2003年、P被告(49)=女性=とOさん(死亡当時59歳)は、高校生の子どもを持つ保護者として知り合った。その後、特に親しく付き合うことはなかったが、11年初めにOさんの妻が死亡した後、偶然再会し内縁関係に発展した。ところが、P被告が人妻であることを知ったOさんの家族は交際に反対し、Oさんは結局、P被告と別れる決心をした。13年11月4日、OさんはP被告に買い与えたマンションを取り戻す問題を話し合うため、P被告と会って、一緒に自宅に向かった。Oさんは自宅で爆弾酒(ウイスキーや焼酎のビール割り)を飲んで酔った後、農薬を飲み、病院に搬送されたが、5日後に農薬中毒のため死亡した。検察はP被告が、酒に酔ったOさんに農薬を飲ませたものとみて、P被告を殺人罪で起訴した。
P被告は法廷で「酒を飲んだ後寝室にいたが、声が聞こえたためトイレに行ったところ、Oさんが農薬を飲んで倒れていた。Oさんが自殺するため農薬を飲んだ」と主張した。一・二審はこの主張を受け入れず、Oさんが病院で死亡する前に「農薬を飲んだ状況は覚えていない」としながらも「私が間違っていたにしても、Pさんを許せない」と話したことを根拠に、P被告に懲役18年の判決を下した。農薬が入っていたペットボトルからP被告の指紋が検出されたことも、有罪と判断する根拠になった。
ところが、大法院(日本の最高裁判所に相当)第2部(チョ・ヒデ裁判長)は27日「Oさんが、記憶が定かでない中でも『Pさんがこっそり農薬を飲ませたかもしれない』と話したのは正常な反応といえるが、死亡する前の数回の証言でも、P被告を犯人と名指ししたことは一度もなかった。『Pさんを許せない』という趣旨の発言も、結果的にこのような状況になった責任がP被告にあるということを指摘しようとした可能性がある」として、二審判決を破棄し、無罪とするよう求め審理を大田高裁に差し戻した。