印南敦史 - スタディ,リーダーシップ,仕事術,働き方,書評 06:30 AM
結果を出している外資系エグゼクティブの「5つの行動法則」
『どの会社でも結果を出す「外資系エグゼクティブ」の働き方』(フラナガン裕美子著、日本実業出版社)の著者は、外資系企業と日本企業、タイプの異なる双方の組織で働いてきたという人物。そんな経験を通じ、痛感したことがあるそうです。
私たち日本人のDNAには、先人から受け継いできた勤勉さ、実直さ、几帳面さ、粘り強さ、辛抱強さが備わっています。その上で私たちに足りないのは、日本の良さをキープしつつ世界レベルの「良いところ」を取り入れること、変化を恐れないこと、そして無駄なところはフレキシブルに(柔軟性を持って)捨て去ることです。(「まえがき」より)
つまり本書は、著者自身が一日本人としてエグゼクティブたちと仕事して得た学びを伝えようという意図に基づいて書かれたもの。印象的なのは、著者が「この本には『モンスター上司』がたくさん登場します」と書いていることです。そのことばは「権力を振りかざし、やりたい放題のわがままな上司」をイメージさせもしますが、著者が仕えてきたモンスター上司は、まったく違うタイプなのだとか。
・「積み重ねてきた努力と揺るぎない実力」に支えられている絶対的な自信
・「自分が部下の誰よりも仕事ができるからこそ上の地位にいる」という自負
・「責任やリスクを取るのは当然」と心得ているマネージメントスタイル
(「まえがき」より)
そのすべてを備えているからこそ、自分にとって必要なものを堂々と要求し、自分への拒絶を許さない「理由あるわがままさ」を貫き通すということ。しかも、周囲が畏怖と尊敬とともにボスとして一目置いている。著者がいう「モンスター上司」とは、そのような人のことだといいます。
しかし、そうなると、「モンスター上司」たる外資系エグゼクティブについてもっと知りたくなります。そこで第1章「世界中どの会社でも『結果を出す人』の5つの共通点」中の「世界中どの会社でも『結果を出す人』の5つの行動法則」を見てみましょう。著者が実際に見てきた、結果を出す人の条件について書かれた箇所です。
行動法則1 「"正しい"ワンマンスタイル」で人を動かしている
「ワンマン」ということばにはネガティブな印象がありますが、実は「ポジティブなワンマンスタイル」も存在するのだと著者。いい換えればそれは、「自分の周囲の状況を、上下の別なく分析、加味し、冷静な判断のもとで指揮官としての威力を発揮するタイプ」だということ。
だとすれば、そこに自分勝手な見栄が介入する余地はありません。あるのは「部下を守る」という決意と、エグゼクティブとしてなにがあっても責任をとるという自信のみ。それこそが、"正しい"ワンマンスタイルだということです。その証拠に、"正しい"ワンマンスタイルを使いこなせる人は、仕事ができるだけではなく、どれだけ上の地位に昇っていっても、まったく態度が変わらないもの。著者の上司にも、そういう人がいたそうです。
一方、従来の「ワンマン」は自分の富や名声だけにとらわれ、部下や組織を顧みずにわがままを突き通すもの。しかしそれは、傲慢以外のなにものでもありません。(31ページより)
行動法則2 世界基準の「リスクヘッジ力」と「決断力」を磨いている
仕事だけではなく、人生のどのような場面においてもリスクはつきもの。当然のことながら、リスクを取ることの重要性は、世界共有のエグゼクティブの常識でもあります。しかし同時に、リスクヘッジする能力もまた不可欠。
そして、どちらにも必要とされるのが、決断力を磨くことだといいます。たとえば自分のクビがかかっているような場面でも、守りに入りたくなるような状況でも、決断を躊躇しないのができるエグゼクティブ。「エグゼクティブ・ディシジョン(決断)」は無謀なものではなく、計算/分析し尽くされた結果の産物だからです。
だとすれば、それができるのは肝が座っている人ではなく、決断力を磨くトレーニングを心がけている人たちということになるでしょう。そして責任を持つ覚悟があれば、決断力は磨けるもの。著者はそう主張しています。(32ページより)
なお、リスクヘッジ力と決断力を使いこなすためには、日ごろから情報収集を心がけておくことが大切。引き出しが多ければ多いほど、どんな場面でも対応が可能になるからだといいます。そこで著者は、次のチェックリストによって自分の情報収集力を確認してみることを提案しています。
(73ページより)
- 仕事をしながらも、いつも耳を全方位に傾けていますか?
- 目は余すところなく、レーダーのようにあらゆるものを観察していますか?
- わからなければすぐに調べていますか?
- 知らなければ、「教えてほしい」と素直に言えますか? 忙しさにかまけて「いつか調べよう」と放っておいたりしていませんか
?- 「これは自分の仕事や興味に関係ないから必要ない」と勝手に決めつけたりしていませんか?
- 情報の価値を、提供者の役職や社会的地位で判断していませんか?
- 日本以外のところの情報を、「自分には関係ないから」とスルーしたりしていませんか?
- 新しい情報がもたらされたとき、先入観なく受け入れていますか? 同時になんでもかんでも鵜呑みにしたり洗脳されたりしていませんか?
- 冷静に分析してよいところだけを吸収し、悪いところ、必要ないものは捨てるプロセスを意識していますか?
- 得た情報をきちんと活用していますか? 宝の持ち腐れになっていませんか?
これらの質問を自分にしてみて、「できていないかもしれない」と思えるところがあれば、改善すべきだと著者は記しています。(70ページより)
行動法則3 時間に支配されずに、自ら「コントロール」している
時間管理の重要性は、エグゼクティブに限ったものではありません。事実、社会人になると、新入社員の段階でその大切さを叩き込まれるものです。とはいえ著者は、「会議の5分前までに準備をするだけが時間管理ではない」とも記しています。
端的にいえば、時間に管理される側から、時間を自分のものとして操り、管理する側へシフトする。それがエグゼクティブの時間についての考え方、管理の仕方だというわけです。(33ページより)
行動法則4 「謙虚さ」と「プライド」を併せ持っている
日本人は世界中のどの国の人とくらべても、謙虚さをしっかり身につけているといわれます。しかし興味深いことに、会社のエグゼクティブとなると話は別なのだとか。全員が謙虚であることを美徳としているわけではなく、海外においてもそれは同じだそうです。
とはいえ、ここで明暗がはっきりと分かれるのもまた事実。つまり、謙虚さを忘れた人は人心をつかむことができないというわけです。なぜなら慢心している人は、そこで自らの成長を止め、周囲から尊敬される対象ではなくなってしまうから。「自信」と「慢心」を混同してしまっているということです。そして、このタイプが持ち合わせているのがエゴだと著者は指摘しています。
さらには当然ながら、できるエグゼクティブほど、謙虚さとプライドの大切さを知り尽くしているということ。(33ページより)
行動法則5 柔軟性を持ちながらも、「信念」はブレない
柔軟性とは、たとえば新しい意見に対して、先入観を持たずに耳を傾けられること。固定観念にとらわれず、なんにでも興味を持ち、楽しめるスキルともいえると著者はいいます。限られた環境のなかで臨機応変に、不可能を可能にすべく行動に移し、ミッションを実現できる力であるとも。そして同時にエグゼクティブたちは、自信と組織を成長させていく意識を持ち続け、信念をブレさせず、いつもチャレンジを楽しんでいるのだそうです。(34ページより)
次章以降では、上記の行動法則について詳細な解説がなされています。つまり本書を熟読すれば、著者に近い目線から外資系エグゼクティブのあり方をつかむことができるわけです。外資系企業に勤める人にとっても、外資系を目指している人にとっても、きっと役立つ内容だと思います。
(印南敦史)
- どの会社でも結果を出す「外資系エグゼクティブ」の働き方
- フラナガン 裕美子日本実業出版社