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第1回 安藤エクスペリエンス

安藤昌也(千葉工業大学 工学部 デザイン科学科 准教授)
NTTデータ通信株式会社(現株式会社NTTデータ)を経て、1998年アライド・ブレインズ株式会社の設立に取締役として参画。ユーザビリティ・アクセシビリティを中心に経営戦略や商品開発をユーザー視点で行うコンサルティング業務に従事。ユーザエクスペリエンスに関する研究で博士号を取得後、2011年から現職。
現在は、ユーザエクスペリエンスや人間中心設計(HCD)、エスノグラフィック・デザインアプローチなどの研究・教育に従事されています。また、HCDおよびアクセシビリティの国際規格に関するISO/TC159(人間工学)国内対策委員などで委員を務められ、現在はNPO法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)理事であり、同機構認定人間中心設計専門家。専門社会調査士の資格も保有されています。
  • 鳥越
  • 早速ですが、まずは安藤先生のご職業、専門分野を伺いたいのですが。
  • 安藤
  • 実はそれ、1番難しくて。

    基本的には、デザインの教育に携わっている大学教員で、
    ユーザーエクスペリエンスの研究者。
    ユーザーエクスペリエンスデザインの研究というか、
    ユーザーがどういう体験をするのかということを
    どちらかというと心理学的な側面から研究する、
    それが基本の職業ですね。

    ただ、もともとコンサルタントだったので、
    コンサルタントでもある…ということですか(笑)
  • 鳥越
  • ご自身の専門をユーザーエクスペリエンスデザインだと意識したのは、
    いつ頃ですか?
  • 安藤
  • そうですね…2010年位ですかね。
  • 鳥越
  • 割とじゃあ、私と出会ったあたりで、だったのですね。

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  • 安藤
  • そうですね。
    私自身がやってきたこと自体は、
    学生の頃にやっていたことと何も変わっていないんですが、
    それをユーザーエクスペリエンスデザインと呼んだら
    分かりやすい、ということに、2010年位に気づきました。

    それまでは、大学院の博士課程で
    ユーザーエクスペリエンスに近い研究をしていたんです。
    その頃は、”実利用環境による製品評価”と言っていました。
    「ユーザビリティというのは瞬間の話ではなく、
    その製品を使う前から、使っている間も変化していくものですよね」
    ということを言って、
    ”長期的ユーザビリティ”というキーワードで研究をしていました。

    要するに、
    現場のユーザーは製品にどのように向かい合い、
    どのように使い、どのように使った結果を感じるのか…
    そこを研究していたんです。
    ただ、それだと分かりにくいから、周りの人たちは
    UXD…UXと言っていたようですが、
    僕は、あえて自分の専門をUXと呼ぶ事は基本的に無かったですね。
  • 鳥越
  • 成る程。
  • 安藤
  • ただ、最近は、特に企業に対してコンサルテーションしている内容は
    ユーザーエクスペリエンスデザインだと意識するようになりました。

    これまで企業に対しては、
    “ユーザーエクスペリエンスデザイン”ではなく
    “顧客価値デザイン”と言い換えて話すことが多かったんです。
    今はUXに対する理解がかなり浸透してきたので、
    自信を持って、
    「私がやっていることはユーザーエクスペリエンスデザインです」と、
    言えるようになってきたかなと思います。
  • 鳥越
  • 安藤先生は、アカデミックな場を軸に
    様々な分野の企業や団体に関わられていらっしゃいますが、
    何か理由があるのでしょうか?

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  • 安藤
  • そうですね…
    まず、ユーザーエクスペリエンスデザインって
    昔からあったことなんですけど、
    特にここ最近、デバイスやサービスがリッチになってくることで
    かなり多様になりましたよね。
    そういう意味では、
    大学の中で研究をしているだけでは分からないことも沢山あって。

    企業の人が実践で抱えている問題などを知ることで
    新しい研究領域が分かるというか…
    そういう関係にあるので、
    今は企業や社会と関わりを持ちながら研究を進めていく
    というスタイルをとっていますね。

    「なんで先生になったんですか」とは良く聞かれるんですけど、
    非常に答えにくくて(笑)
  • 鳥越
  • はい(笑)
  • 安藤
  • あの…僕はコンサルティングをやっていたんですけど、
    体調を壊しまして。
    それをきっかけに、博士課程で研究を始めました。

    実は、研究に没頭するあまり、お金がなくなっちゃいまして。
    働かなきゃいけなくなって、大学の先生になったっていう(笑)
  • 鳥越

  • 研究が先だったんですか。
  • 安藤
  • 研究が先です。
    2005年から研究を始めて、お金がなくなってしまい…
    あまり言いたくない話ですが、これが安藤エクスペリエンスです(笑)
  • 鳥越
  • 安藤エクスペリエンス(笑)
  • 安藤
  • 「何だこの人?」っていう
    ちょっと変わった独特の…安藤エクスペリエンス。
    僕のプレゼンには、母親が出てきたりするんですよ(笑)
  • 鳥越
  • しますね(笑)
    ご実家に帰られたときのエクスペリエンスが盛り込まれていたり。
  • 安藤
  • そうなんです…毎回新しいネタが振込まれるという…
    これも安藤エクスペリエンスです(笑)

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次回へつづきます。