ベンチャーのExit戦略については、起業家は最初から理解しておいたほうがいいかも

この記事で、サイバーエージェントの藤田さんがすごいいいことばっかりいっていて、感動したのです。

ベンチャーブームに浮かれる面々にモノ申す

起業する人は読んでおいたほうがいいなあ、と。まずは以下。

今の状況は明らかにバブル。起業家には「今はチャンスだからぜひ調達したほうがいい」とアドバイスするが、投資家から見ると、はっきり言ってばかばかしい。起業家も周囲の調達額が大きいから「こんなもんでしょう」みたいな感じで緊張感が緩んでしまっている。うちの会社を辞めて起業した人が、1年も経たず、まだほとんど売り上げも立ってないのに10億円近い時価で資金調達の相談にきたときは驚いた。
大きな額を調達した分、リターンを出してつじつまを合わせられるなら急成長できるチャンスだし、気が狂ったように頑張る覚悟のある人ならいい。でもその年齢、規模で、多額の資金を集めることに対する洒落にならなさを痛感してやっているのだろうか。現実に、実業で数億円の投資に見合う利益を出すのは並大抵のことではない。

んで、、僕が起業したときとかって、このあたり、マジで全然理解していなかったので、知っておけばよかったな、と思うばかりなのです。このあたりについて、知らない人のために説明したいと思います。(知っている人には当たり前のことばかりです。間違ってたらご指摘ください。)

まず、企業が投資をされるときは、会社の価値=時価総額を決めるのですね。バリュエーションといったりしますが、その価格が実態よりも高い=バブル、といっている状態です。

たとえば、10億円のバリュエーションね、となると、1億投資されたときには、10%の株式を渡すことで1億円のお金を「調達」できるわけですね。当然、これが100億のバリュエーションね、となると1%でいいわけです。株式が希薄化しないので、当然、調達としてはバリュエーションが高いほうが起業家にとってはお得です(PreとかPostとかはわからない人にはややこしいのでいったん簡略化しています)。

で、このバリュエーションというのは、当然ながら、環境に影響されます。みんながお金を持っていて、投資したい!という心持ちだと、人気の企業の価値はあがりますし、誰も投資しないけど、企業側はお金が必要、という時には、バリュエーションは安くなるのですね。

で、今は、お金があって、投資したいと思っている状態なので、ベンチャー企業のバリュエーションがあがっている、という風潮です。

企業側としては、一見いいことに見えますが、100億のバリュエーションをつけてしまうと、投資家としては、それ以上のリターンを求めるという問題があるのです。

上記の場合だと、Googleが100億で買収します!という場合でも投資側は一切儲からないので、反対しちゃったりするのですね。それならうちは売らない!となるわけです。つまり、買収とかIPOとかをする場合の選択肢が狭くなるのですね。Exitがなくなる、とかいう表現をしたりします。

こういうのを避けるために優先株という、「2倍になるまでは、まずうちがもらうからね、そのあとに分けよう」という方法もあります。上記例だと、1億投資して、2倍まで優先権がある株式だとすると、2億円をまずリターンとして得れるわけです。これだと、リターンとしてはとりあえず2倍以上が確保されるので、投資家側には有利なのですね。

高いバリュエーションの場合は当然リスクを投資家が負うわけなので、フェアな取引になります。ベンチャー側もあまりうまくいかなかった場合のリスク(ダウンサイドリスクといったりします)をとることで、高いバリュエーションで取引が出来るので、好まれます。

何が問題なのか

結構問題なのが、藤田さんの記事にもあるんですが、要は高くつけすぎると、出口がなくなるんですよね。

2010年にnanapiが調達したときは、当時としてはかなり高いバリュエーションで、3.3億調達して、高すぎじゃないかと言われたりしたのですよ。それが2014年とかだと結構普通になっちゃってたりします。

いい環境ではあるんですが、たとえば、50億とかのバリュエーションをつけちゃうと、30億とかで買収される、という、普通に考えたらかなりいい価格のDealをもらっても、基本的に拒否せざるを得なかったりするのですね。

投資した人があまり得をしないからです。優先株を持ってて、2倍にはなる、というケースでも、普通に考えると、50億のバリュエーションをつけているケースの場合、期待値がすごい大きいはずで「いやいや、上場して、1000億を目指してくださいよ」みたいな価値観になるわけです。

さらに、VC(ベンチャーキャピタル)は、ファンド期限というものがあります。要は、VCというのは、いろいろな人からお金を集めて、それをベンチャーに投資をして、10年後にリターンを返す、みたいな流れなのですね。となると、いつまでも待ってるわけにはいかない、というビジネスなのです。

そうすると、

  • ファンド期限が近づく
  • M&Aか、IPOで、リターンを返してほしいとVCは思う
  • 高いバリュエーションで投資しているので、安いM&Aは嫌だという
  • 無理やりでもIPOをしなければいけない
  • さらに高い時価総額をつけて上場しなければならない

という流れは、力学として働きます。これはVCが悪い、起業家が悪いというわけではなく、合理的に動くとこうなってしまうんですね。

もちろん、それが「上場をてこにしてもっとビックにしていきたい!」と思っている人たちであれば、IPOはひとつの通り道なんだと思います。Amazonみたいに赤字でも高い時価総額をつけることも可能なわけです。

ただ、たとえば、僕みたいな、「大きなサービスを作りたい」「サービスを作っているのがとにかく楽しい!」「ユーザーを見るのが楽しい」という人には、ベンチャーキャピタルから投資を受けたという事実からの、力学によって、IPOをしなければならない、というのはあまり良いことではないだろうと思うのですね。

一つ誤解なきように言いたいのは、グロービス・キャピタル・パートナーズという、ベンチャーキャピタルから投資を受けてたのですが、そういうむやみな圧力はなかったです。贔屓目になってしまいますが、今になって振り返っても、素晴らしいVCだと思うんですよね。小さいベンチャーに、大きなリスクをとって、大きく投資してくれるというところなので。

ただですね、ファンド期限とかを知っていて、ここまでに結果出します、と自分からいっている以上、プレッシャーは勝手に感じてしまいます。これは単なる力学の問題です。IPOがゴールに設定して、結果を出そうという力学が勝手に自分の中で生まれてしまう。

それは結構きついんですよね。

結局、KDDIグループに入るという形に落ち着けて、ジョインして半年くらいバタバタしたものの、ようやくサービスに集中できる環境をつくれつつあるので、僕らは結果論としてはよかったのですが、こういう状態で苦しむベンチャーというのは、今後、出てくるんじゃないかと思っているのです。

それが事前にわかっていたものであればいいんですが、僕とかを振り返ると、よく理解していなかったな、と思いました。

繰り返しになりますが、ベンチャーキャピタルは投資をして、リターンを得ることが仕事です。この仕組みはひたすら起業家にとってはチャンスが増えるので良いことです。そしてリターンを得るのは、IPOかM&Aしかないわけなので、VCがそれを求めるのは100%正しい行為です。それが嫌なら投資を受けてはいけません。

しかし、この仕組み、力学を理解して投資を受けないと、途中から、不本意な道を選ばなければいけない人も出てくるのではないか。上場ゴールという言葉があるように、リターンを返すため「だけ」に上場してしまう、となると、みんなにとってよくありません。

じっくりと育てるために、投資を受けないとか、IPOだけじゃなくて、M&Aの道も残すために、バリュエーションをあげすぎないとか、いろいろな手段もあるわけです。このあたりは、理解はしておいたほうがいいかなと思うこの頃でした。