こんなニュースが出ていた。生命科学分野の研究者向けに論文紹介スライドを共有するプラットフォームが作られたとのことである。slide shareのようなものだ。確かにネットを使った大規模な論文セミナーや資料のアーカイブが出来れば非常に有意義だ。発想はとても良いと思う。
しかし気になるのは論文の著作権である。その質問についてはゼミログも想定していて、以下の様なコメントが有った。
よくある質問として「Nature等の論文を引用して、著作権は大丈夫か?」という質問を受けます。結論を申し上げると、完全なコピペではなく、引用があれば問題ありません。弁護士さんにも確認しております。
引用する論文等は既に公表されているものであることから、引用を明記し、研究を理解するためにスライドにまとめて共有することは問題ないのです。逆に言うと、スライド中に引用が明確になるようにして頂く必要があります。研究と知的財産は密接に関係するため、研究者は「引用を明記する」ことを守るなど、著作権を正確に理解して対応することが求められます。
著作権について | ゼミログ
引用、この線引が難しい。一般的に「引用の範囲は必要最小限であり、その範囲が明確に分かるようにすること」と言われている。しかし図表の使用を必要最小限に納めて資料を作ったら、筆者らが本来している主張とかけ離れた発表になってしまう可能性がある。また論文の筆者らの主張が間違っていること、データが疑わしいことは多々有る。本当に論文の内容が妥当かどうかを議論するためには論文の隅から隅まで精読しなければいけない。
しかし論文に忠実な資料を作り、それをネットで公開した場合、一般的な引用の範疇を越えてしまうのではないか。
自然科学の学術コンテンツでは他の分野以上に、必ずしも許諾が必要かどうか明白でない場合が多いことが、問題を厄介にしています。「(単純な)図表の許諾は著作物ではない=許諾を取る必要がない」という意見もありますが、個々の図表について厳密に検討しての判断が必要ですし、他人の著作物の利用かどうかが争われた裁判で、著作権法上は「侵害」していなくても「道義的にどうか」と裁判官が注文をつけた判例もあります。また、個々の要素は「著作物」ではなくても、全体としては「編集著作物」と認められるケースもあります。権利者と利用者では立場が相反するため、利害や意見が必ずしも一致しませんし、裁判でも「著作物かどうか」が最も多く争われます。
~中略~
学術出版社や学会の立場は「一部分であっても無断利用は禁じる、許諾を取ってください」というものが大多数です。その根拠は、学会や出版社がどこまで意識しているかはともかく、必ずしも「無断利用は著作権侵害だから」というものではありません。むしろ、「学術コミュニティーとしてのマナー」としての側面が強いと思います。なぜなら特に自然科学の学術研究においては「誰がその研究成果を出したか」という先取性が重要であり、利用の連絡がくるということは「先取性」を認められているということの証左でもあるからです。
自然科学論文を引用してインターネットで公開することは非常に難しい問題だと思う。学会や大学の公式見解を出して欲しい。僕も出来ればもっと自由にブログを書きたい。
PS.性格が悪い自分としては、このようなことを考えてしまう。
問題があった場合、責任の所在は利用者とプラットフォームのどちらになるのだろうか。気になるところである。例えば特定の機関でしか読めない論文を他者に共有したいがために丸写しでアップした人がいたとして、「これは輪読の資料だ!」と言い張ればそれは問題にならないのか、とか。
— ぱんつ (@Fm7) November 18, 2014
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