第4回 「代打オレ」と、嗣永桃子PM(カントリー・ガールズ)は言った。
【アイドル現場日記#2】2015年1月10日「Hello! Project 2015 WINTER DANCE MODE!」@中野サンプラザ 料金8000円(税込・ファンクラブ特別価格)
ハロヲタのお正月は中野サンプラザのハロコンから始まる。
ハロコンとは、ハロプロ(ハロー!プロジェクト)所属アイドルが一堂に会する合同コンサート・ツアーのこと。ハロプロ系アイ ドルのフェスみたいなもんですね。毎年、冬と夏の2回、ハロプロの聖地・中野サンプラザを皮切りに各地で開催される。今回の参加メンバーは、モーニング娘。'15、Berryz工房、℃-ute、アンジュルム(スマイレージから改名)、カントリー・ガールズ(カントリー娘。から改名)の総勢44名+ハロプロ研修生19名(うち8名が選抜されて新ユニットを結成)の合計63名。公演はセットリス ト違いで2パターンあるので、1ツアーにつき最低でも2回入るのが基本です。
本日のハロコン昼公演観賞の連れは、書評業界の同業者2人、「AXNミステリーBOOK倶楽部」仲間の香山二三郎さん59歳と、『だらしな日記』でおなじみ藤田香織さん46歳。大森望53歳と合わせて、みごとな中年トリオの完成です。
カヤマー先輩はもともと「マジすか学園」からハマって前田敦子推しになったAKB48ファン(現在の推しメンは岡田奈々らしい)ですが、FCに入ってもなかなかチケットがとれない悲哀をかこち、最近はすっかり(大森経由のチケットで)ハローの現場に通う人に。そのわりに勉強(自宅学習)が足りてませんが、今は℃-uteの岡井ちゃん推しだとか。
対する藤田香織さんは、ハロプロキッズ・オーディションの模様がテレビ東京系の「ハロー!モーニング。」で放送されていた2002年以来、足かけ13年にわたり、彼女たちの〝その後〟を追い続けている歴戦の在宅ベリヲタ(Berryz工房ファン)。推しメンは2005年に引退した石村舞波だそうで、舞波の思い出を語るときは乙女の顔になります(ふだんもわりと乙女だけど)。
現場に来るのは10年ぶりで、中野サンプラザは初参戦だそうですが、大森よりはるかにキャリアが長いハロヲタの先輩であり、なおかつ今の研修生事情とかもちゃんとチェックしてるので、たとえば背後から広瀬彩海推しの野太い声がかかると、たちまち、
「ナイスガール(トレイニー)から来た子にもずっと追っかけてるファンがいるんだね」
「ハロプロに入ったと思ったらいきなり新ユニット入りで、そりゃテンション上がるよ」
などなどのヲタ話に花が咲き、開演前から気分はいやがうえにも盛り上がる。
しかも、FC先行で当たった本日昼公演の席は、センターブロック1列めの左通路寄り。中野サンプラザの場合、中央はゼロ列が前に4列分並ぶので、実質5列目ですが、そうは言ってもステージは目の前。しかも通路席なので、ハロメンがすぐ横を通過する機会が2度あり、「いま、浜ちゃん(研修生の浜浦彩乃)の衣裳が腕をかすったよ!」とか大騒ぎできる仕組みです。
いや、それを言うなら4日の夜公演で当たった12列目が興奮度MAXで......みたいな調子で書いてるとたちまち3回分ぐらいの分量になりそうなので(ここまでですでに100行ほど説明を削ってます)、今日のハロコンのポイントを1点だけに絞ってレポートする。すなわち、「ももち無双」。
世間ではウザドルの代表とか、バラエティによく出るお笑いアイドルとか思われてるでしょうが、Berryz工房の嗣永桃子は芸歴12年の大ベテランにして、アイドルの鑑。道重さゆみ卒業後のハロプロで、ただひとり一般に名を知られているメンバーでもある。
ざっとキャリアを紹介すると、02年のオーディションに合格して15人のハロプロキッズの一員となり、同年末の劇場映画「仔犬ダンの物語」でいきなり主演。04年にBerryz工房のメンバーとしてメジャーデビューを果たし、以来11年、ずっとトップ・アイドルとして活躍してきたんだけど、2015年3月3日をもって、Berryz工房は無期限の活動停止に入る----と昨年夏のハロコンで発表された(その瞬間のことは、2月16日に洋泉社から発売される『アイドル最前線2015』のBerryz工房特集に書きました)。
ところがどっこい、所属グループが活動停止するくらいでアイドルを卒業するももちではなかった。里田まいスーパーバイザーのもと、今年から活動を再開するカントリー・ガールズ(カントリー娘。から改名)に、なんとプレイング・マネージャー(選手兼監督)として加入することになったのである。今年3月で23歳になる嗣永桃子が、平均年齢14・8歳の新人5人(うち2人はハロプロ研修生出身)を率いるわけですね。
ただし、3月3日までは、Berryz工房のメンバーとしての活動をメインにするため、カントリー・ガールズのパフォーマンスには参加しない----はずだったが、今年の冬ハロコンはインフルエンザが猛威をふるい、この日の公演は、モーニング娘。'15の工藤遥や研修生新ユニットの3人のほか、カントリー・ガールズの小関舞(おぜき・まい)も欠場。
メンバーを代表して挨拶するマイクを持ったももちPMいわく、
「わたしはぁ、3月3日にBerryz工房が活動を休止してからパフォーマンスに参加しますぅ......という予定だったんですがぁ......」会場どよめき。「今日はぁ、小関舞ちゃんがぁ、インフルで欠席、ということでぇ......」ヲタの歓声。「ゆうべ、急遽練習しましてぇ......」盛大な拍手。「こうやって、衣裳も用意していただいたので、わたしが代役を務めさせていただきます!」
まさかの〝代打オレ〟。
ちなみに、欠場した小関舞ちゃん(グループ最年少)は、ライオンズからジャイアンツに行ってベイスターズで引退した元プロ野球選手、小関竜也の娘なので、代打を送られる相手としても不足はありません(?)。
カントリー・ガールズは、その小関舞(12歳=当時=)、島村嬉唄(しまむら・うた 14歳)はじめ、アイドル擦れしていないフレッシュなメンバーが多く、デビュー曲の「愛おしくってごめんね」も、80年代アイドルソングを思わせる、思いきりかわいい感じの楽曲。右手を頭の上(右横)に立て、腰を折りながら「ごめんなさいね」と歌うとか、時代を逆行するにもほどがある----とか言いつつも、年末のカウントダウン・ライブにおける初披露から、初々しい5人のステージに歴戦のハロヲタが熱狂。とくに島村嬉唄はハロヲタのハートを一気に鷲掴みにして、このグループに嗣永桃子は要らないんじゃないの? という、ももち不要論が湧き起こっていたのだが、そこは嗣永プロ。いざステージに立つと格が違います。歌も踊りもフレッシュすぎるほどフレッシュ。
10歳も年下の小関舞の代役を立派につとめたばかりか、「ちょっとめんどくさくって、ごめんね」のセリフ部分を、「ちょっとめんどくさくって......許してにゃん」と猫の手ポーズつきで改変するやりたい放題。ステージを完全に支配して、中野サンプラザを埋めつくしたハロヲタの大喝采を浴び、ハケるときは「ももち、よかったよ!」の掛け声までかかったほど。
実際、身長が低いこともあって、パフォーマンス中は、山木梨沙や稲場愛香(ともに研修生出身の高校生)より年下に見えたくらい。「愛おしくってごめんね」がももちのための曲じゃないかと思えてくるくらいで、あらためて嗣永プロの実力に感服しました。
本来、この曲は両A面のカップリング曲「恋泥棒」ともども、インディーズCDとして会場販売される予定だったんですが、カントリー人気の沸騰のせいか、この日のパフォーマンスがあまりに圧倒的だったせいか、急遽、ももちを含めた6人でレコーディングして3月25日にメジャーリリースされると(このライブの2週間後に)発表されることに。アップフロントには珍しいスピード対応とハロヲタの評判も上々です。
「ハロ!ステ」#99より、5人バージョンのカントリー・ガールズ「愛おしくってごめんね」(2015年1月2日/中野サンプラザ)※冒頭の台詞担当が島村嬉唄、ショートカットが小関舞。
さらに、夜公演のほうでは、Berryz工房としてステージに立つのはもちろん、カントリー・ガールズとしては「恋泥棒」を歌い、鈴木愛理、夏焼雅とトリオを組むユニット、Buono!のリーダーとしても登場。ひとりで3ユニットにまたがって出演したばかりか、コーナーMCを担当し、Berryz工房の清水キャプテンに対する(ももち以外には不可能な)ムチャ振りを成功させる快挙までなしとげて、昨夏のハロコンが道重無双だった以上のももち無双ぶりを見せつけた。
というわけで、ハロヲタじゃないみなさんも、いまのうちからカントリー・ガールズにご注目を。いや、「大器晩成」が大ヒット中の新生アンジュルム(スマイレージから改名)も、12期メンバー4人が加わったモーニング娘。'15も、いまだに名前が決まらない研修生新ユニットも注目ですが......。
ちなみにベリヲタの藤田香織さんは、最初にBerryz工房が出てきて「Love together!」を歌いはじめたところで12年間の記憶が走馬燈のように甦ったらしく、となりで立ちつくしたまま滂沱の涙を流してました。3月3日の武道館でどうなっちゃうのか、今から心配です。