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 イランの核問題解決を目指す米英独仏中ロとイランは2日夜(日本時間3日未明)、イランが10年以上は核兵器が造れないレベルまで核能力を制限し、国際社会の強制査察を受け入れることを柱とする「枠組み」で合意に達した。欧米や国連安全保障理事会は、イランがこれらを履行するのが確認できれば、制裁を解除する。6月末までに細部を詰め、「最終合意」を結んだ後に実行する。

 米国のケリー国務長官とイランのザリフ外相が26日からスイス・ローザンヌで断続的に協議し、29日までに全7カ国と欧州連合(EU)の外相が集結。2日夜まで8日連続で外相級会合を開く異例の展開をたどり、共同声明の発表にこぎつけた。

 「枠組み」の要点を示した発表文によると、イランは15年間にわたり、国内に保有する低濃縮ウランを現在の約10トンから300キロに削減し、核兵器の製造につながる高濃縮ウランはつくらない。また10年間は、ウラン濃縮に使う遠心分離機を現有の約3分の1にあたる6104基に減らす。

 こうした措置によって、イランが合意を破った場合でも、原子爆弾1発分の濃縮ウラン製造に最低でも1年はかかるようにする。また、イランは国際原子力機関(IAEA)の追加議定書を履行し、強制的な査察を受け入れる。

 核問題を巡る対イラン制裁については、イランが合意を守ったことをIAEAが確認できれば、すべてを停止するが、違反が見つかれば元に戻す。国連安保理が2006年から6回採択した対イラン決議もすべて解除するが、一部の効力は残すために新たな決議を採択する――などとしている。

 オバマ米大統領は2日、ホワイトハウスで「歴史的な共通認識に達した」と演説。その上で、「この枠組み(の共通認識)が、最終合意につながり、米国や同盟国、世界がより安全になることを確信している」と意義を強調した。

 周辺国はイランの核武装を強く懸念してきたが、合意が履行されれば、紛争が続く中東地域の安定に向けた一歩となる。(ローザンヌ=神田大介、奥寺淳)