MC++言語入門


 

 
ソースプログラム編




 とある町のとある田舎・・・つまりどこでもいい場所に、その男は住んでいた。
 ちっぽけなアパートにちっぽけな家具を置いて。ちっぽけに座っている。
 彼の名は佐藤由郎。23歳。さえない大きな顔でややぽっちゃり体型だ。一応難関な私立大を出ている。
 だが彼はニートだ。いや、ニートとは違うか・・・
「はあ〜〜。今日もいい天気だね〜〜・・・お茶が美味しいな〜〜・・・・・・」
 毎日をただ呆然と過ごしている。
 今はこうなってしまった彼だが・・・少し前までは変わった趣味を持っていた。
 そしてその趣味を失ったとき、こうなってしまったのだ・・・



 その趣味のきっかけは大学を卒業する頃・・・

 1月・・・
 まだ少し雪の残る道路。
 生徒達はマフラーやコートなど、防寒対策をばっちりしてやってくる。
 由郎はたいした厚着もせず、大学内へと入った。



 昼過ぎの大学構内・・・
 由郎は次の講義の教室に座っていた。
「おーい由郎!お前にいいもんやるよ」
 由郎は声をかけられた方を振り向く。
 声をかけた男が由郎の後ろに座った。
「ああ・・・君は・・・」
 答えようとした由郎の言葉を男は遮る。
「ちょっと頼みたい事があるんだがいいか?」
 由郎はあまりこの男にいい印象はもっていない。
 同じ学科では彼は有名だ。堂々と二股をかけている。

 講義の始まりを告げる音が流れた。
「ねえ。もう授業時間だから。後にしてくれないかな」
 由郎は後ろを振り向かずに話しかける。
「大丈夫大丈夫!!あの先生いつも来るの遅いから」
 彼は由郎の肩を掴んで振り向かせる。
 由郎は仕方なく後ろを向いた。
「で、もてもての君が一体何?」


「ちょっと待ってな・・・」
 男は鞄から何かを探っている。
 これこれ、と呟いてCDケースを取り出した。
 蛍光灯でキラキラと光が反射する。

「このソフトのさ、モニターになって欲しいんだ。それで感想を聞かせて欲しい」
 男はそういってそのケースを由郎に差し出す。
 由郎が受け取ったCDには、「MC++言語入門編」と書いてあった。
「なんだこれ・・・なんかのゲームか?」
(か、限りなくどうでも良いんだけど・・・)

「まあ、ゲームのような・・・プログラミングのような・・・とりあえずC言語のお友達だと思ってくれ・・・ていいんじゃないか?」
 由郎はケースを開けてCDを見る。
(・・・ていい?なんだそりゃ・・・)
 いかにも手作りですっと言う様に、大手メーカーのロゴが入っている。
 これは恐らく数枚パックで格安のものだ。


「へえ〜。これお前が作ったのか?」
 由郎は男の顔は見ずに質問する。
「いや、俺の知り合いにプログラムに詳しい女性が居てな?そいつが面白半分で作ったんだ。どんな内容かは俺も聞いていないんだが・・・世の男性を喜ばせるソフトらしい。うまくいけばソフトとして金を取って販売しようかと思ってな」
(し、知らないのかよ・・・それを俺で試すのかぁ?)
 由郎の中でまた1つ、男への評価が下がった。


 由郎はCDをまじまじとみつめ、ようやく当たり前の質問をした。
「どうしてこれを俺に?お前と話すのは初めてのはずだが?」
 男はへらへらとした表情で由郎を見る。
「お前結構有名なんだぜ?この学科にいてプログラムの猛勉強してる変わり者ってな」
「ああ、それで・・・実はこの学科に入ったは良いんだけど・・・プログラムに興味持っちゃって・・・だけどやっぱり独学では難しいよ・・・」
「転学すればいいだろう?」
「希望はしたんだけど結局認められなかったよ」
 落ち込む由郎を見ても男はへらへらと笑ったままだ。
「そうか・・・だが説明書をつけたらしいから分かるだろう。じゃあ宜しく〜」

 そういって男は去って行った。
「あ、ちょっと・・・まだ疑問は沢山あるのに・・・まあいいか。でもこのソフト・・・ウィルスソフトだったりしないだろうな?あいつのことだからあり得るかも・・・」
 由郎は特に興味を持つ様子でもなく、そのソフトを鞄に無造作にしまった。



 全ての講義が終わった。
 由郎が外へ出ると、あの男が待っていた。
 男がへらへらと手を振る。由郎は気付かない振りをして帰った。


 由郎をじっと見ていた男。
 そして女が男に近づく。
「うまく渡せましたか?」
「ああ。だがあのソフト本当に大丈夫なのか?後で面倒な事にならないだろうな?」
 男の言葉に女は首をかしげる。

「さあ、分かりません・・・」
「分からない?だったら試してから・・・」
「だから彼にモニターになってもらうんですよ」
「・・・それもそうだな・・・わかったよ・・・」
 女の言葉に妙に納得する。

「じゃあ私は次は講義があるのでこれで・・・もうすぐ卒業ですね。卒業後はどうされるんですか?」
「とりあえず周りの環境を整える。お前が卒業するまではここに居るつもりだ」
「・・・いいんですか?1年も・・・」
「良いも何もお前が居なければ話にならんだろ」
 男がそう喋ると、女は頭を下げて去っていった。


 すると別の女がやってきた。
「何の話してたのよ?」
 男は特に気にするでもなく淡々と答える。
「ん〜?プログラムのことでちょっとな」
「プログラム〜?ああ、あの未完成のソフトのこと?どうしたの?」
「モニターに渡した」
「へぇ〜モニターに・・・・っておいっ!!ヤバイじゃん〜。あれって行き詰まって諦めたんじゃなかったっけ?」
「ああ、やばいよなあ・・・どうせ俺が後始末するんだろうな・・・ったく、卒業だって言うのに・・・」
 男は腕を組んでぶつぶつと呟いている。
「まあ頑張って!でも今日は相手してもらうからね〜」
「お前も不安要素の1つだよ・・・」
 その女も嬉しそうに去っていった。




 由郎は自宅に帰ると、さっそくそのCDに付いていた説明書を読んでみた。
「え〜っと・・・なんだこれ?難しいな・・・実際に起動しながらやってみよう」

 由郎はCDをケースから出し、パソコンに入れた。


「開いたフォルダから『MC++言語入門』のコンパイラをドライブにコピー・・・」
 順調に手順を踏んでいた由郎。
「エディタにこのプログラムを書いて同じファイルに置く」
 ・・・・・・

「そしてコマンドプロンプトを起動して・・・」
 ・・・・・・

 独学とは言ってもさすがにプログラムを勉強しただけはある。
「これで基本設定は出来た!さて、どうやって使うのかな?」
 由郎は説明書を読み進める。


「え?な、なんだこれは・・・」
 説明書に書いてあったのは、『理想の女性を作り出すプログラム』という言葉だった。
「り、理想の女性??・・・こ、これがあいつの言ってたゲームってやつなのか?」
 由郎は半信半疑になりながら説明書を食い入るように読み続けた。




 CDを託した男はさっきの女に電話をしている。
「え?じゃあ理想の女性を作り上げるってことか?」
「はいそうです。せめて画面の中だけでも思い通りになりたいものでしょ?特にああいったタイプだったらツボでしょ?メイドとか好みそうなタイプでしたし。あのソフトを使えば現実さながらの超リアルな女性が出来ます。そして画面上で女性を操るんです。声から仕種まで完璧に再現します」
「ふうん・・・だがそんな精巧なプログラムよく書けたな?しかもC言語で・・・」
「ああ、あれはJAVAですよ」
「・・・・でもMC++って・・・」
「ギャグです」

 男は拍子抜けしたようだ。
「・・・ギャグ?お前がねえ・・・」
「つまらなかったですか?」
「・・・まあ良い方じゃないか?」
「ありがとうございます!」
 女の元気な返事を聞くと、男は電話を切った。
 横では別の女が凄い形相で睨んでいる・・・
「たかが電話1つで殺しそうな目をするなよ・・・」
「そのたかが1本が泥棒の始まりよ」
「ど、泥棒??」
「恋泥棒・・・」
「・・・それでうまいこと言ったつもりか?」
「・・・・・・今のは忘れて。ちょっと考えるから」




 由郎は説明書にあったとおりに進めてみる事にした。

「まずMC++専用のエディタを立ち上げる・・・」
 するとユーザー登録などの一連の作業があった。
「これでこのプログラムは僕以外使用できないわけだな」


「で・・・まずは・・・その女性の名前と生年月日、血液型を入力する?・・・名前と年齢と血液型って・・・それだけで理想の女性なんて出来るはず無いじゃないか!」
 由郎はバカらしくなって止めようとした。


「・・・でも誰も見てないし、別に恥かくわけじゃないからいいか」
 しばらく考えると由郎は女性を思い浮かべた。

「う〜ん。あいつみたいに彼女も居ないし・・・生年月日と血液型を知ってる女性となると・・・芸能人?・・・でも芸名かもしれない・・・そ、そうだ。姉貴なら実験台に良いかも・・・」
 由郎は姉のデータを入力する。その名前は佐藤雪子。
 頭脳明晰な姉だ。


「次はプログラムを書く・・・まずはファイル読み込みからしてみましょう?」
 由郎はサンプルのプログラムを打ち込む。

「そしてプロンプトに以下のように打ち込みコンパイルする・・・」
 由郎は書かれるままに従っていく。
 どうやらエラーは無かったようだ。

「実行・・・と」
 実行してみると、面白いように姉のデータが並んでいく。

「ま、マジかよ・・・27歳、B型・・・身長167cm・・・スリーサイズ79、58、79・・・た、体重まで・・・凄いぞこのソフト!」
 どうやらでたらめではない。見た感じは正確だ。
 由郎はこのソフトを信じることにした。



 一連の作業を終えると、別ウインドウに姉の全裸が映し出された。
「おお、凄いぞ!・・・あ、今日はもう遅いな・・・明日朝から続きをやろう」
 由郎はこれからの事を夢見て眠りについた。




 翌朝・・・といっても昼前・・・

「ふあ〜あ。ちょっと寝すぎたかな〜。まだまだ続きが残ってるんだ」
 由郎が画面を立ち上げる。再び全裸の姉が映し出される。




 その頃・・・
「た、大変です!機能を調べてみたら恐ろしいバグがあることが分かりました!」
 女が男の部屋に乗り込む。男は彼女と抱き合って寝ていた。
 彼女はその女を見ると、恥ずかしそうに毛布で身体を隠した。

「やっぱりか・・・で、どんなバグなんだ?」
「さあ?」
 男は再び拍子抜けする。

「あのな。さあってどういうことだよ!今自分で言っただろ!!」
 男は怒りを抑えながら喋る。
「どんなバグかは分からないです。実際にモニターがそのバグを起こすとも限りません・・・ただ、恐ろしいバグなんです」
「だから、どんな恐ろしさだよ・・・」
「さあ?」
 男は頭を抱える。

「・・・もういい。とにかくバグがあるんだな?」
「どんな事が起こるか分からないから恐ろしいんです」
「とりあえずそう伝えておく・・・今日は休みだから明後日な」
「くれぐれもよろしくお願いします・・・」




 その頃、由郎は面白い事に気が付いた。
「へえ。これって色々な命令が打ち込めるんだ。例えば僕の前でオナニーしてみろとかね・・・」

 由郎が実行すると、画面の中の姉が本物さながらに声を上げてオナニーを始める。
「おお!すごいすごい!いや〜。姉貴ってこんな声出しながらオナニーするんだな〜」
 由郎は思わずズボンのファスナーに手をかける。

 そこに一本の電話が・・・


「由郎!あんたどこにいんのよ!!」
 姉だ。由郎は慌ててパソコンの音を消す。
「な、なんだよ姉貴。今家に居るよ」
それだけ言うと姉はプツンと電話を切ってしまった。
「な、なんだったんだよ・・・」




 その1時間後だ・・・
−コンコンコン−
 由郎の部屋に誰かがやってきた。
「由郎!私よ!開けなさい!」
(あ、姉貴だ!どうしてここに!?家からは1時間は離れてるのに・・・)
 由郎が扉を開けると、息をはあはあ切らせた姉がなだれ込んでくる。
 心なしか顔が赤くて目が潤んでいるように見える。

「よ、由郎!私の1人エッチを見てぇっ!!」
 姉はすぐに股間を弄り始めた。


 由郎は突然の事で理解できない。
「はあ?おい!何やってるんだよ!」
「わ、分からないけど突然あんたの前でオナニーしたくて・・・いてもたっても・・・くうぅ!・・いられなくて・・・」
「ど、どうなってるんだ?」
(ま、まさかあのプログラムが?現物にも効いているのか!?)


 由郎は姉に気付かれないように、『弟とセックスする』と書いてみた。
 そして実行してみる・・・
−ビクン−
 姉の動きが止まった。そして・・・
「え?な、何?どうして!?・・・なんで?・・・・こんなはず・・・ないわよ・・・」
 明らかに姉の様子がおかしい。
(き、効いているのか!?)

「お、おかしい・・・絶対におかしいのよ・・・そのはずよ・・・」
 姉は胸を押さえてはあはあと息をしている。
「・・・由郎・・・私とセックスしよう?・・・」
 姉が普段見せない媚びた顔を見せる。思わずOKしてしまった由郎・・・


 姉が由郎の股間を弄る。
 そしてズボンを脱がしていく。
(これじゃあ完璧に姉貴のペースじゃないか!何とかしないと・・・)
 美人で知的な姉に劣等感を持っていた由郎。
 さあここで反撃のチャンスだ!
 由郎は何とか姉の手を払うと、PCに手を伸ばした・・・


「んもう!何やってんのよ!」
「ああっ!!ちょっと!!」
 姉は電源を切ってしまった・・・

「何やってんだよ〜っ!!」
 慌ててパソコンに飛びつく由郎だが、後ろにはもっと慌てている人物が・・・
「な、なななななな!!な、なんで私こんなところに居るのよ!!それで何で裸になってんのよ!!何であんたのペニスしごいてんのよ!!あ、あんたが私に何かしたんでしょ!!」
−パシィン−
 姉の強烈なビンタを受けてしまった・・・
「酷い!!今日は研究があったのに!!絶対許さないから!!」
 姉は数回由郎の顔を蹴りつけると、そそくさと走り去った。



 魂が抜けたようにペタンと座り込む由郎。
「そんな〜。電源が落ちたら影響が消えてしまったのか?」
 由郎は急いで起動し直した。



「じゃあ今度はこのパソコンの邪魔をしないように先に命令しておこう」
 そこまで書いてコンパイルしようとした由郎は、1つのソースプログラムにいくつかの命令を書いてみる事にした。


「『弟の言う事は喜んで従う』・・・これで大丈夫なのかな?・・・い、いきなりストレートな命令って出来るのかな?というか語彙がどのくらいあるのか・・・パイズリとかあるかな・・・」


 そして由郎は、
「繰り返し文whileで、『弟の許可が無い限り』として・・・『弟のそばに居る』・・・
 そのファイルをコンパイルして実行した・・・




−コンコン−
「わ、私だけど・・・」
(姉貴が帰ってきた!やっぱりこのプログラムは現実にも影響があるんだ!)
 由郎は扉を開ける。
 姉は腑に落ちない顔をして、横に座っている。
「どうしたんだよ姉貴。許さないんじゃなかったのか?」
 わざと意地悪な質問をしてみる。
「あ・・・そ、そうだな・・・お前を監視する為だ。一緒に居てやるよ」
 姉は見栄を張って答える。
「いいよ別に・・・姉貴には学校があるだろ?」
 姉は大学院に通っている。できる姉は違うね〜。
(そんな姉貴と比較され、俺はやっとこの大学に入ったんだ)


「・・・わかってるわよ・・・でも何でか・・・ここに居たいのよ」
 姉は自分でもわけが分からないのだろう。頭を抱えて悩んでいる。
 その顔は今にも泣き出しそうだ。
「姉貴!俺とセックスするんだ!」
「え!?な、何をいってる・・の・・・・」
 姉はすぐに胸を押さえて気持ちの整理をする。
(な、なんなの・・・この感情は・・・あ、ありえない・・・)

 困惑の表情を浮かべて、大きく深呼吸をする。
(お、おかしい・・・弟としたいなんて・・・でも何でだろう・・・逆らえない)
 今は、由郎に従いたい気持ちが湧いているのだろう。
「う・・・うん。わかったわよ」
 姉が服を取っ払った。



(おかしい・・・さっきから姉貴が全然濡れていない・・・そうか!従うって書いただけで気持ちが入ってないからだ!!でも僕の腕じゃあ無理だよ・・・だって僕は・・・童貞なんだから・・・)


 由郎はPCのディスプレイの電源を入れ、スタンバイから復帰させた。
(え〜っと・・・繰り返し文forで、『弟の言葉に従う』と、『性的に感じる』・・・
「くふっ!?」
 由郎が実行すると、姉の様子が変わった。
 明らかに感じている顔だ。



「姉貴〜。脚を限界まで広げて、自分の指で性器を見せてよ〜」
−ピクッ−
「・・・・う、うん・・・」
 姉が言うとおりに脚を広げる。そして指で性器を奥まで見せ付ける。
(な、何で・・・感じちゃう・・・ダメなのに・・・バカ郎の前なのに・・・)
 脚が震えだした。愛液がだらだらと床に落ちていく。



「入れて欲しいかい?」
 由郎は自分のペニスを見せ付ける。標準よりやや大きい方か。
「い、嫌よ・・・」

 由郎は『入れて欲しい』と書いて実行した。

−ドクン−
(ま、まただ・・・どうして?もうわけわからない・・・入れて欲しい・・・)
「はぁ・・・はぁ・・・はあ・・はあ・・く、下さい・・・」
「あ〜あ!こんな変態姉貴を持って幸せだな〜!」
「くぅ・・・ぅ・・・」
 姉はプライドが崩れたせいか、感じすぎたせいか、涙を流していた。




 翌日から、姉が由郎に飼われることとなった。

 由郎の感情はどんどんエスカレートしていく。
 姉はただただプログラムどおりに抱かれ続けた・・・



 CDを託した男が聞いてくる。
「おい。あれどうだった?そろそろモニターの期間終了なんだが・・・」
 由郎は面倒くさそうに返事をする。
「ああ、あれね。そうかい。じゃあ明日返すよ・・・」
「・・・」
 男の返事を聞く前にそそくさと帰ってしまった。


 男が電話をかける。
「・・・ああ。俺だ。ちょっと今日は帰れそうにも無い・・・」




 由郎が帰宅した。
「お帰りなさい。由郎様」
 姉が全裸にエプロンで食事の準備をしている。


 由郎はエディタを起動し、何かを書き始める。
「ふふふ・・・こんないいソフトを消去するなんて出来るか・・・どうせならあいつには僕の舎弟になってもらおう・・・ふふふふふ・・・」

 しかし、由郎の指が止まる・・・
「あれ?・・・お、思い出せない・・・あいつの名は?・・・誕生日は・・・このソフトの使い方は?・・・説明書の場所は?・・・ど、どうしてだよ!」
 由郎の顔から汗がどっと噴出す。


 背後に殺気を感じる。姉だ。
「よ〜し〜ろ〜う〜?あんた無事で居られると思ってんのかな〜?」
「え?な、何のことだよ?」
「今朝男の人から教えてもらってね〜。そのソフトのこと。それっていったんエディタを消去してユーザー情報を書き換えたら私も使えるんだってね〜。あんたのことしばらく奴隷にするから後悔しなさい・・・」
「そ、そんな〜」

 そんな由郎を見て姉がクスクスと笑う。
「『喜んで奴隷になる』。はいもう一度。何が言いたいの?」
「・・・は、はい。とても嬉しいです。お姉さま」
 姉は由郎のPCにUSBを繋ぐ。
「そのパソコンはウィルスによって完全に破壊されたそうだから〜。もう2度と使えないのよ〜。観念しなさ〜い」
 姉が荷物をまとめて部屋を出て行くのを、由郎は頭を下げて見送る。



 姉はUSBをCDを託した男に渡す。
「はいこれ。どうもね」
「いや、俺の仲間が安易に作った物を安易に渡した俺も悪いんです。お姉さんはこのソフトによって多大な害を被った様で・・・どうもご迷惑をおかけしました」
 男は深々と頭を下げる。
「別にいいわよ。その代わり完成したら私にも頂戴ね。あなたのデータを入れて・・・うふふふふっ」
「や、やっぱり怒ってるじゃないですか〜」


 こうして由郎のひと時の楽しみは終わった・・・

 不思議な事に由郎はその時の記憶が無いと言う。

 知っているのは由郎の記憶を消したその姉と・・・・・



 
 
< ソースプログラム編END コンパイル編につづく >


 

 

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