【コラム】陰謀説をたき付ける人たち

 一部の政治家や教授も、政府の発表に耳をふさいだ。4・29の再補選に出馬した有力候補は「国民が願うのは沈没の原因と真相究明だ。セウォル号が多くのことを語ってくれるだろう」と言葉に力を込めた。ある野党議員は「多くの政府部処(日本の省庁に当たる)が調査したが、相変わらず事故の真相が解明されていない」と主張した。ある大学の教授会は「セウォル号の沈没で貴い生命が犠牲になってから1年がたったが、事故の原因はいまだに明らかにされていない」という声明を発表した。ある大学教授はメディアへの寄稿文で「事故の原因を明らかにするためにも、船体をそのままの状態で引き揚げなければならない」と主張した。

 2010年に発生した海軍哨戒艦「天安」の撃沈事件の時も、同じような形で陰謀説が浮上した。爆沈から20日後に引き揚げられた船体の艦尾に魚雷攻撃の痕跡を確認した後も、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)には今も「潜水艦衝突説」「米国による撃沈説」などが出回っている。野党代表が哨戒艦「天安」の爆沈が北朝鮮の仕業だということを認めるのに約5年もかかった。46勇士の遺族(「天安」の爆沈で身内を失った遺族の会)は「野党の政治家と教授たちが先頭に立って陰謀説をあおったため気に入らなかったが、事件が忘れられる頃になると謝罪もせずにひっそりと爆沈原因を認めた」と話す。

 専門家たちは「失踪者の捜索ならまだしも沈没原因の調査のためにセウォル号を引き揚げるというのはおかしい」と言い切る。ある海洋専門家は、陰謀説に揺れる遺族と面会して沈没原因を説明する旨を遺族に伝えたが、回答がなかったという。同氏は「遺族の周りにいる、政治的意図で面会を邪魔する人々のせいで連絡が来なかったのではないか」と言う。セウォル号は早ければ来年下半期にも姿を現す。さまざまな陰謀説をまくし立てた人々は、政府の調査結果を覆す証拠が出てこなかった時、今度は一体どんな言い訳を並べ立てるのか今から注目される。

金康漢(キム・ガンハン)社会部記者
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