IT/Webパーソンの繋がり続ける転職サイト

企業インタビュー

「何があっても、全てを許そう」世界一を目指さないから、管理されたい人は腐る制作会社 | スタジオ・アルカナ

「何があっても、全てを許そう」世界一を目指さないから、管理されたい人は腐る制作会社 | スタジオ・アルカナ

「誰にとっても、楽しく便利なおもちゃ箱」をコンセプトに、Webコンテンツの受託開発から自社サービスの制作を手掛けるWeb制作会社、株式会社スタジオ・アルカナ。代表を含めた社員数は17名という、少数精鋭のチームで開発を請け負いますが、メンバーが開発したいと思えるサービスに時間を充てるため、売上はプラマイゼロであれば良いというスタンスをもっています。

同社で代表取締役社長を務める鎌田学氏は「飲み会のお金も経費で落としてOK」と話すほど社員の主体性を重んじており、事業方針や社員の働き方からも自由な社風が感じられます。では、社員が自主的に「儲かるモノづくり」を目指すような会社づくりとは、どのようにして実現されているのでしょうか。今後の展望とともにお話を伺いました。

アルカナPF

鎌田 学氏

すすきの飲食店勤務からIT業界へ転向しようとしたが、数十社落ちたので、フリーランスエンジニアに転向。フリー時代は、Macのアプリケーション開発等に従事し、サミーネットワークス777Twon.net(PC版)立ち上げメンバーとして外注ながら参画。2005年にスタジオ・アルカナ創業メンバーとして参画し、2009年に同社の代表取締役に就任する。

「受託開発よりサービスで飯が食える会社になりたい」飲食店勤務のプログラマーほぼ未経験で東京に出てきた

アルカナ記事01

スタジオ・アルカナが創業されて5期目の2009年に代表取締役社長に就任した鎌田氏。創業当時からエンジニアやディレクターとして働いていましたが、もともとはWeb制作とはかけ離れた異業種の出身でした。

鎌田:

2年間、専門学校でプログラミングの勉強をしていたんです。卒業後しばらくしてから、すすきの(北海道)の飲食店で働いていました。でも、やっぱりIT/Web業界で働きたいっていう気持ちは捨てきれなくて、飲食店の仕事を辞めて、あてもなく無職で東京に出てきました。

プログラマー未経験だったんですが、すすきのにいる間は趣味でHTMLを書いたり、PhotoshopやIllustratorを使ったりしていたのもあり「Macさえ使えればいい」という運の良い条件で、Macのアプリケーション開発の仕事を横浜で見つけることができました。最初はフリーランスとして2年間、下積み時代を過ごして、その後にスタジオ・アルカナの前身になったチアーズという会社に常駐して、そのまま正社員になりました。

スタジオ・アルカナの創業メンバーが偶然にも専門学校の同期だったことから、会社の立ち上げに加わることになった鎌田氏。前代表の石田氏から経営を引き継ぐことになった際に、たった1つ心を決めていたのは受託会社からの脱却でした。

鎌田:

発起人ではあるんですが、僕はスタジオ・アルカナの2代目代表なんです。代表と交代したとき決意したのは、自分たちがつくったもので飯を食っていく会社に変えることでした。とはいっても、残念ながら今でもバリバリ受託開発やってるんですけどね。

過去に何度か、自社サービスの開発に携わらせていただいたことがあって。そのとき、月の売上がウン億っていう世界を初めて目の当りにしたんですよ。それで、やはり受託開発はあまり儲からないんだなと再認識した。

モノづくりをする会社では、特に「儲かるものをつくるかどうか」が命題となります。そして、モノづくりを愛するからこそ「世の中に需要がなくてもつくりたい」という気持ちと「儲かるものをつくっていたら、好きなものはつくれない」というジレンマを抱える方たちが、このIT/Web業界に多くいるのではないでしょうか。

鎌田:

前代表の石田は生粋のエンジニアで、どんな開発でも楽しいというタイプの人間でした。僕も楽しくないわけじゃなかったんですが、やはり会社の方針としては、自分たちがつくったコンテンツとかサービスで飯を食っていくべきだと。そういう話をすることで、社員の意識を変えたかったんです。

最初の自社サービスはマネタイズ無視のずっと0円で「給料を払ったら口座の残高が500円ぐらいになった」

「受託開発ではなく、自社サービスで利益を出す会社に」という方針に変えてから4年後の2013年11月、スタジオ・アルカナ最初の自社サービス『SIGN』がリリースされます。

鎌田:

僕らがリリースした最初のコンシューマー向けサービスがSIGNで、これはブラウザで使える議事録ツールです。2013年11月にリリースして、そこからずっと完全無料。ユーザーから一切お金は取っていない、マネタイズを無視したサービスなんです。

しかし“自社サービスで利益を出す”という当初の目標でサービスをつくったにも関わらず、利益が生じない戦略を選んだ狙いはどこにあったのでしょうか。

鎌田:

今になってよく考えると、コンシューマー向けに公開したものを最初から法人向けに販売していればマネタイズできたかなと思います。でも僕たちにとって最初のサービスだったので、改修や運営体制の強化を重視するべきだと考えていました。

マネタイズは大事だけど、開発した本人たちが得たいリターンが情報だったり知名度だったり、ちょっとずつ違っても構わないと思っているんです。

自分たちでサービスをつくっていく会社になることを長期的に考えれば、1つ目のサービスであるSIGNは「運用ノウハウを得ることこそが利益になる」と考えた鎌田氏。ですが、運用やカスタマーサポートといった受託開発と自社サービスの差で苦労がありました。

鎌田:

僕が代表になった直後からサービスをつくるための目標として「3年間は守銭奴になる」というのを設けて、バカみたいにお金を貯めたんです。お金が出る仕事を率先して受けるようにして。そのお金があったから4年目以降に少しずつ投資するような使い方をして、現状のサービス開発ができているんです。

同時にやってる受託開発とリソースは同じなので、注意深くアサインしたり、スケジュールを組むようにはしています。だけど自分たちでサービスをやるとなったら、リスクを取ろうという決意はありました。とはいえ、社員の給料を払ったら口座の残高が500円ぐらいになって、あれはさすがにヒヤっとしましたけど(笑)

過去に2回だけトップダウンで命令を下したことがある。社員旅行の行き先を、沖縄とグアムにすること

アルカナ記事002

受託開発を手掛けつつ「空いた時間でサービスをつくっている」と話す鎌田氏。そこで、受託開発と自社サービスを並行させるとなると、社員の方にとっては負担しかないのではないか尋ねたところ「せっかく経験できる状況があるのであれば、やりたいという人が多いんです」と答えます。

鎌田:

自主的にやりたいことがある人間が多いので、可能な限りメンバーの要望にNOと言わないように心がけています。例えば、iPhoneアプリをつくりたいんで、Macを1台買ってくださいという話が出たことがありました。

そのとき、すぐにiPhoneアプリをリリースする予定はなかったんですけど、みんな受託開発をやりながら空いた時間でサービスをつくっているんです。それでさらに勉強のために「iPhoneアプリをつくってみたい」と言われたら、コスト云々じゃなくて、できる限りやらせてあげなければと思った。

業務に直結しなくとも、自ら必要な知識や環境を整えるような向上心の高いメンバーが集まっているスタジオ・アルカナ。彼らのモチベーションはどこから湧いてくるのでしょうか。

鎌田:

モチベーションコントロールと呼べるような福利厚生やルールは設けてないんです。掃除も基本的にはメンバーに「やらなくていいよ」と言ってますし。彼らには日々、案件に従事してもらって、とにかくがんばっていただいているので。

それ以外の負担をとにかく減らすことが、今のところ経営者として気にかけているところですかね。金銭的な負担もかけないようにしています。飲み会をやったり、バーに行って飲んだりするお金も経費で落としてOK。仕事帰りにビール1本、空けてから帰っているメンバーもいたりしますしね(笑)

鎌田氏の人柄がスタジオ・アルカナという組織に反映され、確かな企業文化を築いています。そこで、代表として何か大きな判断を必要とした場面について質問を投げかけると、一般的な制作会社とは違う雰囲気を纏ったスタジオ・アルカナらしさを聞くことができました。

鎌田:

トップダウンで命令を下したことがあるのは、過去に2回だけ。社員旅行の行き先を「沖縄とグアムにしたい」って言ったこと。あれだけは譲れなかったです。せっかくだからリフレッシュしたいし「南国行こうよ」みたいな。それ以外はボトムアップというか。でも、僕に上がってくることも少ないです。

みんなが自由にそれぞれ活動してます。でも、締めるところだけは締めて、基本はみんなに任せている。意図しないで主体性が発揮される環境が整ってきたと思っています。

管理されたい人は腐っていく会社。でも「何があっても許す心でいるし、責任を取るのは社長の役目」

アルカナ記事03

スタジオ・アルカナでは主体性を重んじるあまり、就業規則もほとんどないそうです。では、鎌田氏の役職である“代表”の役割はどこにあるのでしょうか。

鎌田:

最終的に責任を取らなければいけないのは社長。そこの責任は重いなとは思いますが、別に怖いと感じることはないです。

スタジオ・アルカナの現在の社員数は鎌田氏を含めて17名ですが、次のフェーズに向かうため30人規模の組織を目指しています。会社として大きな転機を迎えようとしているからこそ“今のうちに全部やっておきたい”と話す鎌田氏。

鎌田:

売上目標はちゃんとあります。ただ、僕らの会社は“売上を立てる”フェーズから“時間をつくる”フェーズに移行している。つまりプラマイゼロで良くて、プラスのために充てられる時間があるならば、その時間を使ってサービスをつくりたい。

まだ会社としてのブランドを確立できるステージじゃないと思ってるんです。むしろ、次にそのステージに進んだらできなくなることを、今のうちに全部やっておきたい。

サービスをつくることができる会社に成長していくため、事業のステージや働く環境の変化を“何があっても許す”という経営スタンスで乗り越えることが、スタジオ・アルカナでは重要になるそうです。

鎌田:

『ONE PIECE』にクロコダイルっていうキャラクターがいるんですけど、クロコダイルが「全てを許そう、ニコ・ロビン」って言うセリフがあるの知ってます? 僕の経営スタンスは、まさにあれです。何があっても許す心でいて、ケツは僕が拭くスタンスでいないと務まらないし。任せたいことを任せられなくなっちゃうんで。

スタジオ・アルカナは、良くも悪くも適当な会社だと思います。なんかこう「日本一になろうぜ、世界を目指そうぜ」みたいな、尖った雰囲気を持ってるメンバーがいないんです。だから、管理されたい人は腐っていくと思います。逆に言えば、自分の仕事を自分でおもしろくできる人はすごくやりがいを感じられるはず。

“自分の仕事を自分でおもしろくできる人”が集まったスタジオ・アルカナ。それは会社のコンセプトである“おもちゃ箱”という言葉で表現されていました。

鎌田:

会社のコンセプトとして持っているのは“おもちゃ箱”です。代表就任時に「どういう会社でありたいか、考えて文章にしろ」と当時の役員に言われて考えた言葉がそれです。おもちゃ箱って、子どもたちが遊ぶものが入ってますよね。その中にあるものは必ず安全でなければならないですし、楽しくなければならない。

それと同じように僕らが提供するものは、必ず便利だと思ってもらいたいし、楽しいと思ってもらいたい。そういう価値を主体的につくっていける、少数精鋭な集合体をスタジオ・アルカナは目指しているんだと思います。

受託開発であれ自社サービスであれ、Web制作会社が大事にしていくべきことは何かと尋ねると「僕たちが創業時から守っているのは、提供する価値に対する傲慢さとプライドです」と答えた鎌田氏。コンペや価格競争で勝負したり、会社同士の関係性で判断するような仕事を受けることはしないそうです。

今後はWebサービスの強みを活かして、多言語への対応などでグローバル展開を視野にいれているというスタジオ・アルカナ。鎌田氏が目指す“自社サービスで飯が食える会社”は、Web制作会社でモノづくりに励む人たちが「この業界で生き残っていくためには」という壁に当たったときの指針になっていくのではないでしょうか。

スタジオ・アルカナの採用情報はこちら

インタビュアー:そめひこ / カメラマン:大塚麻祐子 / 編集者:小田直美

Pooleに無料登録する

この会社が募集中の求人

あなたにオススメの記事

ページトップに戻る