「ハンサムな王子様に巡り合うまでには、たくさんのカエルにキスしないといけない(You have to kiss a lot of frogs before you find your handsome prince.)」というのは欧米でよく聞かれる諺で、グリム童話の「カエルの王子様」に基づいています。
意地悪な魔女が、魔法でハンサムな王子様をカエルに変えてしまい、その魔法を解くには美しい娘にキスされる必要がある……という筋です。
これが転じて、最近では、年頃の女の子が男性を選り好みしている場合、年長者が「兎に角、いろんな人と付き合ってみなさいよ、そのうち良い人と巡り合えるかもしれないから」と、もっと積極的になることを勧めるときにこの表現が使われます。
経験の浅いティーンエージャーは(私の理想の人が現れるまで、誰ともデートしない)という風に考えがちです。
でも世の中はそんなに甘くありません。なかなか理想の男性に巡り合えない場合も多いし、たまたまカッコイイ男性が居たとしても自分の事は気にも留めてくれないかも知れないのです。
少し経験を積むと、そういうコトがわかってきて、出会いに関しても、もう少し柔軟な考え方ができるようになります。
株式投資もこれに似た面があって、初心者ほど「正しい銘柄を選ばなければいけない」とか「絶対に失敗しない方法は?」などと、愚にもつかないコトをくよくよ心配するものです。
これは中学の部活でサッカーを始めた少年が、真新しいシューズを親から買ってもらった状況に似ています。真新しいシューズが汚れることを気にしていたら、いつまで経ってもサッカーなんて上達するわけありません。泥んこになって、ボロボロになるほど穿き込んで、ようやく上達するのです。
だから皆さんに考えて欲しいことは(どうすれば真新しいシューズを汚さないようにできるか)、つまり失敗しない投資法ではなくて、どうすれば上達するか? というコトなのです。
シューズがボロボロになるまで練習するのであれば、何度も繰り返し試行できるために自分の投資元本を温存する方策を講ずる必要があります。それが損切りということです。
僕が「自分の買い値から8%やられたときは、理由がどうであれ、兎に角、一旦そのポジションを手仕舞う」と決めているのは、このためです。
なお、バリュー投資は、この限りではありません。ただバリュー投資の場合、ハンサムな王子様に巡り合う必要は無いのです。
言われた銘柄(例:プロクター&ギャンブル、マクドナルド、ジョンソン&ジョンソン、エクソン・モービルなどの退屈な伴侶)を、愚直に抱き続ける……これが成功するバリュー投資の極意です。投資先の銘柄は、あなたが選ぶのではなく、与えられるものなのです。
その意味でバリュー投資はお見合い結婚に酷似しています。