首相はその能力や実績のあるなしに関係なく、何よりも憲法に基づき行政府を総括・指揮する立場にある。その首相がここ10日間、政争の真っただ中で疑惑と激しい非難にさらされ、満身創痍(そうい)となった状態で不名誉な辞任に追い込まれたのであるから、今の政府の雰囲気がどのようなものかは想像に難くない。とりわけ大統領が帰国するまでの今後1週間、韓国は安全保障面で不測の事態が発生しないよう祈るしかないような状況に置かれた。いずれにしてもこの期間は首相の職務を代行するチェ・ギョンファン経済副首相兼企画財政部長官を中心に、まさに非常事態という覚悟と認識を内閣全体が持ち、政策の実行に支障が出ないよう万全を期さねばならない。
今回のように大統領に次ぐ政府のナンバー2が、汚職や偽証の問題で辞任に追い込まれるという事態は、政府全体の道徳性、権威、名誉にも大きな傷を付けるものだ。大統領の側近たちの名前が「成完鍾メモ」に記載されていたことだけでも、大統領のリーダーシップはすでに大きな打撃を受けている。ただでさえ相次ぐ人事の失敗、旅客船「セウォル号」沈没事故、大統領周辺での権力争いなどの影響で大きく低下した大統領の支持率も、いったんは上昇の兆しを見せたかと思われたが、最近になって再び低下の傾向が鮮明になっている。
朴大統領と近いいわゆる「親朴」と呼ばれるグループに属さない議員が与党執行部を掌握し、今回大統領府に圧力を加えることで首相を退陣に追い込んだ結果、政府・与党・大統領府の三角関係の中心はこれまで以上に与党に傾きつつある。しかしこれは与党の求心力が高まったことを意味するのではなく、党内対立によって逆に遠心力の方がより大きくなる結果を招いているのではないか。また政府はこれまで今年を「ゴールデンタイム」と呼び、実績を残すチャンスと認識し政権運営にあらためて意欲を示してきたが、今回の問題によってこの重要な時期を無為に過ごすことにならないか心配だ。そのマイナスの影響は当然のことながら国全体と国民が負うことになるからだ。