3月15日、ヤンマースタジアム長居――。セレッソ大阪のホーム開幕戦には、タイ・インドネシアから駆けつけた、二人の熱狂的なサポーターの姿があった。彼らは昨年12月に日本・タイ・インドネシアの3カ国合同で開催されたC大阪ファン感謝イベントにおけるじゃんけん大会の優勝者で、C大阪がこの日のために特別に招待した現地のセレッソサポーターだ。
外国に住む彼らがなぜ日本のC大阪のファンになったのか? 彼らによれば、C大阪が展開するSNSこそがファンになる大きなきっかけだったという。すでにC大阪のフェイスブックのファン数は29万人にのぼり、その数は阪神タイガースのそれよりも多く、日本のプロスポーツチーム最大のファン数を獲得している。日本だけでなく、海外にも求心力を持つ一大フットボールコミュニティとして成長しつつあるのだ。
そうしたソーシャルメディアを中心にしたオンライン上のコミュニケーションが成功を収めるなか、バーチャルの世界から飛び出し、「チーム」と「海外ファン」のリアルな絆の醸成を狙ったのが前回のファン感謝イベントだった。そして今回の招待ツアーで、大阪というホームタウンの魅力を感じてもらいながら、実際のチームの試合をホームスタジアムであるヤンマースタジアム長居で観戦してもらい、クラブの魅力をよりリアルに体感してもらうことがC大阪の狙いだった。
今回のゲストの一人である、Sariさんは、インドネシアの首都ジャカルタで弁護士事務所を経営する。大のサッカーファンである父親の影響で、幼少時代からテレビやスタジアムでサッカーを観戦する環境で育った。一方、タイから応援に駆けつけたSombatさんは、バンコクに住む会社員。普段は現地にあり、C大阪の提携クラブでもある、バンコクグラスの熱心なサポーターとして、ゴール裏に陣取り、太鼓を叩いて応援しているという。
試合当日、C大阪は彼らに、試合前の選手とのハイタッチや、フェアプレイフラッグを携えた選手入場の誘導係という、ファンなら誰もが憧れる仕事の場を提供した。少しでも身近にチーム・選手・試合を感じてもらいたいからだ。また、ゴール裏のコンコース付近で実施された、C大阪サポーターによる決起集会にも案内。参加したゲストの二人は、「熱狂的なサポーターに温かく迎えてもらって凄く嬉しい」と喜び、日本のセレッソサポーターとの交流を深めた。
試合が始まると、二人は熱心に声援を送り、試合に熱中し始めた。特にSombatさんは、独特のリズムをとり、まるで太鼓を叩くかのように愛するC大阪に声援を送っていた。二人の声援がピッチに届いたのか、試合は、玉田圭司の加入後初ゴールを含む2つのファインゴールと、扇原貴宏のファンタスティックなロングシュートでC大阪が快勝(3−1)。ゲストの二人も見事な勝利にご満悦の様子だった。
試合後、スタジアムにあるチームショップでたくさんのセレッソグッズを購入し、スタジアムを後にしたSariさんは、「この体験やチームの魅力を帰国後インドネシアの皆に共有したい」と、自らC大阪の親善大使に名乗りを上げている。一方のSombatさんも「今日のような試合を見ることができて本当に幸運だった。(バンコクグラスで昨年主軸だった)モニ(茂庭照幸)も試合で見られたしね」と、この日一番の笑顔で試合を振り返った。
さらに、C大阪は2日後の練習の後に、選手と個別に記念撮影や質問を行える触れ合いの場を提供した。ディエゴ・フォルランの大ファンだというSariさんは、自分の手をつねる素振りをしながら(こうしたジェスチャーは万国共通のようだ)、「これは夢ではないのね」と大興奮。「インドネシアには、フォルラン選手のプレーが見たい、というファンがたくさんいます。是非C大阪でチーム遠征をしてもらえませんか」と、フォルランに大胆なお願いをしていた。すると、フォルランは「そういう機会があれば、本当に楽しみだね」と、気さくに返答し、彼女がインドネシアから持参したおみやげのシャツを身にまとい、遠方からの特別ゲストをもてなし、選手たちもゲストを歓迎していることが伺えた。

ツアーを終えた二人は、「とにかく招待してもらったことについて、C大阪に感謝している」と、クラブへの謝意を惜しまなかった。そんな二人に、最後にクラブへの要望を伺うと、Sombatさんは「早くC大阪のタイツアーを実施してほしい」とタイでのC大阪の試合を待ち遠しくしているようだ。そしてSariさんは「ユニフォームの価格を手の届きやすい値段にしてほしい。現状では、オフィシャルの1/10程度以下で購入できる模倣品を買わざるを得ないファンがたくさんいる」と母国での現状を訴えた。こうした外国人サポーターのリアルな意見を知れたことも、クラブにとって有益だったはずだ。
昨年のJリーグ開幕時と比較して、他のJクラブも海外版のサイトやSNSを立ち上げるチームが増えている。Jリーグの東南アジア戦略の影響もあり、今後もそうした流れは一層加速していくことが予測される。そんななか、C大阪の取り組みは、一歩抜きん出ていると言えるだろう。C大阪は、インターネットの枠を超え、いち早く、前回実施した3カ国連動ファン感謝祭や今回の招待ツアーを開催し、「クラブ」と「海外ファン」の距離感を飛躍的に縮めることに成功している。
Sariさんは今回のツアーをこう振り返る。
「今回のツアーは何もかもが新鮮で、刺激的な時間でした。なかでも日本のサポーターに温かく迎え入れられた瞬間は、本当に感動的でした」。
C大阪にとって、「クラブ」と「海外サポーター」の絆を醸成できたことは、大きな意義があるはずだ。そして、何より最大の収穫は、日本人とタイ人・日本人とインドネシア人、そしてタイ人とインドネシア人という、サポーター同士の“ボーダーレスな絆”が芽生えたことにあるのではないだろうか。
クラブの基盤とも言えるサポーター同士の絆を、世界規模で醸成し続けるC大阪。彼らが打ち出し続ける海外戦略のひとつひとつが、クラブの糧となっていくに違いない。
外国に住む彼らがなぜ日本のC大阪のファンになったのか? 彼らによれば、C大阪が展開するSNSこそがファンになる大きなきっかけだったという。すでにC大阪のフェイスブックのファン数は29万人にのぼり、その数は阪神タイガースのそれよりも多く、日本のプロスポーツチーム最大のファン数を獲得している。日本だけでなく、海外にも求心力を持つ一大フットボールコミュニティとして成長しつつあるのだ。
そうしたソーシャルメディアを中心にしたオンライン上のコミュニケーションが成功を収めるなか、バーチャルの世界から飛び出し、「チーム」と「海外ファン」のリアルな絆の醸成を狙ったのが前回のファン感謝イベントだった。そして今回の招待ツアーで、大阪というホームタウンの魅力を感じてもらいながら、実際のチームの試合をホームスタジアムであるヤンマースタジアム長居で観戦してもらい、クラブの魅力をよりリアルに体感してもらうことがC大阪の狙いだった。
今回のゲストの一人である、Sariさんは、インドネシアの首都ジャカルタで弁護士事務所を経営する。大のサッカーファンである父親の影響で、幼少時代からテレビやスタジアムでサッカーを観戦する環境で育った。一方、タイから応援に駆けつけたSombatさんは、バンコクに住む会社員。普段は現地にあり、C大阪の提携クラブでもある、バンコクグラスの熱心なサポーターとして、ゴール裏に陣取り、太鼓を叩いて応援しているという。
試合当日、C大阪は彼らに、試合前の選手とのハイタッチや、フェアプレイフラッグを携えた選手入場の誘導係という、ファンなら誰もが憧れる仕事の場を提供した。少しでも身近にチーム・選手・試合を感じてもらいたいからだ。また、ゴール裏のコンコース付近で実施された、C大阪サポーターによる決起集会にも案内。参加したゲストの二人は、「熱狂的なサポーターに温かく迎えてもらって凄く嬉しい」と喜び、日本のセレッソサポーターとの交流を深めた。
試合が始まると、二人は熱心に声援を送り、試合に熱中し始めた。特にSombatさんは、独特のリズムをとり、まるで太鼓を叩くかのように愛するC大阪に声援を送っていた。二人の声援がピッチに届いたのか、試合は、玉田圭司の加入後初ゴールを含む2つのファインゴールと、扇原貴宏のファンタスティックなロングシュートでC大阪が快勝(3−1)。ゲストの二人も見事な勝利にご満悦の様子だった。
試合後、スタジアムにあるチームショップでたくさんのセレッソグッズを購入し、スタジアムを後にしたSariさんは、「この体験やチームの魅力を帰国後インドネシアの皆に共有したい」と、自らC大阪の親善大使に名乗りを上げている。一方のSombatさんも「今日のような試合を見ることができて本当に幸運だった。(バンコクグラスで昨年主軸だった)モニ(茂庭照幸)も試合で見られたしね」と、この日一番の笑顔で試合を振り返った。
さらに、C大阪は2日後の練習の後に、選手と個別に記念撮影や質問を行える触れ合いの場を提供した。ディエゴ・フォルランの大ファンだというSariさんは、自分の手をつねる素振りをしながら(こうしたジェスチャーは万国共通のようだ)、「これは夢ではないのね」と大興奮。「インドネシアには、フォルラン選手のプレーが見たい、というファンがたくさんいます。是非C大阪でチーム遠征をしてもらえませんか」と、フォルランに大胆なお願いをしていた。すると、フォルランは「そういう機会があれば、本当に楽しみだね」と、気さくに返答し、彼女がインドネシアから持参したおみやげのシャツを身にまとい、遠方からの特別ゲストをもてなし、選手たちもゲストを歓迎していることが伺えた。
ツアーを終えた二人は、「とにかく招待してもらったことについて、C大阪に感謝している」と、クラブへの謝意を惜しまなかった。そんな二人に、最後にクラブへの要望を伺うと、Sombatさんは「早くC大阪のタイツアーを実施してほしい」とタイでのC大阪の試合を待ち遠しくしているようだ。そしてSariさんは「ユニフォームの価格を手の届きやすい値段にしてほしい。現状では、オフィシャルの1/10程度以下で購入できる模倣品を買わざるを得ないファンがたくさんいる」と母国での現状を訴えた。こうした外国人サポーターのリアルな意見を知れたことも、クラブにとって有益だったはずだ。
昨年のJリーグ開幕時と比較して、他のJクラブも海外版のサイトやSNSを立ち上げるチームが増えている。Jリーグの東南アジア戦略の影響もあり、今後もそうした流れは一層加速していくことが予測される。そんななか、C大阪の取り組みは、一歩抜きん出ていると言えるだろう。C大阪は、インターネットの枠を超え、いち早く、前回実施した3カ国連動ファン感謝祭や今回の招待ツアーを開催し、「クラブ」と「海外ファン」の距離感を飛躍的に縮めることに成功している。
Sariさんは今回のツアーをこう振り返る。
「今回のツアーは何もかもが新鮮で、刺激的な時間でした。なかでも日本のサポーターに温かく迎え入れられた瞬間は、本当に感動的でした」。
C大阪にとって、「クラブ」と「海外サポーター」の絆を醸成できたことは、大きな意義があるはずだ。そして、何より最大の収穫は、日本人とタイ人・日本人とインドネシア人、そしてタイ人とインドネシア人という、サポーター同士の“ボーダーレスな絆”が芽生えたことにあるのではないだろうか。
クラブの基盤とも言えるサポーター同士の絆を、世界規模で醸成し続けるC大阪。彼らが打ち出し続ける海外戦略のひとつひとつが、クラブの糧となっていくに違いない。