションを失わないエンジニア

最後に一つだけ、BASEの宣伝というかエンジニアの採用方針、述べます。基本は独り立ちできるエンジニアになれそうな人を採用しますが、現状求める人材としては、あまりコードだけでは判断しないほうですね。

コードの背景にあるその人の背景ややる気、たたずまい、空気感みたいな人をなるべく見ようとしています。入社したら、新機能開発だけではなくて、今あるコードの改善という仕事も結構多い。

そうなると人が書いたコードへの適応力も求められますし、コードを書くという視点だけしかないと、退屈な仕事と捉えられるかもしれない。ソースコードの改善は大歓迎ですが、自分が、他人のコードに適応できないという理由で改悪的に改造してしまう人もいます。

現状維持バイアスは極力避けたいですが、お客様がいるミッションクリティカルな仕事でもあります。この仕事はスキルに裏打ちされた柔軟性が求められると思います。

そういう意味で、新規開発を中心にやってこられた方には、面接でもはっきり言います。継続的改善は退屈かもしれないけど、使ってくださるユーザーさんや、ビジネスへのコミットを意識して、BASEという環境を楽しめるような人がいいんです。

そうした役回りのとき、エンジニアはモチベーションをどう維持できるのか。それはやはり、自分の仕事が世の中の人にどう役立っているかが、実感としてわかるかどうか、というところだと思うんです。

いま当たり前に存在するECというサービスを、当たり前のように使ってもらいたいというのがBASEの考え方。ここに同感できるかどうかが、BASEの仕事ができるかどうかの分かれ目になるかもしれません。

例えば「お母さんが使えない機能は作らない」というのは、BASEのポリシーの一つ。これ強いですよ。ITリテラシーが高そうな人しか使えないような機能を実装しようとすると、社内的にストップがかかりますから。そこでめけずに、当たり前に必要な技術を、涼しい顔でササっと書いたり、直しちゃう、そういうエンジニアと一緒に働きたいですね。

──「技術は教え込まない。発想が生まれる環境を作るのが先」を読む

BASE株式会社 取締役 CTO
藤川真一(えふしん)さん

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年から携帯向けTwitterクライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。モバツイ譲渡後、2012年11月6日に想創社設立。モイ株式会社にてツイキャスのチーフアーキテクトを勤めた後にBASE株式会社のCTOとしてジョイン。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 後期博士課程の学生でもある。
Twitter:えふしん@fshin2000

──執筆:広重隆樹/撮影:刑部友康

自分の書いたコードを誰かに評価されたいエンジニアは、けっこう多い?

ITエンジニアのための実務スキル評価サービス『CodeIQ』で出題されている「コード銀行」問題に挑戦すると、あなたのコードが評価されます。

評価(1)出題者からの評価  ⇒評価フィードバック例を見る

  • 企業ではたらくという観点からあなたのコードをチェックします
  • フィードバックされた観点をふまえてコードを書くと世の中の企業にとって「いいコード」が書けるようになります

評価(2)企業からの評価  ⇒評価フィードバック例を見る

  • 「あなたと一緒にはたらきたい」という企業からスカウトが届きます
  • あなたのコードが社会でどこまで通用するか、リアルな評価が得られます

興味を持った方はこちらからチャレンジを!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

■関連記事

今週のPickUPレポート

新着記事

週間ランキング

CodeIQとは

CodeIQ(コードアイキュー)とは、自分の実力を知りたいITエンジニア向けの、実務スキル評価サービスです。

CodeIQご利用にあたって
関連サイト
codeiq

リクルートグループサイトへ