今日は弊社が標榜するフラットな組織における勘違いについて。
ちょっと社内向けっぽくなってしまいそうだが、社外の人には少しお付き合い願いたい。

たびたびこのブログでも登場しているが、弊社ではホラクラシー型組織と呼ばれるフラットで出世のない組織運営手法に挑戦している。

最近では2015年卒の新人も6人ほど加わり、社内も活気づいているものの、フラットな組織や自由な組織に関して、少しずつ認識のずれ、みたいなものが生まれているような懸念を感じている。


フラットな組織というのは、その名前通り社内に上下関係が存在しないということ。
つまるところ上司・部下の関係性がほとんど存在しないわけで、指揮命令関係がない。
自分で考え自分で動く、もしくは仲間と相談し、情報共有し、アドバイスしあったり、先輩に教えてもらったりしながら、顧客価値の最大化に向けて試行錯誤していくことが求められる。

ちなみにフラットな組織というのは、サークルのように和気あいあいとしていて、出世競争もなく、誰もが楽しくやりたいことをやれる、、、、、そんな組織であるはずはない。


フラットな組織を創ろうと思ったきっかけはプロスポーツチームのような組織こそが、チームとして最もシンプルだし自然だと思ったから。

プロサッカーチームに例えるなら、若くても年配でも、実力がなくても、体力がなくても、全メンバー平等に試合に出してあげよう、、、、なんていうチームは存在しないのは言うまでもない。

ビジネスの世界でも同じこと。

フラットというのはある側面から見れば相当厳しい。
先輩であっても、ベテランであっても、実力と意欲があり、信頼されている人だけが試合に出れるし、活躍できる。そういう人が自然とリーダーシップをとり、どんどん評価されていくし、経験を積んでいくのでどんどん力もついていく。

驚くほどの自由がある背景には、個々人が驚くほどの責任を背負っているということ。
その責任や義務を果たさない人が増えてしまったら、自由でフラットな組織なんて成り立つわけはない。

もちろんチャンスは誰にでも平等に存在するし、結果はその本人次第。
そこには運やツキも影響するかもしれない。
それでも基本は地道な努力や本人の強い意志や目的意識、そして意欲があることが大前提だと思う。


私がすごく気付きを得たエピソードを一つ紹介したい。

少し前の話だが、サッカー日本代表のゴールキーパーの川島の話。
今でこそ大活躍する有名選手だが、当時は安定した正ゴールキーパー川口の影に隠れてほとんど活躍の機会がないまま、日本代表のベンチを温める補欠選手だった。

しかしあるとき、偶然にも川口が怪我をして出場機会を得た川島はそこで大活躍といえるほどのパフォーマンスを見せ、川口が完治した後も正ゴールキーパーの座を明け渡すことはなかった。

これはそんなに簡単なことではない。このたった一度のチャンスを本当に活かしたわけで、そのためには、今まで腐ることなく、相当な努力とイメージトレーニングを積んで、いつでも出て活躍できる準備をしてきたに違いない。おそらくそれも完璧なレベルで。

しかもそれだけではなかった。その活躍を見た海外プロチームからスカウトがきて、彼はあっという間に海外で正ゴールキーパーとしてプレイすることになったわけで、まさにテレビやニュース越しに見る我々からすれば、典型的なシンデレラ・ボーイだった。

しかしそれは完全に勘違いだと気付かされた。

それに気づいたのは彼が4〜5ヶ国語の言語を使いこなせるという話を聞いたときだった。
ヨーロッパに行って、いきなり言語ができる日本人選手なんてほとんどいない。
過去にそんな芸当ができたのは中田くらいではないだろうか。
川島の書いた本を読んで知ったのだが、彼はプロになった当初から、将来ヨーロッパで正ゴールキーパーとしてプレイすることを目標に掲げ、そこに標準を絞って使うであろう可能性のある言語を複数勉強してきたという。驚くべき執念というか意志の強さというか。。。。

それを知って、決して運の良いシンデレラ・ボーイなんかではなく、何としてもそこにたどりつこうと努力し続けてきた人だからこその結果なのだと、自分の理解を改めた。



話は戻るが、仕事を楽しむためにはやはり社内・外に大きな価値を提供し、その結果として期待されたり、信頼されたり、評価されたり、頼られたりするようになる必要があると思っている。

そのためには、一定の基礎的なスキルがなければならないし、高いレベルで実現するにはやはり人数倍の努力は求められるのだと思う。

フラットな組織だと、まるで希望すれば誰でも試合に出させてもらえるというような錯覚を持ちかねない。逆である。ピラミッド型組織であれば15年我慢して下積みしてくれば、多くの人がいつか試合に出れるかもしれないが、フラットな組織であり実力主義である組織においては、自分が本当に努力して実力を磨き、社内の信頼と評価を勝ち取らない限りは試合には出られない。

実はすごい厳しい環境でもある。

でも私はそれこそ優秀な人材が求める環境であり、そういう人たちが最も活き活きと働くことができる条件だと思っている。


数ある組織の中からアトラエという小さく無名のベンチャー企業をあえて選んで就職してきた社員達には、改めてアトラエが本質的に目指している理想の組織像を深く理解してもらい、意識高く取り組んでもらいたい。