座りっぱなしにさせない「スマートデスク」


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 わずか30分座りっぱなしというだけで、新陳代謝が90%も低下するという驚くべき結果がありますが、一度座って作業や仕事を開始してしまうと、なかなか立ち上がる機会に恵まれないものです。しかし座りっぱなしだと身体に悪い……そういう悩みを解決してくれる画期的なデスクが誕生しました。

 この「スマートデスク」は、あなたの動きを観察し、あなたのカロリー消費を追跡し、さらには1日中適当な間隔を空けて、集中力を切らさないように、あなたに立ち上がる合図を送ってくれます

スマートデスクの種類と機能


 3年以上にわたって私は様々なスマートデスクを検証してきました。100ドル以下で入手できる、組み立て式の最も安価なものから、4000ドル以上もする洗練された高級感のある、まるで日本の禅を経験させるようなデスクまで様々です。高性能のスクリーンを搭載したものや、手の動きに対応するもの、さらにはトレッドミル(足で踏んで操作する装置)を搭載したものまであります(私はこれにはどうも慣れることができませんでしたが、詳しくは後述します)。

 スマートデスクを購入する理由は、多くのアメリカ人はほとんど座りっぱなしで生活をしているからです1日に3時間以上座り続けていると、定期的に運動をしていたとしても、寿命が2年縮まるのです。

 唯一の解決策は、ずっと座り続けずに何度かは立ち上がることです。そしてそこで登場するのが、スマートデスクです。でも焦らずに、賢く買いましょう。従来のスマートデスクを買った人のおそよ70%は、2週間ほどでその機能に慣れてきて目新しさがなくなって、結局座った姿勢のまま動こうとしなくなるということが、産業研究によって明らかにされています。私の場合も、やはりデスクが自動的に立ち上がらせてくれる機能を持っている方が、ずいぶん有効に活用できていると感じています(手動タイプは私には合いませんでした)。


スマートデスクを一日使用するだけでマラソン一回分と同じカロリー消費


 最も素晴らしい経験をさせてくれたスマートデスクは、最も高価でもありました。iPod制作のチームの一員だったアップルの元エンジニア、JP Labrosse氏が開発した「Stir Kinetic Desk F1」(4,190ドル)と「Stir M1」(2,990ドル)です。アップルとの血のつながりを感じさせるデスクです。5インチ(約13センチ)のタッチスクリーンが表面に備え付けられており、WifiやBluetoothの接続環境があり、デスクの裏側には熱を感じ取るセンサーが搭載されていて、あなたの活動を追跡します。

 1日「Stir M1」を試してみたところ、タッチスクリーンに、立ち上がっていた時間は5時間半、座っていた時間は3時間半、カロリーの消費量は359キロカロリーと表示されました。半分の時間(4時間半)は立ち上がることを目標にしていましたが、それを超えて十分に立ち上がることができました。このカロリー消費量で1週間続ければ、マラソンを走るときのカロリー消費量に相当するでしょう。

 設定した通りに従って、1時間に数回、デスクの高さが数インチほど上下に動きます。Stirはこれを「ささやく呼吸」と呼んでいます。まるで呼吸をするように自然に、集中力を切らさないように、姿勢を変えるよう促してくれるからでしょう。

 イギリス製の「TableAir」(2300ドル)やKickstarter社による「Autonomous Desk Smart Model」(699ドルから)もまた高性能なスマートデスクです。「TableAir」の前で立って、ボタンを押して腕をぐっと伸ばすと、デスクが自動的に手の高さまで上昇します。「Autonomous Desk」は7月から発送が始まりますが、これはアップルの「Siri」のような音声認識補助機能が搭載されていて、ネストやフィリップスなどの他のデバイスとの接続もでき、温度設定を変えたり、電気を消したりすることもできます。


低予算なら木製の手動スマートデスク


 
 予算重視の選択をしたいなら、持ち運び可能で、どんなデスクでもスタンディングデスクに変えることができる木製の道具「StandStand」(69ドル)が良いかもしれません。木の枠組みは折り畳み式になっていて、ブリーフケースくらいの大きさで持ち運べて、組み立ててデスクに置いて、立っている状態でちょうどいい高さに調整できます。似たような製品の、「StorkStand」(199ドル)はオフィスのイスにくっつけて使用します。持ち運びの製品はお手頃ですが、調節が少し難しいです。しかし、その良さが見逃されがちでもあります。

 普通のデスクを、スマートデスクに変える製品を提案する企業もあります。デスクに置いて使うタイプの製品には、「iSkelter LIFT」(298ドルから)やVaridesk社による製品(275ドルから)、「Ergotron」(250ドル前後から)などがあり、ずっとデスクに置いておき、手動で高さを調節します。

 「Lift」にはカップ置きがあり、「Ergotron」には機械の腕のようなものがついていて、仕事中に小物を引っかけたりすることができます。見た目よりも機能が重視されていて、デスクの高さを手動で調節する必要があるのはやはり難点ではあります。しかし、高い製品には手が出ないという方や、使うデスクを自由に決められないオフィスで働く方にとっては、やはりこれらの製品が最適でしょう。

 動力が備わっているスマートデスクは、手動のデスクと比べてかなり高価というわけではありません。モーターの音や重さはモデルによって様々ですが、どれにもそれぞれの魅力があります。IKEA社による「Bekant Sit/Stand desk」(489ドル)は余計なものがついていないシンプルな製品で、調整ボタンが2つついています。ただし、組み立て前の状態と組み立ての説明書を一目見て、背筋がゾッとするかもしれません。私は2回組み立てに失敗しましたが、組み立てがうまくいくと、シッティングデスクからスタンディングデスクへと数秒で変化します。

 あと数百ドル追加して出せるなら、「GeekDesk」(749ドルから)、「NextDesk」(879ドルから)、111製品ある「UpDesk Power Series」のうちの一つ(949ドルから)などがあります。これらの電子スマートデスクには様々な機能が搭載されていて、「NextDesk」には高さ調節を記憶する機能が、「UpDesk」には消せるホワイトボードの機能がついていたりします(これは私のお気に入りです)。これらの安過ぎず、高過ぎないの製品の欠点をあげるとすれば、ユーザーが上下のボタンを押して操作をしなければならないことで、毎日、あるいは毎週やっていると少し面倒になるでしょう。

 3か月間、私は「LifeSpan TR1200-DT7」(1999ドル)というトレッドミルタイプのデスクを試しました。好きになりたい気持ちがあったのですが、好きにはなれませんでした。自宅のオフィスに非常に多くスペースをとってしまう上に、仕事に集中するのにあまりにも十分すぎるほどゆっくり動くので、それにしばらく時間がかかるのです。私は1時間に3マイル(約4.8メートル)進むペースで歩いたような気分で、乗り物酔いしてしまいました。トレッドミルを踏むたびに、まるでボートに一日中乗っているような気分の悪さに襲われてしまったのです。

 私はトレッドミルタイプのデスクより、シットスタンドタイプのデスクのほうが好きですが、デスクの前で「座っていた」人を、一夜にしてデスクの前で「立つ」人に変えることはできないということを知りました。つまり、スマートデスクに初めて変えた初心者の場合、逆に立っている時間を何時間もとったりしてしまいがちなのです。そしてそれをやりすぎると私のようにその日の終わりになって、イスに座り込んで、足や緊張しきった背中、関節の痛みに悩まされる場合があるのです。専門家は、初めてスマートデスクを使う人は、1時間に5分から20分程度だけ立ち上がる時間をとるよう勧めています。

 結局、スマートデスクの選び方は、他の大きな家具を選ぶ時とさほど変わりはなく、予算やスペースを考慮して選ぶのです。しかし、どんな家具にせよ、それはあなたの人生のために用意するものであり、スマートデスクが一日中座っているあなたの人生を少し長くするかもしれないということは頭に入れておくべきなのです。


出典:Smart Desks to Keep You Moving
http://well.blogs.nytimes.com/2015/06/02/smart-desks-to-keep-you-moving/?ref=health