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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:CDI治療後患者への非毒素産生CD株投与

CDI治療後患者への非毒素産生CD株投与
Administration of spores of nontoxigenic Clostridium difficile Strain M3 for prevention of recurrent C difficile infection*1

JAMA. 2015;313(17):1719-1727. doi:10.1001/jama.2015.3725

【背景】
 Clostridium difficileは米国の病院における医療関連感染の最も一般的な原因で、再発が25-30%に起こる。

【目的】
 CDIの再発予防のために、非毒素産生CD株 M3(NTCD-M3 VP20621)の安全性・糞便コロニー形成・再発率・最適な投与スケジュールを決定すること。

【デザイン・セッティング・患者】
 Phase2、ランダム化二重盲検プラセボ対照の用量調整研究が2011年6月から2013年6月まで実施され、18歳以上の正常にメトロニダゾールもしくは経口バンコマイシンで治療終了した173人のCDI患者(初発および再発)が組み入れられた。米国・カナダ・欧州の44施設が対象。

【介入】
 用量によってプラセボ 14日(n=44)、②M3 10^4 7日投与(n=43)、③M3 10^7 7日投与(n=44)、④M3 10^7 14日投与(n=42)の4群介入に割り付け。

【メインアウトカム・測定方法】
 プライマリアウトカムは、NTCD-M3の治療7日以内の安全性と耐用性。探索的セカンダリーアウトカムは、治療終了後から6週後までのNTCD-M3の糞便内コロニー形成率やCDI再発率とした。

【結果】
 168人で治療を開始し157人が治療を完遂した。1つ以上の有害事象が発生したのはプラセボ86%、NTCD-M3 78%だった。下痢がNTCD-M3 46%、プラセボ 60%、腹痛がNTCD-M3 17%、プラセボ 33%だった。重篤な有害事象プラセボで7%、NTCD-M3で3%だった。頭痛がNTCD-M3で10%、プラセボで2%。

 糞便コロニー形成率はNTCD-M3群で69%で達成され、10^7投与で71%、10^4投与で63%だった。CDI再発率はプラセボで13/43(30%)、NTCD-M3で14/125(11%)でOR 0.28(95%CI:0.11-0.69)。最も再発が少なかったのは10^7を7日投与群で再発率2/43(5%)で、プラセボと比較するとOR 0.1(0.0-0.6)。

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(本文より引用)
 サブ解析でコロニー形成を達成した群と非達成群で比較すると、達成群 2/86(2%)、非達成群 12/39(31%)で、OR 0.01(0.00-0.05)だった。

【結論】
 CDI患者でメトロニダゾール・バンコマイシン治療後にNTCD-M3経口投与を行う事は、耐用性と安全性は良好だった。非毒素産生CDのM3糞便内コロニー形成は著明にCDI再発を減らす

【批判的吟味】
・RCTでプラセボ対象です。今回は、Phase2研究ではありますし、今回は安全性・忍容性の問題を検討した研究ではありますが、圧倒的な予防効果です。
・ITT解析は行われておりますが、modified ITT解析です。
・患者群を詳細に見ると、平均60歳、初回CDI 80%、外来CDI 70%とかなり外来症例が多い事に注意が必要です。

【個人的な意見】
 糞便移植研究はついにここまで進歩したということでしょうか。もともとトキシンを作らないCDがいるとCDIが減るという臨床データがあり、今回NTCD-M3という非毒素産生のCD株の投与効果を検証した形です。今後はプライマリアウトカムを治療効果としたうえで、標準的な予防薬剤との比較研究も期待されます。

✓ CDI罹患治療後の非毒素産生CD株の経口投与は安全で忍容性があり、再発予防効果が強く期待できる