原油(WTI)が綺麗なダブルボトムを形成しています。

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先高を暗示するチャートです。

この原油高は、ちゃんとファンダメンタルズに裏打ちされているのでしょうか?

その答えは「YES & NO」だと思います。

まず世界全体で見ると原油への需要は、実はそれほど落ち込んでいないのです。

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OECD全体で見た原油の在庫も異変を感じさせません。

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だから「世界が不景気だから原油の需要が減った」という主張は、まるっきり間違っています

むしろ中国などは最近の原油安を見て「それ行け!」と戦略備蓄を拡充しています。「どんどん持って来い!」というわけです。

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需要崩壊が原因じゃないのであれば、なにが原油価格急落の原因だったのでしょう?

それはシェールオイルの増産です。

アメリカでは需要(=安定的です)よりも遥かに供給が増えてしまいました。それで余った原油が石油タンクに貯蔵されたわけだけど、その増え方が半端じゃない。

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このデータを見たトレーダーが去年の夏頃からパニックして原油を売ったというわけ。

それでは今、状況はどうなっているのか? ということですが、原油価格が50ドル付近に来たことで採算ベースに乗らないシェールオイル油井が増えました。それらはどんどん休止されています。

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ただ業者は零細で、高コストで、どうでもいい油井から順番に放棄している関係で、最新鋭の、大規模で、ロー・コストな油井での生産はまだまだ生産効率が実は向上しているのです。その関係で、全米トータルで見ると油井数の減少にもかかわらず、生産高はぜんぜん落ちてないどころか逆につい先月くらいまでは増えていた……。

この不均衡が、いま一つのクライマックスに達しようとしています。それは全米中の石油タンクという石油タンクが、全部満タンになってしまい、行き場を失った原油が投げ売りされるリスクがあるということです。

そうなれば原油はドカ下げして34~35ドルくらいを見るということが考えられます。

もしこの危機的な局面をサバイバルできれば……シェールオイル・リグ休止による生産調整がようやく効いてきて、本格的な需給改善に向かう可能性もあります。

冒頭で書いたように、今回の原油安は、需要はカンケーないのです。そこが問題ではありません。いや、むしろこれから世界の景気は回復に向かうので、需要は増えると考えるのが自然です。

すると夏から秋にかけて原油価格が60~70ドルに向かうというシナリオも、逆に大いにありうるというわけ。