バラクーダなど熱帯の魚の持つシガテラ毒によって病気になった人が思いのほか多いと海外から報告されている。
地球温暖化で北上の可能性も指摘されており、場合によっては被害の範囲も広がりかねないようだ。日本も無縁ではないかもしれない。
一般的な食中毒
米国のフロリダ大学の研究グループが、米国熱帯医療・衛生学会の発行するアメリカン・ジャーナル・オブ・トロピカル・メディシン・アンド・ハイジーン誌のオンライン版で、2015年6月29日に報告した。
シガテラ中毒は、魚に関連する食中毒では最も一般的なもの。毒は熱帯や亜熱帯の暖かい海の珊瑚礁で育つある種の海藻に含まれていると研究グループは説明する。小さな魚がこの海藻を食べて、さらにその魚を大きな魚が食べるという食物連鎖で、最終的に人間が食べている。
研究グループによると、シガテラ毒を持つ魚としては「バラクーダ」のほか、「ハタ」「カンパチ」「ベラ」「フエダイ」「サバ」「マヒマヒ」と幅広い魚が関係すると言う。
1時間から3時間で吐き気など
この毒に当たると、1時間から3時間以内に激しい吐き気、嘔吐などの症状が起こる。場合によっては、痛みを伴い、手足や関節がヒリヒリと痛んだり、筋肉痛が起こったりして、数カ月から数年続くこともある。
有効な治療法はなく、マンニトールという薬を感染初期に投与すると症状を抑えられると言われているが、科学的な根拠は限られている。
一般的な食中毒
厄介なことに、シガテラ毒は火を通しても冷凍しても壊れないところだ。シガテラ毒を検知する検査法もなく、においや変色も無い。
研究グループによると、行政で把握している報告数では、中毒の発生頻度は10万人当たり0.2件と見積もられていた。
このたび研究グループの調査によれば10万人当たり5.6件程度と30倍近くと見られた。2000年~2011年に報告されたシガテラ中毒の症例291件のほか、趣味で釣りをする人へのメールによるアンケートで、シガテラ中毒と思われるケースが5352件存在していた。行政の方に報告されていなかった。中毒になった人の多くが医者への受診していなかったり、診察した医者も認識不足のために行政への報告をしていなかったりしていたと考えられる。
北上の証拠は今のところなし
シガテラ中毒が考えられていたより広く普及しているという結果。
研究グループによると、地球温暖化の影響でシガテラ中毒が北上する可能性が心配されるという。現在のところは、北上の証拠そのものはなく、フロリダが米国のシガテラ中毒の最北端と説明している。
日本でも温暖化の影響は出てくる可能性ある。
文献情報
Number of people sickened by toxin in barracuda and other tropical reef fish higher than previously reported
Radke EG et al.Epidemiology of Ciguatera in Florida.Am J Trop Med Hyg. 2015 Jun 29. [Epub ahead of print]
http://www.ajtmh.org/content/early/2015/06/24/ajtmh.14-0400.abstract
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