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2015-07-12

「文化のアレンジ」「PC的配慮で避ける表現」が生む問題…ボストン美術館の騒動が興味深い+話題の「オープンレター」やステロタイプ問題

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ボストン美術館の「キモノ試着イベント」が中止に 理由は人種差別白人至上主義http://huff.to/1TrqtkG


ボストン美術館7月7日、巡回展で行われていた着物の試着イベント「キモノ・ウェンズデー」を「人種差別だ」という抗議を受けて中止にした。

中止となったのは、クロード・モネの「ラ・ジャポネーズ」の前で着物に触れてみたり、試着して絵画の前で記念撮影できるイベントソーシャルメディア上で「文化的に無神経で人種差別だ」との抗議の声が広がり、美術館現場で抗議する人たちも現れた。批判はさらにエスカレートし…

(略)

イベント自体は攻撃的でなくても、損害を与え、精神的に傷つけるものだという。「オリエンタリズムの影響で南アジア東アジア、そして中東伝統的なさまざまなカルチャーエキゾティックになる。そしてその結果、現在まで攻撃的な姿勢がオリエンタリズムの人々に向かい続ける」


ハフィントンポスト見出しの付け方がわざとかミスか紛らわしい言い方で、「理由は人種差別白人至上主義?」では、「企画が人種差別「だと批判を受けた」」という本来の意味ではなく「人種差別によって企画が中止となった」とも読めてしまう。まあ、巧い釣りだな、参考にするわ(笑)


で、そこにつけたブクマを少し補足して。

A国の文化がB国で、同国流のアレンジや誤解を含みつつ定着

  ↓

A国では「その誤解やアレンジは差別だ、偏見だ、オリエンタリズムだ」vs「どんな形でも普及は嬉しい、大歓迎。そのアレンジも面白い」が半々ですた。

  ↓

さあ、B国どないしょ?


どうするったって、実際的なところでは「A国がらみの話はめんどくさい。肯定も否定も、純粋もアレンジも含めてタブーにしとけ」といって、無かったことにするのが一番効率的ではある。…いやいや笑い話ではない、それに近い実例がいろいろあるような、無いような…。



まあ、そういうもんだろう。

スシもニンジャカラテカブキも、「あちらでは顔にペイントして毒霧を吹くのがカブキ」みたいなアレンジで伝わっても…これは喩えが悪いな(笑)

とにかく上にあるように、「あちらではアレンジされてこんなふうに変形されたの?」というのに怒る人もいるし、嬉しい人もいる。

これはもう、必然的にどうしようもないことだ。

ただ、それを今回のように「NO」というアクションに発展させて、相手に抗議だか圧力だかを加える勢力は、必然的に「許容する側」ではなく「怒る側」であろう。

んで、その抗議は、正否の議論は多いにやればいいのだが、基本は抗議手段が「いかにして」の問題で、暴力脅迫でなければそれは自由にやってもらうしかない。

ただし、結果としてそれによって(主催者自由意志とはいえ)企画が中止したり変更になるなら、「アレンジ結構。そういう形で定着するのは嬉しい」「自分は全然問題とは思わないんだけど」と感じる側には、「別の形の抑圧」として機能するのですな。

これは文化問題やオリエンタリズム問題というよりすべての「抗議」問題、というべきかもしれない。


そして自分はけっこう、こういうPCをめぐってややこしい事態になっているのを見るのが好きだったりする(笑)。PCは「おもしろい」!



こういうオープンレターが話題になったが

在日黒人男性から日本人へのオープンレター

http://bayemcneil.blogspot.jp/2015/07/an-open-letter-to-japanese-people-from.html


http://www.locoinyokohama.com/2015/07/08/an-open-letter-to-japanese-people-from-black-men-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%AE%E7%9A%86%E3%82%93%E3%81%AA%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%B8%E3%81%AE%E9%BB%92%E4%BA%BA%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE/


だが、正確に言えばこの意見も「在日黒人男性の中の一個人から」のオープンレターだな。

実際の話として、ステロタイプといえば悪く聞こえるが、断片的なものでも、異なる国や民族などの「パブリックイメージ」を起点にしてコミュニケーションを取り、そこから理解を深めることを、「当事者のあちらが喜ぶ例」も、厳然として存在しているのであることは押さえたほうがいい点だ。

それとも、「ヘタリア」は絶版にしますかな?

ヘタリアWorld・Stars 1 (ジャンプコミックス)

ヘタリアWorld・Stars 1 (ジャンプコミックス)

:黒澤が死んだ日、キューバ映画研究所留学してた著者(四方田犬彦)は所長から「どうか気を落ち着けて聞いてくれ。貴国の偉大なクロサワが先ほどなくなった」と厳粛に伝えられたという。カストロも追悼声明を出し、街角で「クロサワ!」「ヨジンボー!」と声を掛けられた。

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150202/p2

一人の兵士が、ひょいと「日本人だというが、だとしたら空手はできるのか」と訊いてきた。少しばかり心得はある、と答えると、俄然兵士達の目の色が変わった。矢継ぎ早の質問攻めにあい、そればかりか、わざわざ兵舎まで「伝令」が走っていく。そのうち軍曹だの将校だのが「ニッポンカラテマン」の顔を見にやってくるという騒ぎとなった


ジャパン、ヤクーザ!」と話しかけられて、にこやかに山口組直参組長の話題を教えてあげたり、「ニンジャニンジャ!」と言われて「ニンジャキリング・テクニーク!」と立ち関節技を極めてあげることのできる人だけが「あそこは親日国」とか言いなさい、と思う中東某国の昼下がりです。


昨日取材した親露派戦闘員の1人は「キョクシン、オオヤマ、イチ、ニ、サン」と知る限りの日本語で話しかけてきた。空手をやっていたと笑顔で型を見せてくれた=日本時間7月22日発信


パリ中東移民の子孫と思しき少年などからも大喜びで「アチョー」のポーズされました。皆さんもパリとかで歩いていて遠くの方からちょっとエキゾチックでかわいい男の子が目ざとく見つけてポーズ取ってきたら微笑んでやってください

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20141019/p1

こんな交流はあって良かったのか、それともステロタイプ唾棄すべき事例か。グルジア兵士中東庶民は、こういうふうに話しかけるのを自制すべきだったか。


大傑作「政治的に正しい魔王勇者」(togetter

読み逃すところだった。偶然、最近目にすることが出来た。

政治的に正しい魔王勇者 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/844292

IEND @IEND29 2015-07-06 22:27:30

物わかりのいい勇者「くっ、ここが魔界か、決して人間界が優れていて魔界が劣っているとかそういう意図はないんだが、生まれ育った文化背景が大きく違うからやはり最初は戸惑ってしまうぜ…」

 

IEND @IEND29 2015-07-06 22:29:37

魔王も「ふはは、よく来たな勇者よ、だが、これは決して蔑視するつもりで言う訳ではないが、統計的肉弾戦においては魔族より不利な傾向にある人間が我に挑むというのか? おっと、もちろんすべての人間がそうではなく、現に我が魔王軍でも地獄の騎士などが欠かせない戦力として活躍しているがな!」

 

IEND @IEND29 2015-07-06 22:32:25

勇者「確かに現状においては統計的人類の魔族に対する戦闘力の不利は否めないかもしれない。だが、俺たちには正義の心がある。ごく一部の例外的邪悪な魔族などに負けるものか!」魔王「面白い、ならば我が力の前に絶望するがよい、ごく一部の例外的に愚かな人間どもよ!」



IEND @IEND29 2015-07-06 22:24:11

もしも人間並みの知性と強力な肉体を持つ魔族が地上に出現したら、放送コードとかも大分変るんだろうな。たとえば「ゴブリン退治」とか放送禁止用語になるかも知れない。

 

IEND @IEND29 2015-07-06 22:24:11

逆にファンタジーとかで、魔王人間を虫けら呼ばわりなんかすると直ちに「※今日では一部不適切表現がありますが、時代背景や作品の芸術性を尊重しそのまま放送いたします」とかテロップが流れたりする。





和食認定構想(第一次安倍政権)」を「スシポリス」だ、と批判、という話がありましたなあ。

【参考】2007年2月2日 東京新聞こちら特報部」記事

(検索して発見できたhttp://yomi.mobi/read.cgi/news22/news22_newsplus_1170393908 からの孫引き引用

【論説】 「ウソ日本食蔓延で、認証制度?…日本政府センス悪すぎ。友達づくり、ヘタなんですねえ」…東京新聞


農林水産省海外にある日本食店の認証に乗り出すという。世界で人気の日本食に、現地風変わり種が多いのは事実だが“日本食ファン”は“日本シンパ予備軍”でもある。水を差すことが国益になるのか。ちょっとばかり、無粋でよけいなお世話なんじゃ?

(略)

つくづく成熟していない国だと思う。文化は人との交わりから生まれるものだから、混じり合っていくこともある。それを規制したり、正統性概念を持ち込むのはおかしい」とあきれる。

 

日本イタリア料理も、ケチャップで味付けしたナポリタンから始まり、広まるうちに本物志向が芽生えた。ナポリに「スパゲティナポリタン」がないのは有名な話。

(略)

海外で『おや?』と思う日本料理も、地元に受け入れられているのを見ると嫌な感じはしない。むしろ、食文化の違いを感じるきっかけ。日本を知る入り口になり、そこから日本への興味や理解が深まるかもしれない。その方が、どんな料理を出しているかよりも大切では。本当の日本食を守りたいと真剣に思うなら、まず日本食育でしょ?」

 

デスクメモ>

美しい国」の政官界の皆さま。和食作法無視した箸の持ち方で、肘をついて食事をかき込むお仲間をよく見かけます。伝統作法ができなくて何が悪いと言うのなら、伝統的でない料理を受け入れる度量も持つべきでは? 税金使って日本シンパ説教垂れるなんてセンス悪すぎ。本当にへたなんですねえ、友達づくりが。(隆)


この認定制度構想は、別にアレンジした料理を排除するのではなく、それはそれとして本格的な日本食を「認定」するもので、「本格的な日本料理が増えれば、日本からの食材輸出も増える」という実利的な面も視野に入っていたのに、「諸外国でアレンジされた文化は不純だとケチをつけるのは排外主義的だ」という批判にさらされたのでした。第一次安倍政権、しかものちに資金問題で自殺した松岡農相の肝いりだということもあったのでしょうかね。


この記事の英訳を、ボストン美術館企画の抗議者に読んでもらったらどういう感想を持つのだろうか。

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