経営者が政治家や官僚と上手に付き合うにはどうしたらいいのか?


by 川鍋一朗 (経営者)


日本交通の代表をしていると、政治家や官僚とやりとりすることがよくあります。事業が法律や制度と密接に関係する場合、事業拡大のためには、政治家や官僚と深くやりとりをする必要があるのです。

しかし、単に知り合いをつたって、政治家や官僚と知り合って話せばいい、というわけではありません。彼らと上手に付き合うためには、政治家や官僚組織の体質や生業を理解しないといけません。これは、非常に時間がかかる仕事なのです。

基本的に政(政治家)・官(官僚)・民(国民)は、ジャンケンでいうグー・チョキ・パーの関係と考えてください。有権者である国民は、政治家に対して強い。政治家は偉そうに見えますが、自分の選挙権を持っている有権者の前では圧倒的に弱いんです。政治家は国民に付託された人たちですから、付託する人に弱いわけです。

一方、政治家は誰に強いかというと官僚です。自分たちが上司ですから。特に政府に入った政治家にとって霞ヶ関は部下にあたります。生殺与奪の権利を握るわけです。

そして官僚は、国民の監督者ですから国民に対して強い。

この関係性をよく理解しないと、政治家や官僚とのよい関係は築けないでしょう。

官僚との付き合いに経済合理性はない


しかし、だからといって、官僚のところへ話を持って行くのに政治家の力ばかり使っていると絶対に嫌われます。表面上は従っていても、いつも自分より強い者の力を使ってモノを言ってくる人は嫌な奴と思われるわけです。話を持っていくときは、必ず相手がどんな立場の人かを考えて、なるべくちゃんと下の方から話をあげることが大事です。

僕もたまにやってしまうのですが、いきなり上の人に話を持って行くのは、下の人たちのやる気を削いでしまいます。下の人の顔を立てる必要があるのです。

実際、最後に書面を書くのは、下の課長や課長補佐クラスの人たちですから、その人たちの機嫌を損ねてはいけないんです。その人たちときちっとコミュニケーションしながら、その人たちに言っても上がどうしても動かないようなときは、上に直接いく。それでもどうしようもないときは、最終手段で政治家に話をしにいくのです。

でもそれは、正直、時間がかかりますし面倒なのです。だから官僚と付き合うということは、経済合理性があまりなくて面倒なことと感じることもあります。政治家との付き合いも同様です。それを踏まえたうえで本当にやりたいことを持っていかないといけません。

思いつきで「これやった方がいいですよ」と提案を持っていっても時間はかかりますし、言うことを聞いてくれない…みたいなことで終わってしまいます。やはり官僚には官僚の動き方があるので、その流れに乗せてあげないといけないのです。

もちろん、国民の声を聞くのは彼らの役目ですから、話を持っていけば聞いてはくれますし、「なるほど。素晴らしいですね!」とは言ってくれます。しかし、流れを理解して動かないと、全然動いてくれない、ないなんてことにもなってしまいます。

政治家や官僚の流れを理解して話をする


私は仕事柄、たくさんの官僚の人たちとお付き合いしていますが、基本的には彼らも「国のためにやろう」という考えが根っこにあります。それは政治家も一緒です。本当に国のためにという想いが根っこにはあるのです。そうしないと、特に最近の政治家は費用対効果が合わないからなのかもしれませんが。

たとえば、政治家が裏で女を作ったり金儲けをしたりしたとしても、今はネットですぐにばれます。清廉潔白に、しかもすごい大変なことを成し遂げているのに、政治権限が問題にされるなど政治家はどんどん割に合わなくなっています。

そうすると優秀な人材が政治家にならなくなります。

特に優秀なビジネスマンだと、経済合理性のもとに儲けていた人たちですから、政の世界に入っても面倒すぎて、続かないのです。そうなると実質的な結果を残せる政治家にはなれません。政治家は年功がモノを言う世界です。政治家になってしかも実質的な成果を出すには、10年ぐらいはかかるんです。

よくベンチャー信仰の官僚や内閣とかがあって「政府はこんなに応援しています」といっても、2年ほどで変わってしまうこともあります。政治家に話を持っていくときは、その間に結果を出せるようなお願いを持っていかなければなりません。

政治家も、そういう役職にあるときは聞いてくれますが、そうではなくなったら全然聞いてくれません。選挙になれば忙しいですし、1~6月までの国会開催期間も忙しい。そういう彼らの流れをある程度理解したうえで、しかも面倒くさい世界だとわかったうえでいかないといけない。何も考えずにやって弾かれて、政はダメだ、官はダメだ、というのは違います。そういう人を見ると、何もわかっていないな、若いな、と思ってしまいます。

政や官の世界は、そういうちょっと特殊な世界なので、彼らと話をするうえでは、そういうところとのコミュニケーションに長けた人と一緒に話を持っていくのがすごく大事です。そんな力は一朝一夕につきませんから。


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