発達障害の克服には、やはり知識が必要だった
【こんなことが書いてあります】
・「アスペルガーとして楽しく生きる」の著者、発達障害カウンセラーの吉濱ツトムさんの座談会に研究所長うえすとが参加した
・多数の論文を読みこんだことによる、発達障害とその症状発生メカニズムに対する圧倒的な知識量で、当事者やその家族からの質問に対して明快に回答する姿は圧巻
・その著書の内容はこのブログ記事で紹介した改善プロセスと重なる部分も。大人の発達障害改善への確かなプロセス構築の可能性を強く感じた。
大人の発達障害座談会へ参加した経緯
わたしはなぜか、新進気鋭で気力充実、複数の著書もある某社の若手社長とちょっとした(残念ながらまだ「ちょっとした」なのですが)お付き合いをさせていただいています。
先日その社長に、『発達障害の「生き方」研究所』のサイトを見てもらう機会がありました。
するとすぐさま、
「友人に吉濱ツトムさんという発達障害カウンセラーをしていて、今月著書を出した方がいるから、紹介できますよ」
という情報を返してくれました。
信頼できて顔の広い方の紹介は、本当にありがたいです。
こういった経緯があって、「この人が紹介してくれるからには、必ず何かいい流れがありそうだ!」というポジティブ思考を武器にして。
土日は家族の時間と決めている自分と、本当は土日でリフレッシュさせてあげたい妻にゴメンナサイをしながら、受付開始から4日で締め切りになった座談会の人となることができました。
ちなみに、発達障害をテーマにした少人数の集まりに出るのはこれが初めてです。
発達障害の複雑な状況・症状・苦悩へ適切な回答が
会場は、オートロックの完備されたマンションのスカイラウンジにありました。
真新しく大きめのドアを開けると、周囲に同じような高さの建物が無いからか
晴天で気持ちのいい眺望が正面に広がります。
そして主催者関係の方含めてお子さん連れの方も多くいたので、子どもの相手をしてくれる方が遊んでいる様子が目に入りました。
広いラウンジですね。
参加費の500円を支払ってアンケート用紙と進行予定を受け取ります。
時間は休憩時間、終了後の雑談時間を含む13:30~17:30で、人数は10名くらいでした。
お子さんなどご家族の発達障害相談の方もいて、半数以上は女性。
一般に発達障害は男性のほうが症状が強く出ると言われていますが、意外です。
(ちなみに当サイトへアクセスしてくださる方も、女性の方が多いです。)
わたしは開始時間ギリギリに着いたんですが、あせらされるような雰囲気もなく、空いている席に着席します。
そしてしばらくすると吉濱さんが登場。(もともと部屋にはいましたが)
最初に吉濱さんから簡単な前置きとして、なぜ座談会形式にしたか、という理由の説明があり、さらにこのあとセミナーに誘われるような展開にもならないことをユーモアも交えて力説!
さすがにキャリア豊富、上手いです(笑)
そのあとすぐに参加者からの質問タイムになりました。
内容はもちろん詳しく書くわけにいかないのですが、
・なぜローカーボの食事が発達障害に良いのか
・どうやって発達障害の社会認知を広げるか
・発達障害のある親子関係の解決方法
・アスペルガーは仕事をどうするべきか などなど・・・
発達障害に関連する苦しい状況におかれている方からのさまざまな質問に対して、本当に幅広く正しい科学的知識とカウンセリング経験をベースにした明快な回答をする吉濱さん。
わたしも知識量・読書量では相当だと自負していますが、それでも圧巻でした。
わたしはなぜ吉濱さんがここまでの知識があるのか、その勉強方法について質問させていただくと。
なんと、一般書は誤りが多いこともあるので、気になった分野は研究論文を多読されているそうです。
発達障害は症状がまさにスペクトラム(障害のある・無しではなく、斜面のように症状が段階的なこと)なこともあり、個々の状況それぞれについて対処法を変えていく必要があります。
特に当事者が積極的に発達障害の改善を望んでいない場合は、なおさら難しいと思うのですが。
しかしそれも踏まえて、わたしから見ても思わずうなってしまうような多角的視点からの適切な回答をされていました。
本当に「プロ」です。
そして最後にはお互いに近い悩みを持つ方々が情報交換したり、励まし合う様子がありました。
悩みを持つ当事者にとって、つらさを理解してくれる相手がいることは本当に救われます。
座談会ならではの意味が、ここにありました。
アスペルガーにとって、希望の見える1冊
そして、さらにわたしがこのブログを見てくださるアスペルガーの方に絶対におすすめしたいのが、今年の春に出たばかりの吉濱ツトムさんの初著書「アスペルガーとして楽しく生きる~発達障害はよくなります!」です。
この本をおススメするのは、もちろん特に座談会に出て親しみがあるからとか、 頼まれたからではなく。
症状を改善させた人間から見て、自分が改善した理由と思っていることの多くがまさに書かれているからです。
(自分が認めていない本を「おススメです!」と書いて、ブログの内容についてまで信頼性をなくしてしまったら元も子もありません・・・)
実際、その多くはこのブログですでに記事にしていますので比較してみましょう。
本書は全5章の構成で、1・2章は吉濱さんのこれまでの人生と症状について。
わたしより強烈な症状と経緯をお持ちなのに、今日話していてかなり普通の方だったので驚きです。
3章では、吉濱さんが実践された具体的なアスペルガー改善法が紹介されています。
このあたりから、内容こそもちろん吉濱さんの著書のほうが精緻に書かれていますが、このブログでもご紹介している「大人の生き方3.0」や大人の発達障害改善法と重なる部分が出てきます。
以下、3章の内容とこのブログの似ている記事を、本書の項目に合わせて説明してみましょう。
1.生理学に基づいた健康法
栄養・サプリメントの採り方、ローカーボ療法について。
特にローカーボ療法は、多動のADHDが抱える症状に即効性があるそうです。
なおわたしは症状がそこまでひどくなかったことからここまでの食事療法をしなくてもなんとか改善できましたが、この記事で栄養について脳疲労という観点から意識していました。
2.環境を変えることで行動を変える
吉濱さんは、犯罪心理学の観点から「環境圧力」という考え方で自身の行動を変えています。
たとえば、まず、作業の効率化のために、事務仕事を行うときには携帯電話を机の上に置きません。テレビの室内アンテナコードを抜き、無線LANやWi-Fiは切っておきます。
「仕事に集中する」という目的のために具体的にはこの引用のような環境圧力を作っている、という例ですが、著書ではその本質的な、環境圧力が人間の行動の多くを決定する重要な要因になっていることを分かりやすく説明しています。
一方、当ブログも「人間は環境に適応する動物」という発想を基本に置きながら、環境認識を変えていくことで出せる能力も変わっていくことを説明しました。
その主旨こそ微妙に違いますが、「環境」に改善のカギを見たところに違いはありません。
3.行動を変えれば心も変わる
これは再三のように書いていますし、吉濱さんも基本的に同じ発想で著書に説明をしています。
やはり行動が、心をつくります。
ADHD・アスペルガーの人生を楽しくする仕事が見つかる本ベスト5を紹介する
ちなみに「行動のきっかけとしての読書会」、4/30(木)開催です。引き続き参加者募集中です。
4.ものごとを正しく受け止める
吉濱さんは認知療法についてもご自身で取り組み、自分の問題になっている認知を調べ上げました。
そして実際に改善例の報告されている論文を集め、そこからさらに自分でできる方法を絞り込み実行したそうです。
認知の問題について、このブログではまず幼少期の環境を中心にインプットされる「潜在意識」や「信念」、反応的無意識の問題として扱いました。
大人の発達障害でも「やればできる」を信じるために必要な1つの知識
どちらもアプローチの方向性としてはほとんど同じだと思っています。
わたしはここで、その「潜在意識」や「信念」に対抗するための力として「習慣」づくりの重要性をあげています(まだ具体的な記事は書けていませんが)が、吉濱さんも別に項目を設けてまで習慣づくりの説明をされています。
わたしは読書の習慣と行動の習慣をつくり、発達障害の苦しみを乗り越えました。
習慣づくりも、やはり重要ですね。
5.体を鍛える(肉体強化)
吉濱さんは数多くの論文をあたり、シンプルに脳や感情面に良い効果のある「運動」も重視しています。
積極的になりたいと思ったら、とりあえず二日に一回、三十分間ランニングすればいい。それで効果があるわけですから、自分のトラウマを探し出して見つめることに比べたら、はるかに分かりやすいのです。
本書には、具体的にどう運動を進めていくかが改善例と共に示されています。
また今日の座談会でも、運動が苦手でそもそも動きに変なクセがついているアスペルガーはどうすべきか、などについてまで説明されていて、吉濱さんが主に仕事にされている個人セッションの有効性を垣間見ました。
このブログでは個別の記事にはしていませんが、この記事では運動の必要性もさらっと書いています。
これは元々わたしが運動を不得手にせず、最近でもたびたびフルマラソンを完走する程度の基礎が大学までの部活動などでできていたため、フォーカスしていなかったからだと思います。
ですが実際に離人症などの症状が強かったとき、ランニングをするとその症状が楽になった経験もあります。
運動は、やはり不可欠だったんですね。
6.具体的に生活の中に取り入れる(習慣化)
吉濱さんは、上記の5項目をすべて習慣として生活に取り入れる努力をし続け、実際に習慣化に成功した結果、劇的に症状を改善させています。
また日常的にこなす活動を「習慣」(いつも~する)と「ルール化」(ある一定の条件ならば~する)に分け、マニュアル化する工夫もしたそうです。
このブログでも「生き方3.0」の要素として「習慣」を採用していて、前述のように記事の中で習慣化の重要性は指摘してきたものの、まだその具体的な習得方法を提示できていません。
現在その本質と習得方法について集中的に分析をしているので、なるべく早く公開したいと思っています。
劇的改善をした2人が同じような分析した確かなプロセス
吉濱さんはカウンセリングをスタートさせた26歳のときから、たくさんの発達障害当事者の方の症状を劇的に改善されてきています。
そしていま、その知識・カウンセリングキャリアは比べものになりませんが、同じように劇的改善を経験したわたしがこのブログで、その改善プロセスとして同じようなことを書いている。
これは単なる偶然とは言えません。
わたしも吉濱さんの「アスペルガーとして楽しく生きる」を読んでとても驚きました。
もちろんこれだけが唯一の発達障害(アスペルガー・ADHD)改善のプロセスだ、と言うつもりはありませんが。
ただおそらく、改善のためのいちプロセスとして「マル」をもらえるものだということには自信を持っています。
発達障害に苦しんで、仕事に悩み、生き方に悩み、たいへんな毎日を送られている方に。
どうせ何をやってもおれは・わたしはダメだ。消えたい。死にたい。
そう思ったそのときこそ。
上記プロセスで人生をリスタートさせる絶好のタイミングです。
わたしも今日から少しずつローカーボを始めました。
わたしたちは、わたしたち次第で、変われます。
※吉濱さんの著書「アスペルガーとして楽しく生きる」のAmazonレビューにもたくさんの読後感想がありましたので参考にしてください。