2015-03-04
きっと、スマホ的感性の時代がやって来る
近頃の通勤風景を眺めていると、新聞を読んでいるのは四十代より上ばかり、雑誌を手にしている人も珍しくなりました。
三十代より下の男女が手にしているのはもっぱらスマホです。ゲームもスマホ。小説もスマホ。音楽もアニメもスマホ……。あらゆるサブカルチャーコンテンツをスマホで楽しんでいる景色を目にします。
そういう風景を眺めていて思うんですよ。「ああ、将来のサブカルチャーは、こうやってスマホを覗き込んでいる人達と、その感性に牽引されていくんだろうなぁ」と。
若い頃にどんなメディアに親しんでいたのか・どんなメディアでサブカルチャーを愛好していたのか――これって、すごく重要だと思うんです。20世紀に各ジャンルの漫画が円熟を迎えられたのは、それぞれの初期の名作に親しんで育った人達がいればこそ。アニメやゲームにしても、80〜90年代に一生懸命にテレビにかじりついていた人が沢山いたから、クリエイター側にも“パトロン”側にも大勢の担い手がついているのでしょう。
時代それぞれのサブカルチャーは、一昔前の若年者の体験に紐つけられている、と言い換えられるのかもしれません。雑誌やテレビゲームや子供部屋を与えられていた子ども達が、子ども時代のサブカルチャーや習慣を捨てることなく成人になって、漫画を買ったり、DVDやブルーレイディスクを買ったり、据え置きゲーム機を買い替えたりして界隈を買い支えている――そういう部分があるように思えるのです。最近とみに見かける、古いアニメのリメイクバージョンなども、そうした購買層をあてにしている部分が大きいのでしょうね。
それなら、これからはどうなるのでしょうか?
スマホでアニメやゲームを楽しみ、スマホで音楽を聴き、スマホで情報収集もコミュニケーションもまかなう世代が順次社会人となり、マスボリュームとしての割合を増していくとしたら……若者向けサブカルチャー全般がその状況を反映したものになっていくのではないでしょうか――かつての雑誌やテレビがそうだったように。
雑誌的感性ともテレビ的感性とも違った、スマホ的感性とでもいいますか。
この理路に基づいて考えるなら、「年少者のほとんどが、スマホ(やスマホ的)メディアに依存したかたちでサブカルチャーコンテンツを消費し、可処分時間を消費している」状況は、サブカルチャー界隈の予測因子としてとてつもなく重要のように思えるのです。小さい頃にテレビやファミコンにかじりついていた層によって2015年のサブカルチャーが担われているのと同じように、将来的には、スマホであらゆるコンテンツを消費している層によって2030年頃のサブカルチャーが担われるのではないでしょうか*1。そして情報収集もコミュニケーションもスマホを前提とした世代が成人を迎える頃には、いよいよ雑誌やテレビ、とりわけゴシップ誌的なものや情報誌的なものは老人向けになっていく……。
もちろん、その頃にはスマホも他の何かに置き換えられているかもしれません。
スマホは携帯性と汎用性に優れた端末ですが、ディスプレイが小さい等、「完璧なメディア」とまでは言い切れません。遅かれ早かれ、そうした弱点を自ら克服するか、克服した上位互換な何かに取って代わられる可能性が高いものだと私は思います。
だとしても、学齢期〜思春期に(ガラケーや)スマホばかりいじってきた世代が三十代四十代と年を取っていけば、“スマホ越しに培われた習慣”や“嗜好のテンプレート”は近未来のサブカルチャーにフィードバックされていくとは思うんですよ。逆の視点で考えるなら、今現在の学齢期〜思春期にリーチできていないサブカルチャーやメディアの感性は、近未来の文化生態系には反映されにくい、と予測されます。
こうした変化は、きっと始まっているのでしょう。スマホでも楽しめるゲームやweb小説はもう繁栄していますし、子供のPC使用率がたいして上昇せず、ユーチューバ―なるパフォーマーが年少者の視線を集めている現状なども、将来のコンテンツ消費の風向きを予測させる材料と言えるかもしれません。
スマホに軸足を置き続けたサブカルチャー的感性と消費者の時代が巡り来れば、今日のサブカルチャーコンテンツの需給状況も成立しなくなりそうです。例えば、解像度の高いディスプレイでアニメのブルーレイディスクを再生するような習俗(そう、これは習俗です)は「おじさんやおばさんの道楽」と見做されるようになるのかもしれません。いや、もうそうなりかけているのかもしれませんが。
こうした変化のなか、きっと色々なものが失われ、きっと色々なものが生まれてくるのでしょう。最近は、その喪失と勃興の瞬間に居合わせているような感覚をとみに覚えるので、備忘的にこれを書いておきました。
[関連]:データえっせい: パソコンを持たない若者
*1:コンテンツの制作にスマホ以外の機材を要しがちな点は、こうした傾向をいくらか軽減させるかもしれません。それでも、コンテンツの制作者・消費者双方の感性がスマホ親和的なものになれば、その感性や嗜好の影響は必ず反映されるでしょう。特に「どのような作品が売れ線になるのか」という点において。
- 15 https://www.google.co.jp/
- 12 http://t.co/bMtvIMIZDQ
- 11 http://b.hatena.ne.jp/
- 11 http://feedly.com/i/latest
- 6 http://pipes.yahoo.com/pipes/pipe.info?_id=8dda7c5265619c2fb368495a3d11b784
- 6 http://pipes.yahoo.com/pipes/pipe.info?_id=fc0b861b633a081990220794ce5ff73d
- 6 http://polar.shirokumaice.com/link/hatenabest2013.html
- 5 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=15&ved=0CHEQFjAO&url=http://d.hatena.ne.jp/p_shirokuma/20140607/p1&ei=y33xVMisPOLamgW0tYHoDw&usg=AFQjCNHoAcJ5yZYvL6KOuvF5t_ty4o0wEQ
- 4 http://polar.shirokumaice.com/link/hatenabest2012.html
- 4 http://reader.livedoor.com/reader/