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 80歳を超えてからブログを始め、93歳の今も毎日続けている徳島市の堀江幸子さんが、童話集「青蛙(あおがえる)のペキ」を出版した。これまでにエッセー集など2冊の本を出しているが、童話集は初めて。出版元は「文章が巧みで、独特の面白さを感じさせる物語がそろっている」と称賛している。

 ブログで発表した作品や新作の物語11編を収録。表題作は、モズにさらわれ、針金に突き刺されたカエルのペキの物語。他にも、風船売りと子どもたちとの交流や、発行されたばかりの五百円玉をめぐる小学校での騒動など、何げない日常の出来事をしみじみ、ほのぼのと描いた作品が並ぶ。挿絵も堀江さんが手がけた。

 堀江さんは大阪で生まれ、すぐに徳島に移り住んだ。中学校の英語教員として28年間、美馬市やつるぎ町で教壇に立ち、54歳で退職。吉野川市に移住し、絵画や俳句などを趣味で楽しんできた。今年の10月下旬から、徳島市内の介護施設で生活している。

 80歳の時、絵画教室の友人の勧めでパソコンを購入し、その4年後、日常の出来事などをつづった文章を自作の絵とともに紹介する「さっちゃんのお気楽ブログ」を始めた。短歌や詩などを織り交ぜ、ほぼ毎日書き続けた。高齢のブロガーとしてメディアで紹介され、注目を集めるようになった。

 俳句や短歌などの書籍を扱う飯塚書店(東京都文京区)の飯塚行男社長(56)が昨年秋、堀江さんが出演したテレビ番組を見て興味を持ち、連絡をとった。堀江さんに送ってもらった原稿の完成度の高さに驚き、新作も依頼して本に仕上げた。

 飯塚社長は「表題作は、死に対する独特の感性がうかがえる。他の物語も、豊富な人生経験が生んだ深みのある作品ばかりだ」と話す。堀江さんは「物語を作りたいとずっと思っていたので、本という形になってうれしい。自由に読んでほしい」。本のあとがきには、「夢を抱き続けておればいつか実現できるということを確信いたしました」と記した。

 「青蛙のペキ」は税別1200円。全国書店のほか、インターネットのアマゾンなどでも購入できる。(伊藤賢)