本田靖明、松浦新
2015年1月5日11時32分
東京都心にある特別養護老人ホーム(特養)は、昨年9月から新たな入居者の受け入れをやめた。11月からは在宅で介護を受ける高齢者を一時的に預かるショートステイもやめた。
施設長は「介護職員の相次ぐ退職と採用難のダブルパンチ。入居希望者は大勢いるのに申し訳ない」と話す。
「心も体も疲れ切り、もう続けられません」。一昨年秋、30~40代の職員3人が相次いで退職したのが職員不足の始まりだった。
この特養では入居者の定員約60人に対して常勤とパートなど約30人の職員がいた。3人がやめた穴をうめるために休日出勤が増えるなど負担が増すと、あとを追うように1人また1人とやめ、昨年夏までに10人余りが退職してしまった。
職員は土日など決まった休みが取りづらく、夜勤も多い。入居者の体調の変化に気を配り、けがなどをさせないよう、いつも注意していなければならない。
年収は勤続6~7年の常勤職員で450万円ほどだ。都内の特養でも高いほうだというが、職員を引き留められなかった。
景気が回復するにつれてほかの職種の求人が増え、給料も上がった。この特養をやめた職員の半数近くは、電気設備会社の営業や小売店の販売など介護と関係のない仕事に転職した。
職員の補充も難しくなっている。退職者が出るたびにインターネットの求人サイトや新聞広告で募集したが、応募はまったくなかった。派遣会社などからのべ約20人を受け入れたが、介護経験の浅い人が多く、5人しか残らなかった。
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