中東・アフリカ

アフリカにまで広がるイスラム国の影響力湾岸諸国から流れ込む過激派イデオロギー〜関係国はどう対応するのか(1)

2014.11.27(木)  吉田 彩子

6月末にイスラム国(IS:Islamic State、またはアラブ語でDaesh1)を設立したと発表したアブ・バクル・アル・バグダディ(Abou Bakr al-Baghdadi)は、自らをカリフ2とし、イラクからシリアにまたがる地域において、事実上、勢力拡大を続けている。

テロのグローバル化を刺激するイスラム国

 その背景には宗派対立(シーア派対スンニ派)、民族問題(クルド人問題)、地域における大国であるイラン(シーア派)対サウジアラビア(スンニ派)の覇権対立の構図、依然としてシリアにおいて影響力を持つロシアの存在など、複数の要因が絡み合っており、また、中東は資源の宝庫であるため、常に不安定な情勢となっている。

 そうした中、イスラム国はその凶暴性を用いながら、メディアを巧みに操り、イデオロギーを浸透させ、影響力を拡大している。

 「サイクス・ピコ協定3」 においてフランスと英国が引いた国境線を消し――要するに西洋文明を否定――シャリア(イスラム法)を基本にしたイスラムスンニ派・サラフィージハード主義を広げようとしているイスラム国は、本来のイスラム教徒の敵でもある。

 だが、そのイデオロギーに共鳴する者は増える一方であり、アジア、アフリカを含む世界中のイスラム過激派グループから、忠誠を示す声が上がっている。

 こうしてテロリズムがグローバル化する中、イスラム国は今年2月にアルカイダと絶縁。イスラム国対アルカイダというジハード組織同士の競争・対立構図ができあがり、テロリスト組織間でのリーダーシップ争いになっているとも言える。

 そして今、そのイスラム国による影響が、アフリカ諸国(特に北・西アフリカ)およびサヘル地域4においても大きな懸念材料となってきている。

1 イスラム国は“国”でないという理由からフランス政府はDaesh(ダーイシュ:イスラム国のアラビア語名称の頭字語)を使っている。仏メディアに関してはそれぞれである。

2 “後継者”を意味する世界中のイスラム教徒の指導者

3 1916年、第一次世界大戦中にイギリス・フランス間で結ばれた秘密協定。戦後を見据えて中東分割を行ない、国境線を引いた。

4
サハラ砂漠南縁部に位置する半乾燥地帯。西から東に、大西洋から紅海に及ぶ国々を含む。カーボベルデ、セネガル北部、モリタニア南部、マリ、アルジェリア最 南部、ブルキナファソ北部、ニジェール、ナイジェリア最北部、チャド中部、スーダン中部を含む。エリトリア、ソマリア、エチオピア、ジブチを加えることも ある。

 イスラム教徒は世界人口の約5分の1、16億人ほどと…
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