GPIF組織改革の本格議論開始、比率見直し先行に困惑の声も
[東京 4日 ロイター] - 厚生労働省は4日、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織見直しを議論する検討作業班(座長、植田和男東大教授)を開催した。塩崎恭久厚生労働相も出席して精力的な議論を呼びかけたが、委員からはGPIFが運用比率の見直しをすでに発表したことに対する戸惑いの声も上がった。
GPIFは先月31日、どの資産にどの程度の資金を振り分けるのかを示す基本ポートフォリオの見直しを発表した。国内債券を60%から35%へと大幅に減らす一方、国内株式は12%から25%へと引き上げられ、海外資産も計40%と大きく増えた。
GPIFの独立性確保に向け、塩崎厚労相は組織改革を進める意向を示しており、検討作業班はこれに特化した議論を行うことを目的に、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会の下に設けられた。4日の初会合では塩崎厚労相も出席し、「確固たるリスク管理や内部統制のもとで、安全かつ効率的に運用できるようガバナンスを強化することは極めて重要」と語った。
ただ、委員の1人からは、「民間の金融機関なら、まずガバナンス体制をしっかり作ってから運用の多様化に進むのが普通。GPIFはすでに運用の多様化が方針となっている」と、ガバナンス改革のめどがつく前に運用比率見直しが先行して発表されたことに疑問を呈する声も出た。
結論は年内にもまとめられる予定だが、別の委員からは「このような大きな改革を拙速に議論していいのか」との意見も出ていた。
年金積立金をGPIFが積極運用するのは、少子高齢化によって、保険料を払う人口よりも給付を受ける人口が増えることが背景にある。昨年開かれた公的・準公的資金の運用やリスク管理を見直す政府の有識者会議で座長を務めていた伊藤隆敏・政策研究大学院大学教授は「今リスクを取らないというのは将来世代にとってのリスクとなる」と述べ、GPIFの新たな運用比率に肯定的な見方を示した。
(梅川崇)
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