2010年代のベストSFは?【海外篇】

毎年2月、小冊子『SFが読みたい!』誌上にて100名を超えるプロの投票によって決定されるベストSF。『航路』『あなたの人生の物語』『ディアスポラ』――ゼロ年代には、今もなお語り継がれる様々な海外SFが第1位の栄冠に輝いてきました。では、2010年代にはどんなSFが現れてきたのか? 2月10日のベストSF2014の発表に合わせ、2010年~2013年のベストSFをガイドします。

べストSF2010

『異星人の郷』
マイクル・フリン


嶋田洋一=訳、創元SF文庫

異星人と中世ドイツ人のコンタクトを
説得力十分の筆致で描く傑作

 2010年のベストSF第1位は単独著作では本邦初紹介の中堅ハードSF作家による本格SFが獲得。

 統計歴史学者のトムはドイツのラインラント地方にかつて存在した小村アイフェルハイムの謎を追っていた。かれのモデルでは村は再建されるはずだったが、実際は“悪魔の棲む谷”として人々から忌避され、歴史からその姿を消したのだった。

 一方、14世紀の上ホッホヴァルト、後のアイフェルハイムで神父は傷ついた異形の者たちと出会う。神父や村人たちはかれらとの文化の差に戸惑いつつも、翻訳器を通じてその交流を深めていく。

 統計学と物理学を駆使し埋もれた歴史を掘り起こす現代パートもスリリングだが、本書の美点は、封建制とキリスト教に強い影響を受けながらもそれらと折り合いを付けて暮らす人びとを緻密かつ説得力十分に描いた14世紀パートにこそある。

 また、現代の視点からは異質な2つの知性間のファーストコンタクトを描き出した点もユニークだ。すなわち、本能に束縛された社会を構築しながらも、世界の科学的理解という点では現代人に近しい異星人。一方、キリスト教に基づいた自然哲学で世界を理解する中世ドイツ人。かれら対照的な知性の交流を描くことこそがSFの醍醐味である。

(細井威男)


べストSF2011

『プランク・ダイヴ』
グレッグ・イーガン


山岸真=訳、ハヤカワ文庫SF

SFマガジン

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