基本的に数学得意なのは女子で、男子が理系の進路や仕事を選ぶのは「数学が得意」という思い込みからであるようだ。
米国のワシントン州立大学の研究グループが、性別と役割についての国際誌であるセックス・ロール誌2015年6月号に報告している。
女子の方が算数は得意なのに
米国では、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の分野、日本で言う理系はそれぞれの分野の頭文字を取って「STEM」と呼ばれているようだ。
職業として見ると、男女差があると分かっている。
女性が小学校の算数のテストで男子より優れていると分かっているが、不思議と男性の方が理系の進路や仕事に進むことが多くなっている。
2つの実験を実行
研究グループは数学の能力についての偏り、経験がどのように数学に関係した進路、職業の選択に影響するかに注目。簡単な実験をしてその背景について推定している。
研究グループは2つの実験を行った。
一つ目の実験では122人の学生を対象として、まず数学の試験を受けてもらい、どれだけ正しい答えを出したかを予測してもらった。実際の試験の点数についてのフィードバックした上で、その後もう一度試験を受け、点数を予測してもらうというもの。
もう一つの実験では、184人を対象として、同じように数学の試験を受けてもらって、正しい答えを出したかを予測してもらう。その上で、参加者はフィードバックをしなかった。その上で、理系の進路や職業に進むつもりかを聞いた。
男性は能力を過大評価する
2つの実験を通して、男性は自分の数学の能力を過大評価する傾向があると分かった。
女性はどれだけできたかを正確に報告していた。
第1の実験では、男性でも2回目の試験ではより正しく点数を見積もれていた。第2の実験では、男性の参加者は数学能力に自信を持ち、女性よりも理系の進路や職業を選択している傾向が強くなっていた。
能力の差は無関係
科学、技術、工学、そして数学の分野における性差は必ずしも能力の差ではないと研究グループは説明する。
むしろ能力を過大に評価しているかどうかが大切だと説明している。
研究グループは今回、数学について自信につながる経験を持つ女性は、計算能力を実際よりも高く見積もっていた。
ときには思い込みも大切
若いころは女性の数学の才能をもっと引き出すとよいと研究グループは指摘する。
研究グループは、心理や職業の決定にあたって、基本的には現実的、客観的に考えるのは大切としつつも、数学の能力に限っては、ある程度、自分自身を知って、物事を決断するためには、現実を知り、客観的に物事を捉えることが確かに大切なのだが、数学の能力についてはある程度の幻想を抱いて取り組んでも良いという。
思い込みも大切なところがあるのかもしれない。
文献情報
Men think they are maths experts, therefore they are. Springer 23 June 2015
http://link.springer.com/article/10.1007/s11199-015-0486-9
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