【動画】女流棋士・山口恵梨子さんインタビュー=瀬戸口翼撮影
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(I love将棋)

 ネットやテレビの将棋中継ですっかりおなじみ。その軽妙な話しぶりに、解説役のプロ棋士の表情も和らいでしまうようだ。昨春に大学を卒業、本格的にタイトル取りを目指す。

 大阪生まれの東京育ちだが、父親の故郷・鳥取県三朝町(みささちょう)で3年前から、自らの名前を冠した将棋大会が開かれている。昨年11月には大会のPRのため副知事を表敬訪問。県のプレスリリースで「その美貌(びぼう)から『美人すぎる女流棋士』として人気を博す」と紹介された。

 人気の理由はルックスだけではない。埼玉の西武ドームで2月にあった「車将棋」。「ニコ生」中継の控室リポートの中で、スポンサーではない飲料名を口にしてしまった。しかし、慌てずにすぐ修正。その対応のうまさに感心する視聴者は多かった。「事前に言わないようにと注意していたのに、つい……」。一方、その1週間後にあった朝日杯決勝では、羽生善治四冠が勝利を決めた一手をズバリと言い当てた。並み居る解説陣も感心しきり。「たまたまです」と謙遜するが、会場から大きな拍手が送られた。

■将棋のために引っ越し

 高校生のころはおとなしいイメージだった。攻めの棋風とのギャップから、先輩の女流棋士に「攻める大和撫子(なでしこ)」と称された。「攻めダルマ」と呼ばれることもあるが、最近は「えりりん」が定着している。本人は「将棋界の盛り上がりにつながるなら、どんな呼ばれ方でもOKです」。

 将棋との出会いは6歳のころ。アマ四段の父親から将棋の手ほどきを受けた。将棋の授業がある東京都内の私立小に入学。小学2年でその授業がなくなると、将棋道場のある千駄ケ谷へ引っ越し、地域の公立小に転校した。小学校も住むところも、将棋を基準に選ばれていたのだという。「幼いころから憧れていたプロ棋士になれたので、父には感謝してます」

 中高一貫の女子校から白百合女子大へ。朝日杯では控室にいた男性陣にバレンタインのチョコレートをプレゼントする気遣いを見せ、愛用のバッグは「ミュウミュウ」。女子力は高そうだが、「いえいえ、理想を100としたら20です」。

 つい最近、将棋の研究会に「すっぴん」で参加。男性の先輩棋士からは「女子力ないねー」とあきれられたという。「化粧どころか、髪も乱れていました。あんまり気にならないんですよね」。今は女子力よりも棋力に磨きをかけたい。

■ネットで対戦できるかも

 大学卒業後は将棋一筋の生活を送る。「勉強すればするほど、将棋の研究には終わりがないと感じています」。日々、「将棋倶楽部24」や「将棋ウォーズ」といった人気のネット対局で鍛える。多い日には1日に十数局をこなすという。「ハンドルネームは秘密です」

 プロ棋士を目指す女性をもっと増やしたい。それが女流棋士全体のレベルアップにつながると思う。

 「いつかは男性棋士に追いつき追い越すのが夢ですね」

 将棋番組に出演し魅力を伝えることが、その土台作りにつながれば、と願っている。

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やまぐち・えりこ 1991年10月12日生まれ。鳥取県。堀口弘治七段門下。2002年に女流アマ名人で優勝。08年に高校1年で女流プロに。09年に1級、10年には初段となった。