これまでの放送

2013年6月12日(水)

“青色光” 健康への影響は?

鈴木
「続いては、『ブルーライト』についてです。」

阿部
「取材した大阪放送局の野村アナウンサーです。
『ブルーライト』、最近よく耳にしますね。」

野村
「最近、ブルーライトをカットするという、メガネやフィルムを目にしたという方も多いかもしれません。
今、急速に普及しているスマートフォンや、パソコンの画面から出るブルーライトをカットするということをうたっている商品なんです。
ブルーライトといいますのは、パソコンやスマートフォンだけではなくて、通常使われている昼白色の蛍光灯や、LED電球の出す光などにも多く含まれているんです。」

鈴木
「ブルーライトというのは、見た目で青く見える光だけではないということなんですね?」

野村
「そうなんです。
私たちが通常目にしている光には、多かれ少なかれ分解してみると、ご覧のように様々な色の成分が含まれているんですね。
特にこの紫から青のあたり、このあたりをブルーライトと呼んでいるんです。
このブルーライトの成分を多く含んでいる光を、特に夜、浴びすぎますと、体に良くない影響が出る可能性があるということが、最近の研究で徐々に分かってきているんです。」

ブルーライト 健康への影響は

先週、日本で初めて「ブルーライト」についての国際シンポジウムが開かれました。
研究者や医師ら、およそ300人が参加。
健康への影響について、最新の研究が報告されました。

眼科医
「ブルーライトは目だけでなく、体全体に影響を与える。」

照明の研究者
「体に害を及ぼす可能性のあるブルーライトが周囲にあふれている。」

ブルーライトは、私たちの体にどのような影響を与えるのでしょうか。
九州大学の安河内朗(やすこうち・あきら)教授です。
ブルーライトが夜、長時間目に入ると、体の生活リズムをコントロールする体内時計が狂うと指摘します。



安河内教授が注目したのは、「メラトニン」というホルモンです。
体内時計が正常であれば、日中はあまり分泌されず、夜になると多く分泌されます。
安河内教授が行った実験です。
ブルーライトがほとんど当たらない薄暗い部屋、ブルーライトを少し含んだ照明の部屋、ブルーライトを多く含んだ照明の部屋で夜間過ごしてもらい、メラトニンの変化を測定しました。

ブルーライトがほとんど当たらない部屋ではメラトニンが多く分泌され、体内時計が機能していました。
しかしブルーライトを多く含む照明ほど、メラトニンの分泌は少なくなっていました。
夜、ブルーライトを浴びることで、体内時計が狂うことが分かったのです。



九州大学大学院 生理人類学 安河内朗主幹教授
「青い光は私たちの体のさまざまな機能を活性化させる。
夜浴びると、本来リラックスしてよい眠りにつく方向にいくべきなのに、その邪魔をする、興奮させるような作用がある。」


体内時計が狂うと、健康にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
京都大学の岡村均(おかむら・ひとし)教授は、体内時計と高血圧の関係について調べました。

岡村教授が行った実験です。
体内時計が狂ったマウスと、普通のマウスを用意。
塩分の多いエサを与えたところ、体内時計が狂ったマウスだけが高血圧になりました。


京都大学大学院 薬学 岡村均教授
「体のリズムはいろいろな機能、肝臓・腸・腎臓・心臓など、そういう機能に直接つながってくる。
リズムの異常が続くと、生活習慣病がいちばん可能性がある。」

ブルーライト ドイツの対策

健康に影響を及ぼす可能性があるブルーライト。
しかし、実際にどのくらいの量を浴びると病気になるのかは、まだわかっていません。
このため、日本をはじめ多くの国では、ブルーライトのリスクにどう対応するか、方針を決めていません。

そうした中、ブルーライトとの適切な向き合い方を示した国があります。
ドイツです。
今年(2013年)4月、照明器具の光の使い方を提示したガイドラインを発表しました。
ブルーライトは体を活性化させる作用があるため、午前中は適量を十分に浴び、夜間は減らすことが望ましいと指摘。
その上で、自宅や学校、介護施設などでどんなタイプの照明を使うべきか、細かく示しています。

ドイツ規格協会 ディーター・ラング委員長
「これまで光はものを見やすくするためだけのものだった。
しかしいまは健康への影響に注目すべきだと思う。」



ガイドラインを出したことで、ドイツではブルーライトに配慮した照明が広がり始めています。
ミュンヘン市内にある専門学校です。
一部の教室に、最新の照明システムを導入しました。


一見すると普通の照明ですが、色が自動的に変わります。
午後から夕方の変化を早送りしてみると、ブルーライトが徐々に弱まり、夜にはほとんど出さないようにしています。
体内時計を狂わさないようにするためです。

ドイツ規格協会 ディーター・ラング委員長
「こうした照明の価値は広く認められ、興味を持つメーカーが増えている。
ガイドラインができたことで、さらに普及していくと思う。」

ブルーライト 日本の対策は?

阿部
「ブルーライトの使い方について、ドイツには公式なガイドラインがあるのに、日本にはないんですね。」

野村
「その点について経済産業省や業界団体に確認をしたんですが、『どの程度のブルーライトを浴びれば健康に影響が出るのかはっきり分かっていない段階なので、推移を見守っている』としているんですね。

ただ専門家の中には、『万が一、後で影響が分かって手遅れになってはいけない、今のうちから対策をとるべきではないか』という人もいるんです。
また日本の大手電器メーカーの中にも、このブルーライトについて非常に関心を持っているメーカーもあるんですね。
たとえばこちらパナソニックの製品なんですが、ドイツのように自動的にブルーライトをコントロールする照明を作って、その効果を探る実験も始めているんです。」

鈴木
「でも今や、パソコンやスマートフォンが欠かせないという人もいますし、LED照明が省エネの面でいいということもありますよね。
今後どのように使っていったらいいんでしょうか?」

野村
「なくなることはありませんので、上手に付き合っていくことが大事だと思うんですけれども、例えば専門家はこんなことを提唱しているんですね。
特に大事なのは寝る前の2時間ほど、ここを大事にしてください。
スマートフォンなどの明るさは1/3程度にすると、だいぶブルーライトは減ります。
さらに、寝室などは暖かみのある電球色のような色を使うと効果的だということです。落としたり、寝室などには電球色のような暖かみのある照明にしておくと効果的だということです。」