あざなえるなわのごとし

ネット事件から妄想まで雑食

推理をしない神のミステリ 麻耶雄嵩「神様ゲーム」

神様ゲーム 講談社ノベルス

小学4年生の芳雄の住む神降市で、連続して残酷で意味ありげな猫殺害事件が発生。芳雄は同級生と結成した探偵団で犯人捜しをはじめることにした。そんな時、転校してきたばかりのクラスメイト鈴木君に、「ぼくは神様なんだ。猫殺しの犯人も知っているよ。」と明かされる。大嘘つき?それとも何かのゲーム?数日後、芳雄たちは探偵団の本部として使っていた古い屋敷で死体を発見する。猫殺し犯がついに殺人を?芳雄は「神様」に真実を教えてほしいと頼むのだが……。

今年のミステリ系ランキングで2作目「さよなら神様」は間違いなくランキングされそうですし、積読になってた一作目を読んでみることに。
さすが麻耶雄嵩面白かった。


あえてネタバレなしで以下。






もともとこの「神様ゲーム」は子供を意識したハードカバーの「ミステリーランド」で刊行されたのだけど、こんなもん子供読んだらトラウマになるわw
エクソシストばりの残酷シーンとか、子供に何を読ませようとしてんだか。


麻耶雄嵩というひとはデビュー作「翼ある闇」で推理をせずに一番最後に出てきて真相だけを言う銘探偵メルカトル鮎を描いてみせたり、非常にトリッキーな作品が多く、今作も御多分に漏れない。
神曲法廷 (講談社文庫)神というと山田正紀が「神曲法廷」で神の声が聞こえる電波系探偵を描いたりしたのも思い出せる。
作品においては作者が神とも言えて、そういう神は竹本健治が「ウロボロス」で描いたり、積木鏡介は「歪んだ創世記」で作者vs登場人物を描いたりもした。
笠井潔は「天使は探偵」で神様ゲームと同様、すべてを知る天使を登場人物に据えたミステリを描いたりもした。この辺、笠井氏は「神様ゲーム」は疵があると言ってたとか言ってなかったとか聞いているし、その辺を踏まえて天使っていう意趣返しを……というのは深読みしすぎか。

この作品に登場するのは「神」であって「探偵」ではない。
探偵は事件を推理し結論にたどり着くけれど、神には推理が必要ない。
事実があり、それを知っている。

主人公は、自称「神様」の鈴木くんがいうことを聞く。


だからこそ最後の最後に理不尽な、主人公の推理に合致しない展開を見せる。
もし鈴木くんが神ならどれだけ理不尽だろうがその結論は神が下した「天誅」だし、鈴木くんが神でないなら推理が正しく全ての天誅は偶然だし事故なんだろう。
どちらとも言える。
主人公にとって鈴木くんが神かそうでないかわからないように、読み手にも神なのかそうでないのかわからないしどちらともとれる。
そういう余地をあえて残したあたり、読み手をとても混乱させる。

果たして鈴木くんは神なのかそうでないのか。
一風変わったミステリを読みたい方にオススメ。

続編「さよなら神様」も続けて読みます。
さよなら神様